お説教を聞き流そう
アップルパイは夕食のデザートに家族みんなで食べました。
とてもおいしかったです。
おしまい。
うん、これで終わらせたい。
夕食の席でのこと。レニー特製アップルパイをお姉様とお兄様は美味しいと言ってくれたけど、お父様が泣き出して大変だった。
何が大変って、私の罪悪感とお母様からの白い目。
いや、あの白い目はアップルパイひとつで咽び泣くお父様に向けられたもののはずだ。私を見るときにその目のままこっちを向いちゃっただけだ。うん、きっとそう。
恥ずかしがりやな妻と娘たちからの言葉のない感謝、労い、好意。それらが詰まったアップルパイに、涙せずにいられようか! と慟哭をあげる父を見ているのは辛かった。辛かったからお母様に丸投げした。
完全な勘違いというわけでもないんだよ?
お父様には感謝もしてるし好意もある。労う気持ちだってあるけれど、あれほどの喜びに見合う程かと問われれば……ごめんだけど、否と即答できるよ。
幼少期から思ってたけど、お父様って、その、感情表現が豊か過ぎて。愛があるのは分かるよ? 分かるんだけど……、残念イケメンの名は伊達じゃないって感じ。私が呼んでるだけだけどさ!
お母様とお姉様はあの状態の暑苦しいお父様も嫌じゃなさそうだったから、お任せしてさっさとお部屋に退散しようとしたんだけど「あとで部屋に来なさい」とお母様にしっかりと釘を刺されてしまったのだ。
そして今、お母様の部屋でお父様と仲良くお説教を受けている。
ご飯を食べて満足したから早く寝たかったけど、お母様のお説教が終わってもまだやることは残ってる。今日のイベント密度高すぎない? もう眠たいよう。
でも鎌鼬たちをいつまでもアイテムボックスの中に閉じ込めているわけにもいかない。
餌になりそうな果物は追加しておいたけど、なんとか無害化して外に出してあげないと何日もあのままではかわいそうだ。
お父様は完全にとばっちりで申し訳ないけど、一応私の面倒を見るはずの大人だったということで叱られてもらうしかない。
お母様の気が済むまで、頑張れお父様!
「ソフィアも他人事ではありませんよ。今回の件はソフィアに責任があるのですからね」
「はい……」
心の中でお父様の応援をしてたら矛先がこっちに向いた。
もう完全に見透かされてる。
お母様に見透かされてるのはもう分かってる。どうしようもない。降参。
それは諦めてるからいいんだけど、返事が眠そうになっちゃったのはどうか許してほしい。私だって反省してるけど、まだまだ幼いこの体はいい加減、限界が近い。眠いものは眠い。
「今日のことは私の胸に秘めておきます。でもいつまでも隠し通せることではないことを自覚して――」
あ、やばい。
もう少しはもつかと思ったけどダメっぽい。オチる。
ごめんよ鎌鼬たち。君たちに会うのは明日になりそうだ。
「――――――」
お母様が何か言っているけどもう聞き取ることもできない。
ぐわんぐわん揺れ動く体を抑えるのも諦めて、私は意識を手放した。
「よく分かんないけど、女って怖い……」