とりあえず褒め倒せ
カレンちゃんのお悩みこと圧倒的な豪腕を見たみんなの感想。
「すごい! すごい! カレンすごいのだ!」
「ねー。カレンってばすごいねー」
「いや……。すごい、っていうか……」
「……こんなの、すごすぎるでしょ!?」
ネムちゃんが「すごいすごい!」と煽るもんだからとりあえず便乗してみた。
いやホント「手品か!」って思わず突っ込みたくなるくらいすごいとしか言い様がないんだけど、これはカレンちゃんの悩みだって話だからね。
本人も「嫌わないで」と言っていたし、下手に恐れ戦くよりは「へーすごーいこんな特技があったなんてー」と軽く流す方が万倍いいだろう。
「……えっと、あの……。あ、ありがとう……?」
その点で言えばウォルフの感想はかなり危ういかと思ったけど、ネムちゃんの賞賛の声に押されてカレンちゃんの耳には届いていなかったようだ。良かった。
「これがカレンの相談。今見てもらった【豪腕】の力がどうにも抑えらんないらしくてさ。普段は魔道具で抑えてるんだけど、魔道具無しでも力の調節が出来るようになりたいんだと。あと剣術も教えて欲しいって」
「あの力が……」
「それは確かに、大問題ね……」
剣の持ち手のとこ握り潰してたもんなぁ……。
あれじゃ剣もまともに振れないだろうに。どころか魔道具無しじゃ怖くて何にも触れられないんじゃないか。
まあ、それよりも。
「カイル、剣ちょうだい。二本ね」
「ん? おう」
先にウォルフをどうにかしよう。
カレンちゃんの大人しい見た目からあの破壊力が生み出されるギャップが凄まじいのはわかるけど、反応が素直すぎる。
……化け物みたいな力があったってね。その恐ろしいものを見る様な目は、傷付くんだよ。
とはいえその目を無理矢理止めさせたところで一度芽生えたカレンを恐れる感情がなくならないのもわかってる。
だからウォルフの感想を強制的に書き換える。
そのために、カイルから剣を受け取ったうちの一本をミュラーに渡した。
「はい。じゃあ私たちもやってみようか」
「……え?」
呆けるミュラーを置いて、剣先を地面に向ける。
えーっと、できるだけ地面に垂直になるように当てて、と。
あとは身体強化を剣を持つ右半身に集中させてー……。
足から腰、胴体、右肩、右腕、右手、そして真っ直ぐに立てた剣先へと力を込めて――ズドンっ!
「ありゃ、失敗」
狙い通り剣先はそこそこ地面に潜り込んだけれど、剣身が途中で折れてしまった。
意外と難しいなコレ。
「おお〜」
「お前ほんと、なんでも出来るな」
ネムちゃんからは素直に拍手を。
カイルからは呆れた言葉を頂戴した。
なんでもはできないけど、大抵のことは出来る自信があるよ! えっへん!
そして肝心のウォルフはというと。
「……」
未だ地面から突き出した剣身から目が離せないようだった。
ふむ。もう一押しかな。
「じゃ、次はミュラーね」
「ぁえ!? でも私には、こんなこと……」
おう、かわいい声いただきました。
ではなく。
「大丈夫、ミュラーならできるから。本気で剣振ってる時の身体がよく動く感じ、わかる?」
「え、ええ……」
素直に聞いてくれて助かる。
抵抗が少ないのを良い事に、私はミュラーの身体のあちこちを触って力の入れやすいポーズを取らせていった。
さりげなくセクシーポーズ取らせてみたりなんかしてません。
してませんよ?




