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ソフィアの操縦法


 カイルのことは気に入っている。


 同年代の男子に比べ頑丈な身体に標準的な頭。

 この世界の常識について学ぶ時、カイルの身体には大分お世話になったものだ。


 お陰で私は「運動が得意な女の子」としての身体強化の精密な操作を覚えることが出来たし、普通の子供らしい迷惑のかけ方や大人への対応の仕方を学ぶことも出来た。


 カイルには感謝している。


 しかしそのお礼を考えた時に、コイツの残念な趣味が顔を出すのだ。


 カイルの趣味。それは、女の子にいじめられること。


 そんな趣味の変態がいることは前世の知識から知ってはいたけど、こんな幼い男の子が、と初めは信じられなかったものだ。


 それでも今はもう受け入れている。


 だってまともな人間が、女の子に(ののし)られて(なじ)られて、泣きながら逃げ帰った翌日に笑顔で「よお!」とか言う?


 私は断言できる。


 カイルは間違いなく変態だ、と。



 その証拠に、こちらを煽り切った今も嬉しそうな笑みを浮かべている。


 きっとこれから大好きな言葉責めされるとか思ってるんだろう。度し難い変態である。


「大丈夫だってカレン。コイツが本気で怒った時はこんなもんじゃねーから。これまだ半分くらいしか怒ってねーから」


「怒らせない方がいいんじゃないかな……っ!?」


 カレンちゃんの助言を有難く聞いとけばいいのに。


 正直、わざと怒らせるような発言をして暴言を浴びたがる変態の思惑通りに動くのは(しゃく)なんだけど、だからといって言われっぱなしにするのも言い返せないみたいでムカつく。


 暴言で喜ぶなら、その許容量を越えた暴言で叩き潰す。


 それでこそ完全勝利と言えるだろう。


「それにコイツ、悪知恵すごいからさ。怒らせた方が扱いやすいんだよ。見てろよ」


 てか私舐められ過ぎじゃない? 本人前にして悪口とか、完全に馬鹿にしてるよね。


 扱いやすいだと?

 できるもんならやってみろやぁー!


「カイル。覚悟は出来てるんだよね?」


「ん? お前を言い負かす準備ならできてるぞ」


 はっ! カイル如きが生意気な!


「舌戦で私に勝てるとでも? 今まで散々言い負かされてきたくせに?」


「なんだ、そろそろ負けそうだから違う勝負にして欲しいのか? それならそう言えよ」


 ……ふぅ。


 落ち着け、私。


 今日のカイルは、珍しく観客がいて、調子に乗っちゃってるだけだ。


 わざわざ相手のペースに乗ってやる必要は無い。


 でもね。


「いいよ、手は出さない。お望み通り口だけで、いつもみたいに泣かせてあげる」


「へー、いいのか? 泣くのはお前の方かもしれないぜ?」


 ――こんだけ煽られて引けるかぁッ!!


 いくら仏のソフィアさんでも、今日のはさすがにカチンときたね。


 カレンちゃんに頼られて勘違いしちゃったお花畑な脳みそを後悔と自己嫌悪で染め直してやる。二度とソフィア様には歯向かいませんと服従したくなるくらいの敗北を刻みつけてやるぅっ!


「カイル相手に? ありえないね」


 というかそもそもの話、精神的には高校生+んんん歳の私がガチ中学生相手に口で負かされてたまるかっての。


 本来なら子供の戯言と流すところを寛大な心で対等に相手してあげてるんだから、それだけでも感謝されてもいいくらいだと思うね! あー! 私ってなーんて優しいんだろー!


 だけどコイツはそんな慈悲の心に気付きもしない。


「そうか? お前風に言えば『これだけの証拠が出揃っててまだ誤魔化せると思ってるのか』って状況だと思うんだけどな?」


 ……ブラフだ。


 どうせ私が以前言ったのを真似してるだけだ。言葉の意味すら理解しているか怪しいもんだ。


「へえ? どんな証拠があるっていうの?」


 だから私は、当然そう答える。


 それは自然な流れ。


 予定調和。売り言葉に買い言葉と言ってもいい。


 証拠が実際にあるかどうかなんて関係ない。

 ただカイルに話させて、ボロを出させるための受け答え。


 だが、私の返事を聞いたカイルは。


「……へへっ」


 してやったりと、不敵な笑みを浮かべたのだった。


争いは、同じレベルの者同士でしか発生しない!!

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