マッサージは治療行為です
私には体内マッサージ師の才能があるのかもしれない。
「んっ……。はぁ、はぁ……」
なんということでしょう。
赤く上気した顔で快感の余韻に浸るカレンちゃん。
その体内を巡る魔力に淀みはなく、躍動する活力に溢れているではありませんか。
身体の中心に歪に偏り、今にも爆発しそうだった魔力の固まりは丹念に揉みほぐされ、今やすっきりとしたサイズでありながらしなやかで力強い、女性らしさを感じさせるフォルムに大変身。
そしてなにより、魔力の流れが正常になったことで、長年の懸念であったカレンちゃんの【豪腕】の暴発、その原因である「過剰な魔力の移動」が(あんまり)起こらなくなったのです!!
これこそが匠の技。
魔力マッサージの祖、ソフィアさんの繊細な魔力操作が可能にした、人体再生の秘術なのです!
「良い仕事をした」
施術師本人も大満足の仕上がりである。
あ、もちろんついでにたっぷりと堪能させて頂きましたとも。カレンちゃんの気持ちよさそうな声を♪
そんな充足感に満ちた私を胡乱気な目で見る人物は、今や三人にまで増えていた。
「カレン……大丈夫なの?」
「ソフィア、やりすぎじゃないのか?」
「お前絶対楽しんでただろ?」
何を言われようと今の私には痛くも痒くもない。だって心が満たされているから!
「何度も言ったでしょ。あれは治療行為だって」
「いやでも……」
なにやら文句があるようだけど、その議論は既に終わった。
カイルたちにしたってそれは分かっているはずで、ただ理性に感情が追いついていないんだろう。
「もうちょっと、やり方とかさぁ」
「え? やっぱりゆっくりが良かった? カレンちゃんの艶っぽい声をもっと聞きたかったって?」
「そ、そうは言ってないだろ!」
一応ね、施術中にさ。あんまりにも声を上げるカレンを心配したミュラーから提案されて治療の仕方を変えてみたんだよ。
早く終わらせること重視の方針から、刺激を抑えることに注力する方針へと。
そしたらね。
カレンちゃんの喘ぎ声……もとい。えーと、我慢する声が、ね?
なんと言いますか、その。
めっちゃエロくなっちゃったんです。
いやわざとじゃないんだよ。私は普通にやってた時のかわいらしい声で満足してたし。
カレンちゃんが言うには、丁寧にしたほうがびっくりするような刺激は少ないんだけど、その分気持ちいい刺激がよく分かるらしくって。
「あんっ♪」だとか「んっ♪」だとか、ね?
そりゃもうあれよ、男のアレがアレしちゃいそうな嬌声がもうね。聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなのをそりゃもうバンバンとね。
ミュラーは顔赤くしながらカレンちゃんに謝ってるし、カレンちゃんは真っ赤になりながら喘ぎまくるし、私もそんな声出させてりゃ当然顔も赤くなるしでね。
もう大変でしたわ。
結局ミュラーが男どもを離してる間にちゃっちゃと終わらせることができたってわけさ。
「その……、えっと」
思い出したらまた顔熱くなってきた。
見ればみんなも思い出してるようで顔が赤い。なんとなく微妙な空気に。
「そ、そうだ。カレン、もう平気なんだろ? また剣振ってみたらいいんじゃないか?」
「そ、そうね! カレン、相手するわよ!」
「え? あ、うん!」
カイルの提案でなんとか普段通りの雰囲気に戻ったけど、まだどこかギクシャクしてる。
とはいえ別に仲違いしてるとかじゃないし、過剰に気にする必要もないかな。
「カレン! 感覚がだいぶ違うと思うから、慣れるまではゆっくり動いた方がいいよ。ミュラーも受ける力とか気を付けてあげてね」
「わかった」
「ええ」
剣でも振ってればそのうち変な空気もなくなるでしょ。
それじゃあ新生カレンちゃんの様子を、少し見させてもらいましょうかね。
ドキドキが収まらない……。
もしかしてこれが恋、なのカナ……?(違います)




