魂の見分け方
リンゼちゃんに魂の見分け方を教えて貰った。
聞いてみれば単純な話だ。
この世の動植物は全て魔力を持っている。
魔法を使えずともその肉体に、血液に、流れる魔力は生命力の源であると言っても過言ではない。
では魂は? 動植物ではない魂は魔力を持っていないのか?
厳密にはその通り。
肉体を持たない魂に、魔力を保存しておく術は無い。
だが「持っている」の定義を変えれば、その限りではないのだ。
例えば人。
人は魔力を持つ。
魔素を取り込み、自分の使いやすい魔力に変えて体内に保存しておく。
ここで大事なのは「魔素を取り込んでいる」ということ。
動植物が扱う魔力は自身の体内で調整した自分専用の魔力のみであり、自然界の魔力は扱えない。魔素さえあれば魔力はいらないのだ。
では自然界の魔力は誰が使うのか?
それが肉体を失った魂であり、精霊であり、神なのだそうだ。
体内で魔力を精製するのではなく、必要な時に必要なだけの魔力を自分用に調整して扱う。より魔力に近い存在。
つまりそれは、えーっと……いい例えが思い浮かばないな。
「水を魔力と見立てるとすれば、キチンと淹れられた紅茶入りのカップが人で、川に捨てられても近くの水の色を変えるくらいはできる茶葉入りのゴミ袋が魂だと」
「その例えなら、茶葉で出来た壺と筒くらいにしておきなさい」
「水を中に入れて自分の色に染める壺と、自分の中を通る水の色だけを変える筒ってこと? 意味はわかるけど、茶葉で出来た壺なんて見たことないよ」
「魂をゴミに例えるよりはマシでしょう」
えー、私をゴミに例えた本人がそれ言う? 茶葉の香り漂うゴミなんてゴミ界の中でも立場が良い方だよきっと。
うん、私たちに例え話は無理だね!
要は魔力を貯めておける肉体があるかどうかの違いがあるだけで、両者とも自分に合った使いやすい魔力があるという話。
ならば話は簡単だ。
目に力を入れてー……魔力視発動!
魔法発動の予兆を見つけたり、他人の体内の魔力の流れを見ることにばっかり使っている魔力視で、見るものを意図的にズラす。
普段はありふれたものとして視界に映ることを除外していた自然界に溢れる魔力をよぅく観察してみれば、魂の存在する空間にある魔力だけ、確かに不自然な流れがある。
この流れが、魂を識別する鍵。
この流れがソフィアのパターン。つまり私の魔力の流れと極めて近しいものを探せば良いわけだ。
長年私の身体で育った魂は私の肉体と同じ魔力の流れを持っているはずだというリンゼちゃんの言葉を信じて、新たな条件を追加した探知魔法を走らせる。
果たして、その結果は。
「――……見つけた」
私は、遂に本物のソフィアさんへの手掛かりを掴んだのだった。
「神……つまり自然の魔力を使える私は神だった?」
「そうね。実はそうなのかもしれないわ」
「真顔で肯定やめてぇ、ちょっとしたおちゃめなの……」




