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本物のソフィア


「えー……。うわー、マジかー……」


 私は頭を抱えていた。


 目の前ではリンゼちゃんが出してくれた「その辺の紅茶」が暖かな湯気を立ち上らせている。


 その白いモヤを見ていると、それこそが私の本体なのではという気分になってくる。


 霊。悪霊。


 ……本物のソフィア。


「本当に、あなたの魔法は規格外ね」


 リンゼちゃんの呆れ声に、なんだか救われた心地になった。


 精神を高ぶらせる【高揚】の魔法がかかっているというのに、私の心はまだどこか不安定なようだ。


「自分でもそんな気はしてきた!」


 うがーっ! とリンゼちゃんに抱きついてもやもやした気分を強制的に吹き飛ばす。


 うむ、ミニスカメイドは良いものだ。抱き心地も至高ではないか。


 甘えるように髪の毛の匂いをくんかくんかしても嫌がる素振りすら見せないとは、なんとよく出来た新人さんなのだろう。後でお菓子をやろう。


 さすがは天使(アンジェ)の妹さん。

 癒し力抜群であっという間に心のパワーが溜まったけど、代わりに人として大事な物を失った気がする。そっと距離を離した。


「私は別に女の子の髪の匂いが好きな変態さんじゃないからね。反抗しない自分専用のメイドさんに興奮したとかそういうんじゃないから」


「何も言っていないのに。誰に言い訳をしているの?」


 その! 真面目トーンがっ! 私がガチ変態っぽくなるから!


 でも冷静なリンゼちゃん好き。

 ううむ、これも惚れた者の弱みと言えるのだろーか。だとしたら私は世のかわいいロリショタ全てに敗北せねばなるまい。


「……ん。調子でてきた」


 努めてアホっぽく振舞ってた仮面をぺいっと脱ぎ捨て魔法で身体の状態を精査する。精神面は念入りに。


 ……まだちょっと本調子ではないけど、だいぶ元気は出てきたかな?


 やはりかわいいは正義よ。かわいいは世界を救う。つまりかわいい私は正義だ。

 そして正義は折れぬ。決してな!!


「ソフィアちゃん復活!」


「そうですか」


 そうですとも! まったく、ほんっとーにクールなんだからこの子は!


 いいよいいよ、私には分かってる。今はツンデレのツンの時期なんだよね。


 いつかその心を解きほぐして、私に微笑みかけるデレデレメイドにしてあげるから待っててね!


 いつでも明るく元気が取り柄のソフィアさんが復活したからには、狙った獲物は逃がさない!! 覚悟することだな、ふはははは!!




 ――と。まあ、なんだ。

 備えあれば憂いなしってやつ。


 私はどうも精神が一度壊れたらしい。

 壊れたというか、許容量を超えた? ともかくそんな感じで、意識が落ちちゃったみたいなのよね。


 でもそこは、さすがクラスで「小さな天才」と許した覚えのない称号で呼ばれる私。


 こんなこともあろうかと! ちゃんと備えてあるんですよねー。


 肉体か精神に重大な損傷が加わると、その前の時間軸に無理矢理戻す時限式のタイムリープ。しかも全身快復&魔力回復&精神回復のおまけ付き。


 不意に暗殺者に襲われて「殺った!!」な状況に陥っても「あ、じゃあそれなかったことにしますねー」ができちゃう素敵魔法なのだ!


 この魔法があれば迎撃準備を万全に整えた上で不意を伺ってる暗殺者の背後から近付いて「バレバレですよ?」なーんて意趣返しだって思いのまま!


 さーて最初の犠牲になる憐れな犯人は誰だろなー♪

 と機嫌良く時間遡行前の記憶を辿れば、まさかの自爆でしたとさ。


 吐きそうになったのを目の前にあった紅茶で無理矢理飲み下そうとして「あっちぃ!」ってわたわたしてるうちに死にたくなる程の不快な気分は吹き飛んだけど、その間私の隣には全く動じてないリンゼちゃんがいたんだよ。その時の私の気持ちが分かるかい?


 ハーイ☆ わたしが一人で滑稽なダンスを踊るあなたのご主人、ソフィアダヨー☆


 とりあえず言い訳という名の自白したよね。


 で、リンゼちゃんは流石の理解力で時間遡行についてもあっさりと納得していた。

 そして話は戻る。


「ソフィア・メルクリス。あなたの言葉で言うのなら()()()()()()()ね。彼女の魂は死んだのではなく、いなくなった。あなたの中から、誰か別の人の中に移ったのだと思うわ」


「はあ」


 そんなことあるの?

 よく分かんないけど、魂ってそんな簡単に移動するもんなのかな。でも私もそうやって乗り移ったのかな。うーむ記憶にない。


 まあ手段なんか今はいいや。

 気にならないでもないけど、今はそれよりも大切なことがある。


「それで、今は誰の中にいるの? その本物のソフィアさんの魂は」


 そう。この話は、私たちだけで決めていい問題じゃない。



 本物のソフィア。


 まずは彼女と話し合わなければならないだろう。


いもしない想像上の暗殺者対策が明らかに過剰。もはや病気の域。

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