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今後のために


 この体をどうするにしても、まずはゆっくりと話し合って今後を決めなければならない。


 本物のソフィアさんと、私で。




 いやこの身体を素直に明け渡さないって話じゃなくてね。


 当然未練はあるけど、この身体が私のものじゃないと知った上で「今は私のもんだバーカ!」と本物のソフィアさんをなかったことにするような真似は私にはできない。


 そうじゃなくて、得意の妄想で逆の立場になって考えてみたのよ。


 そしたら――。



 ――私は生まれた時から記憶がなく、気がついたのはいつだったか。他人の体の中で唐突に自我が生まれた。

 その後私の身体を使っていたと言う人が現れて「勝手に身体使っててごめんね! 返すよ! あ、でも十二年間好き勝手に生きてきたから家族とか友達とかに急に性格変わったと思われるかもだけど、そこは上手くやってね! じゃ、私は消えるから!」と一方的に告げられ、私は自分の体を手に入れた。

 初めて会う他人が私のことを「ソフィア」と知らない名前で親しげに呼び、訝しげにしながら離れていく。その繰り返し。

 頼る者もいない中で、消えていった彼女が私の身体を使っている間に築いたのだろう人間関係を崩さないよう求められる自分を演じ続ける日々。

 私は何故こんなことをしているのだろう。私は本物なのに、何故私の方が偽物のような目で見られるのだろう。

 そしてある日、家族や友人が敵意に満ちた目で私に言うのだ。

「本物のソフィアを何処にやった、この偽物め」と――。



 地獄じゃね? こんなんなったら自殺するしかなくない?


 そりゃソフィアの身体は本物のソフィアさんの魂が使うべき、そうあるのが正しいと思うけど、今日まで存在した()()()()()()()()()を知る人にとっては、ソフィアの身体には私の魂が入ってる状態こそが正常だと認識されてるわけで。


 家族に「今まであなた達がソフィアだと思っていたのは偽物でした。今日から本物のソフィアに代わります」と本当の事を説明したとして納得すると思う? するわけないよね、されたら泣く。


 そんな感じで、この問題は「本物だから」「偽物だから」で済むような軽い問題ではないのだ。


 だから、話し合わなければならない。


 私の今後を。そして、本物のソフィアさんの今後を。

 お互いが納得できる着地点があるのかは分からない。それでも、誠意を尽くす。それだけは、きっと正しいことだから。


 ――だから本物のソフィアさんのことを持ちかけてきた女神様(リンゼちゃん)に居場所を聞いたのに。


「さあ?」


 なんで私が知ってると思うの?


 そう言わんばかりの、見事な「さあ?」だった。


「えっ、知らないの!?」


「知らないわよ。前見た時にあった魂が無くなってることに気付いて、一応教えておこうかと」


 一応。一応か。


 リンゼちゃんにしてみたらその程度の些末な問題かもしれないけど、私にとっては大問題なんですよ?


「前っていつ!」


「えーと、あれは……こちらに()んだ鎌鼬(かまいたち)とあなたが対峙していた時ね」


 鎌鼬ってフェルたちのこと?

 それに対峙って……まさかペットにする前!? いくらなんでも前すぎるでしょ!? 前回家に来た時とかじゃないんかい!!


 となると、範囲が……何年だ。五年、いや六年前か?


 私の中に何か痕跡が……って、そんな何年も前のことわかるかぁー!?


「その魂探す方法とかないの!?」


「死んだら女神の方の私には分かると思うけれど、魂だけなんて普通探さないから」


 探しなさいよ! 今! 探せばいいでしょう!?


 ああぁ、焦れったい!


「もういい、自分で探す!」


 ダメだこの女神様! 肝心なところで頼りにならない!!

 こうなったら私がやるしかない!


 魔法で探査くらいお手の物だ。私はフェルが大事に隠してた、どこかの男の子の宝物だって言う小さな木の実だって見つけたことがあるんだからね!


「できるの?」


「できるできないじゃなくて、やる――」


 勢いで反論しかけて、気付いた。


 ――どうやって?


 魔法での探知は、私が探す対象を正確に思い浮かべられることが前提だ。


 魂。

 魂を、思い浮かべる。


 ………………魂ってなんだ!?


当時フェルが隠した木の実は、なんとメイド長の部屋から見つかったそうです。

もはや屋敷内全域がテリトリー。

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