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みんなでアップルパイを食べよう


 一言だけいいかな?

 お母様がどちゃくそかわいい。


 空からの景色にわーきゃー言ってる姿は私の母性を刺激しまくった。


 あまりに楽しそうにしているものだからつい透明化しているお母様を見えるようになる魔法を作ってしまい、童心に返ったように無邪気に喜ぶ姿に悶死するかと思った。


 透明になった私はお母様の意識から外れてたんだろう、普段なら絶対にありえない感情豊かな乙女がそこにはいた。

 もしかしたらお母様は一人の時いつもこんな感じなのかな? さすがにないか。


 いつまでも眺めていたかったけど楽しい時間が過ぎるのは早いもの。

 流石に騒いだまま降りることはできないので、そろそろ降りるのでと控えめに伝えた時のお母様ったら!


 私の存在を完全に忘れていたみたいでハッとした後、なんと両手を頬に当てていやんいやんしだしたのだ!! なんですかそのかわいいの! ちょっと幼児退行してません!?


 私がお母様を見えるようになってることを伝えていたらきっと見ることは出来なかっただろう。

 勿論、これから先も伝える気は無い。今見た光景とこの秘密は大切に胸に仕舞っておきますとも。


 眼福でした!



「ただいまー」


 あえてゆるーい挨拶を意識してみたけどお母様に窘められることは無かった。

 お空の旅を堪能してお母様も機嫌が良いみたいだ。


「ソフィア? どこかに出かけていたの?」


 すぐにお姉様が出迎えてくれた。

 ちょうど通りかかったみたいだ。


「お母様が帰って来るのが見えたのでお出迎えに行っていました」


 後ろにいるお母様を示しながらお姉様を観察する。


 落ち着いてる、普段通りのお姉様だ。お父様とは無事に仲直りできたみたいだね。


「お母様、おかえりなさいませ」

「ええ、ただいま、アリシア」


 お母様はすっかりいつもの調子でおすまし顔だ。


 私だけが、あのかわいらしいお母様を知っていると思うとついニヤけそうになる。

 いけない、自重しないと。あ、そうだ。


「お姉様、お姉様。あの籠、なんだと思います?」


 出迎えに来てくれた執事さんに渡したアップルパイの入れ物を指さす。


 どこかに保管するために歩いてた執事さんが、指名されていることに気付いてわざわざお姉様の近くに籠を持ってきてくれた。ちょっと悪いことしたかも。

 お仕事の邪魔しちゃってごめんね? と言うと、これもお仕事の内ですと微笑まれた。

 さすが本物の執事は違うね! 渋くてカッコイイ!


 内心の滾る萌え心を押し隠しありがとうと日頃の感謝を伝えてみたらちょっと驚かれたみたいだけど、私こそ優しいお嬢様にお仕えできて幸せですとまで言われてしまった。やばい、顔赤くなってないよね? 私チョロすぎる。


 お母様に微笑ましく見られるのに耐えられなくてお姉様に答えを迫ってしまった。

 お姉様も笑ってたけど、話に乗ってくれる。優しいお姉様、好き!


「え〜、なにかしら〜? ソフィアは何が入っているか知っているの?」

「はい! お姉様もにおいをかげばきっと分かります!」

「匂い? ……! これはまさか!?」


 私とのじゃれ合うような会話を楽しんでいたお姉様も気付いたようだ。


 期待に満ちた目を向けられて、頷きを返す。


「そうです! アップルパイです! しかもアイゼンで噂のあの店の元祖ともいえる逸品ですよ!」

「なんてことなの! 素晴らしい、素晴らしいわソフィア!」


 感動のあまり抱き合う私たち。


 お姉様にとっては一度は諦めかけた夢。多少入手先は変わっても、喜びは大きいだろう。


 感動を分かち合う私たちにお母様が呆れた声を出した。


「貴女まで、そんなにこれが食べたかったの?」

「勿論です! お母様、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」


 わーっとお姉様の手を引いて一緒にお母様に抱きついてみた。

 呆れてる風を装ってるけど、嬉しそうに笑ってる。


 傍に立ってる執事さんも、遠くで見ていたメイドさんたちも私たち母娘の抱擁を微笑ましそうに見ている。


 うん、帰ってきたって感じがするね!


 今日は大変な一日だったけど、終わり良ければ全て良し!


その日、街道を往く人達の間に「女神様の楽しげな声を聞いた」という噂が飛び交った

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