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まさかの強敵!?


 ソフィアさんの魂を探して辿り着いた先にいたのは、急に叫び出したりずるいずるいと駄々をこねる子供みたいな人だった。



 いやまあ学院生ならまだ未成年なわけで、実際子供ではあるんだけど。

 貴族教育のお陰か精神的に幼い子って少ないんだよね。ネムちゃんみたいのって超少数派。激レアさんなのだよ。


 ましてや初対面の相手にこんな態度……ホントなんなんだこの人。普通に情緒不安定なのかな。


 さっきも暗い雰囲気で独り言言ってたし、もしかして頭がおかしい系の人? 残念な人なの?


 まあなんでもいいか。別にこの人自体に用があるわけでもないし。


 念の為魔力の流れを確認して、と。


 ……あー、分かりづらいけど、やっぱりこの人っぽいなぁ。


 この人自身の魔力に隠れて見えにくいけど、確かに私の魔力にそっくりなのがある。


 なにかの間違いであることを期待したけど、この人が本物のソフィアさんの魂持ってるんだなぁ。……やだなぁ、面倒くさそう。


 まともに会話が成立しそうにないし、仕方ない。当初の予定通り身体の方の人には少しの間眠っていてもらおう。


「【眠って】」


 意識を眠らせる魔法を施しつつ、倒れる身体を受け止めるための浮遊魔法を続けて使う。


 全く、まさかこんなに元気な人の所にいるなんて予想外もいいとこだよ……。……おや? 倒れてこないな。


「ずるいずるいずる……お? おぉぉ!? 魔法だ!! 今魔法防いだ時のバチッてなった! わー! 小さいのに本当にすごいんだねぇ!!」


 なっ、防がれた!? 嘘でしょ、こんなアホっぽい人に!!


 肩を掴んでいた手を急いで振りほどき距離を取る。


 あぁんとか言ってるけど、この残念な行動も陽動? 私を油断させるための罠? まさかネムちゃんにも効いた睡眠魔法を防ぐ人がこんなところにいるなんて……。

 これはソフィアさんの魂を早く取り戻す必要があるかもしれない。


 フェルたちを連れて来ていてよかった。

 フェルとエッテさえいれば、こちらの取れる戦術の幅は格段に広がる。


 フェルがいれば逃走はほぼ確実に防げるし、エッテがいれば多少の怪我を負わせたって後で治せる。傷と記憶を消せば証拠は何も残らず完全犯罪の出来上がりだ。って、それは最後の手段だけどね。


「あの、先に謝っておきます。ごめんなさい。でも痛くないようにするので」


「え、なに? どしたの?」


 私なんにもわかりませぇんと言わんばかりの気の抜けた顔。

 こんな顔した人に魔法を防がれたなんて、と頭に血が昇りそうになるのすら向こうの策略である可能性が高い。


 ……マズいな、すごくやりづらい。私って油断誘うタイプに弱かったんだ、全然知らなかった。


 せめて気勢は()がないようにと油断なく相手を見据えていれば、それまでぬぼーっと突っ立って隙を晒しまくっていたように見えた彼女は突然、スイッチが切り替わったように姿勢を正して私に相対した。来るか。


「……誤解させてごめんなさい、ソフィア・メルクリスさん。あの、貴女の目的は私で、きっと争う為に来たのではないと思っていたのですが……どうですか?」


 だが予想に反して、彼女は言葉を弄してきた。


 突然纏う雰囲気から理性が感じられるようになった彼女がそう言って懐に手を伸ばし、取り出したのは……手のひらに収まるサイズの、箱?


「……――!? それは、もしかして」


 見覚えがある。あの箱に描かれている模様は、まさか――。


「はい。トランプです♪」


 それは柄に札の情報が隠されているイカサマ用トランプ。


 作りはしたものの使う機会はなく、家族にすら見せないまま今も死蔵されているはずの門外不出の品。


 ……アイテムボックスを開き、同じ物を取り出す。


 同じ箱に入ったトランプが、二組。

 この世に一組しかないはずの物が二つある。それが意味する事とは――。


「えーと、これ、まだ発売とかされてませんよね? あ、それとも知恵の輪とか出した方が良いですか?」


 ちょっと焦った笑顔を浮かべる彼女が私の探し人である証左に他ならなかった。


アネットさん強制退場の巻。

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