続きをくれた人
ソフィアさんの魂を見つけ出す。
目的は明確でも、それが実現可能かは別の問題だ。
魂が何かを知らない私には、極論目の前にソフィアさんの魂があった所で気付けない可能性すらある。
「ほら、無理でしょう?」
私が頭を振ったのを見て、リンゼちゃんが諭すように言う。
確かにリンゼちゃんの言う通り、人には出来る事と出来ないことがある。
神様にだって出来ないことがあるのだ。
人なんか、できないことの方が多いんだろう。
だから行方不明の魂を無理に探すのも、無理なことなのかもしれない。仕方の無い事なのだからと諦めるべきなのかもしれない。
だけど。
私にとって本物のソフィアという存在は、そう簡単に見捨てられるほど軽くない。
彼女は唐突に訪れた「見知らぬ人に殺されるだけの人生」というあんまりな結末に続きをくれた、救世主なのだ。
自ら望んで私を救ったわけではないだろう。彼女もまた、私に身体を乗っ取られる被害者となってしまったのだから。
それでも。
……いや。だからこそ、かな。
恩を仇で返してしまった事を自覚した今だからこそ、お詫びと恩返しをせねばなるまい。
二倍三倍じゃ足りない。十倍百倍の恩返しだ。
もうやめて〜幸せ過ぎてにやけ顔が戻らなくなっちゃうよ〜と言わしめる程の圧倒的恩返しをするのだ。
その為には……たとえ無理だろうと、やるっきゃないよね!
「無理じゃない。がんばるもん」
それに「無理でしょ」とか言われると無性に反抗したくなるお年頃なので。
無理って言うから無理なんだよ。いいじゃん高難度。
それに無理とか言われてるのを覆すのって楽しくならない?
またリンゼちゃんに「本当に規格外なのね」って言わせちゃうんだから。見てるがいいさ。
ベリーハードモードだろうとやってやろうじゃないの!
というわけで、とにかくやってみることにした。
ここはやっぱり全方位広範囲探知魔法の出番だよね。
探知するために必要なのは探知対象の判別方法。つまり「この条件の全てを満たすものがソフィアの魂だ」と限定できるだけの情報。
……なんだけど、それが分からないから困ってるわけで。
ま、いいでしょ。いきなり特定できなくても、徐々に条件の範囲狭くしていけばね。
最初は魂を見つけるくらいにして、見つけた魂で色々試すところから始めよう。
そうと決まれば肝心の魂の定義は……「肉体の成長により自然発生する、個性のパラメータが依存する非物質的な概念存在」あたりでいいかな。よし。
「【肉体と繋がっていない魂の位置、探知】」
ずわっと身体から魔力が放出され……たりはしない。
最近は魔力の隠蔽にも慣れたものですので。
最新バージョンの探知魔法は自然界の魔力を利用していて、他の魔力を含むものに触れた時に探査の魔法を走らせ条件に合致していれば私に知らせるという、言うなれば自然界に存在する魔力を使いっ走りのスパイにしちゃう魔法だ。とても便利です、ハイ。
呪文の方はまあ、我ながら直球すぎて面白味がないとは思うけど、そーゆーのは後付けだからね。
何回も使うのに言いやすい名前を考えたりしてるうちに格好良いのが閃く。魔法の名前なんてそんなもんだ。そもそも魔法発動するのに詠唱だってホントは必要ないしね。
で、そんな即興魔法の探知結果。
この家の中だけで約200魂とか出ましたけど。
お化け屋敷かな??
理不尽な死に見舞われたからこそ、他人にそれを押し付けることが耐えられない。
ならばどうする?
はい、まずは謝りに行きましょうねー。




