私のメイドは女神様
遂に来た。
待ちに待った、この日が。
まだかなー、まだかなーと待ち続けた、この日が!
天気は快晴。
この絶好の初出勤日和に、我が家に新たなメイドさんがやって来た。
メイド自体はそう珍しいものじゃない。
知り合いや組合からの紹介、未成年の新人さんから熟年のプロまで、メイドとひとくちに言ってもその内実は千差万別。
そして本日付けで我が家の一員となったのは、住み込みで働く新人メイドでありながら私の専属というちょっと異例な配属となった幼い少女。
リンゼちゃんである。
「これからよろしくお願い致します、ソフィア様」
「こちらこそよろしくね、リンゼ」
立場上私が主みたいなものだけど、リンゼちゃんには裏の顔がある。裏の顔というか、正体というか。むしろ本体? いや後ろ盾?
まあ呼び方なんてなんでもいいんだけど、要はリンゼちゃんってこの世界を創った女神様の分身らしいんだよね。
女神様が私の専属メイド。
すごくない? こんなことってある?
つまり、今の私はご主人様としてリンゼちゃんに命令できる立場にあるのだ。
命令。
ああ、なんて背徳的な響き。
あろうことか創世の女神様に対して偉そうに命令。
髪梳かして〜とか、お菓子持ってきて〜とか、つまらない雑用だって命令できちゃうのだ。むふふ。
メイドはご主人様に対し絶対服従……ではないけど、何故だか自主的に私のメイドになりに来たリンゼちゃんはクールな性格と相まってとても従順な印象を受ける。
ぶっちゃけなんでも言うこと聞いてくれそう。というか聞いてくれた。
そして今、リンゼちゃんはフリフリのミニスカメイド姿で私の前に立っている。
もちろん我が家のメイドが着ているメイド服とは根本的にデザインが違う。
これは私がお願いして着てもらった物だ。
「……ソフィア様。私はいつまでこうしていれば」
「もうちょっと。あと『ご主人様、おかえりなさいませ』って言ってみて」
「……ご主人様、おかえりなさいませ」
うんかわいい。これは萌え萌えですわ。萌え萌えきゅーんですわ。アキバにいたら人気殺到間違いなしだね。
この衣装、元は私がデザインを提供した私の着せ替え用アイテムの一つだったんだけど、デザインを相談してる時はノリノリだったお母様とお姉様が届いた衣装を見た途端「こんな破廉恥なものをソフィアに着せるわけにはいかない!!」とお蔵入りになった逸品だった。
どうやらミニのスカートを腰の飾りと思っていたらしいというか、短いスカートなどスカートではないと言われた。どーりでロングしか見たことないと思った。
生足にミニスカは裸より恥ずかしい格好だとか、そんなの知らないよ。
着用の許可はでなかったとはいえ当然そのまま捨てるわけでもなく、部屋のクローゼットを彩る一着として密かに仕舞われることになったんだけど。
折角頼んで作って貰ったものだしねと、こっそり部屋で着たことくらいはある。
鏡見てちょっと我に返ったよね。
自分の身体とはいえ、幼い女の子に趣味全開のミニスカメイド服着せてるとかさ。
いや可愛かったけどね。鏡をあちこち動かして茶器やハタキの小物も使ってポーズ決めたりして、これでもかってくらい堪能したけどね。
それでもデザインを出した時の想像とはどこか違って、どれだけ頑張っても「ミニスカメイドの格好をしたお嬢様」にしかならなかった。
ちょっぴり悔しかった思い出である。
破廉恥なのはパンツだった説もある。
どちらにしろ許可が出なかったことに変わりはないが。




