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ハリボテの枷


 探偵ごっこ、楽しいかもしれない。


「そう。この魔道具こそが、謎を解く鍵だったんだよ」


 カレンちゃんから借りた魔道具を少し傾けて、太陽光を反射させてみる。


 キラリと良い感じに光った。うむうむ。


「いや腕輪だろ?」


 せっかくのいい気分だったのに、何言ってんだコイツといわんばかりの呆れた声に、私も一瞬で「何言ってんだコイツ?」状態になった。


 ――鍵だったんだよ


 ――いや腕輪だろ


 すぐに復帰した脳が言葉の意味を理解し、改めて「何言ってんだコイツ」と思い直した。


 結論。

 カイルはやっぱりアホの子でした。


 とりあえず無視しとこう。


「ヘレナ先生って知ってる? 魔法陣の研究とかしてる人なんだけど、その人の元で勉強させてもらっててね。魔道具の知識も少しはあるんだ」


 幸いヤツも話を中断する気まではないようで、素直に聞く体勢に戻っていた。いつもこれくらい空気読めばいいのに。


「魔道具の基本的な機構に《吸魔》っていう、魔石から魔力を吸い出すのがあるんだけどね。実際に着けてみた感じ、この魔道具はその《吸魔》で装着者の魔力を吸い取ってるんじゃないかと思うんだよね」


 中身を覗いたから確定事項ではあるんだけど、一応効果からの類推であるということにしておく。


《透視》の魔法が使えるなんてわざわざバラすわけがない。


 もしもこの魔法を使えるのが男子だったら絶対に「女の子のハダカが見放題の魔法!? なにそれ最低! 変態!!」となること請け合いのヤバめの魔法だし、私だってそんな奴がいたら全力でそいつの目を潰すか魔法を一生使えない体にするだろう。


 女子である私がこんな魔法使えたって変態行為なんてするわけないけど、「しない」のと「できない」のでは天と地ほどの差があるのは重々承知。


 余計なことを言って「ソフィアって実は男子のハダカ見放題らしいよ」なんて噂が流れるような、社会的な自殺をする必要など全くないのだ。どうせ言わなきゃ絶対バレやしないんだから。


 ……見たことないよ? ホントだよ?


「でもミュラーの言う通り、魔力が枯渇したら危ないよね? だから枯渇を防ぐ仕組みでもあるんじゃないかと思ってたんだけど……えーと、ウォルフ。これ着けてみて」


「え、俺?」


 さっきから蚊帳の外っぽい雰囲気出してたウォルフを指名してみた。


 急に指名されてびっくりしてるけど構わずに腕輪を装着させた。念の為二の腕用のも準備する。


「どう? ウォルフ」


「どんな感じだ?」


 ウォルフよりも二人の方が興味深げだ。

 見た目に変化が現れないタイプの魔道具だし気持ちはわかる。


「……なんだか、思ったよりも効果が地味というか……。ああでも確かに吸われてるかも。なんとなくだるい。……と思う」


 おおすごい、わかるのか。

 意外と繊細な感覚の持ち主でよかった。


 私が着けた時なんかは自分じゃわからなくて、魔道具に魔力が流れてることを目視確認したり自分の魔力量を調整してやっと吸われてることを認識できたレベルだからね。


 以前に魔道具屋を見たことあるけど、そこの商品と比べても最低レベルの玩具(オモチャ)じゃないかなコレ。


「そうなんだよね。これ実はあんまり吸わないから枯渇の心配は多分ない。っていうか、効果が低すぎて本来の目的すら果たせるか微妙なシロモノなんだけど……」


 魔道具の残念さを明確にして、改めてカレンちゃんに確認する。


 ……吉と出るか凶と出るか。

 もしかしたら、二度と力の制御が出来なくなるかもしれない確認を。


「カレンってさ。この魔道具が無くても力の調整できるんじゃない? 思い込み程度の効果しかないよコレ」


 魔道具に大した効果がないのなら当然、そういうことになる。



 ――力を抑える為に与えられたのだろう魔道具は何の効果も持たないただの装飾具(アクセサリー)で。


「…………え?」


 カレンちゃんの力を抑えることなんてできない、ハリボテの(かせ)だったのだから。


《遠見》、《透視》、《透明化》の魔法はお兄様の湯浴みの時間帯には使わないとの鉄の掟があるらしい。


……《集音》はまぁ、ほら。音くらいは、ねぇ?

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