聞き込みしてみた
いつの間にかカイルがカレンちゃんと仲良くなってた。
それ自体は全然問題ないんだけど、今までカイルに困らされてきた身としては心穏やかでいられない事情もあるわけで。
「わーいやったーカイルから解放されるー!」とでも思えれば楽なんだけど、あいつの迷惑さを知った上で私から他人に乗りかえたのを見て見ぬ振りとか、そんなのまるで私の不幸を他人に押し付けたみたいじゃんか。
故に私は、情報収集を開始することにした。
嫉妬とかそれ系の感情からでは断じてない。ないったらない。
悪いのはカイルだし私に後暗いところはないのだからコソコソする必要も無し!
というわけで、栄えある最初のインタビューのお相手はカレンちゃんでーす。
直球で聞いてみました。
「カレンって最近カイルと仲良いよね?」
「え、カイルくん? その……勉強、見て、あげてて」
何故かカレンちゃんが顔合わせてくれないんだけど気のせいかな?
話し方も初対面の人と話す時みたいな人見知りモードだし、もしかして私怖がられてる? 怖がられてるの? これもカイルのせいかな。純粋なカレンちゃんにあいつ何吹き込んだんだ。
「そっか。勉強を頑張るのはいいことだよね」
「そ、そうだね……」
ねっ、と微笑みかけても微妙に顔を背けられる。
これはなにかあるな。
そう直感した私は、さらに調査を進めることにした。
続いてお話を伺うのは、カイルと仲の良いウォルフくんでーす。
ウォルフを探してたらミュラーと一緒にいるところを発見したのでついでにミュラーにも聞くことにした。
二人きりのとこ邪魔して悪いね。
「カイルとカレンか。確かに最近は一緒に勉強してることは多いかもな。俺も混ぜてもらおうとしたことあるんだけど、カレンに嫌そうにされてから、どうもな」
「……最近のカイル、本当に成績が上がってて。前みたいに教えてくれる事もあるんだけど、もう説明聞いても理解できないっていうか、私ってこんなにバカだったんだって思うのと同時に、こっち側だと思ってたカイルがいつの間にか遠くに行っちゃった感じで……」
何故かミュラーの愚痴を聞かされる羽目になった。
しかもガチめに悩んでるっぽくて、縋るような目を向けられた。でもそれ以上の言葉はない。
目は口ほどに物を言ってるけど、何も言わない。ひたすら見詰めてくる。じーーーっと、何かを期待するように見詰めてくる。
待ってても言いそうにないし、別に勉強教えるくらい苦でもないので意を汲んでこちらから提案してみた。
「じゃあ今度、私が勉強みてあげるね」
「ありがとうっ」
感謝は素直に言えるのに、自分から頼み事はしにくいっぽい。
思春期の子って難しいよね。それともツンデレ娘としての矜恃とかかな。
だとしたらテンプレ風に「感謝してあげてもよくってよ!」なパターンもちょっと見たかったかもしれない。
いや実際に自分が言われるとなるとウザイか?
あれは傍から見てるから良いものであって、身の回りに毎回そんな受け答えする人がいたら面倒くさそうだ。
ミュラーがミュラーで良かった。
「それ、俺もいいかな? いやあ学業優秀なソフィアにみてもらえるなんて頼もしいなあ、助かるよ」
そしてミュラーとのお勉強会の約束にそそくさとウォルフが混ざってきた。いいけどね、一人も二人も変わんないし。
結局、カイルがカレンちゃんに勉強を教わり始めたきっかけは二人とも知らないみたいだった。
人見知りなカレンちゃんの性格からすると、カイルから頼んだのは確実だと思うんだけど……。カレンちゃんってばおどおどしてる割に意思表示ははっきりするからなぁ。
カイルってばどうやって了承の返事を引き出したんだろ。気になるな。
ウォルフは弱ったミュラーを見て癒された。やる気が少し上がった。




