恥ずかしい話やめてー!
そして、私の地獄は始まった。
「ソフィアのお姉様だって最近子供を産んだんでしょ? 何が嫌なの?」
「恥ずかしいみたいだぞ。コイツ変な弱点ばっかあるからな」
「いやあ俺はソフィア嬢の気持ち、分かるなあ。デリケートな話題って自分から加わりづらいよね」
カイルうるさい。
あとミュラーもウォルフも、全然分かってない。というかなんでこっちに来るの。私に話題を振らないで。
耳まで塞いで「聞きたくないです!」って全身で表現しているというのに、何故みんな私の元に集まってくるのかっ!!
「ソフィアー。世継ぎは大事なのだぞ? ソフィア程の魔力があれば、きっと最強の子供が産めるのだ!」
「あ、あ、ネフィリムさん。あの、今はそっとしておいてあげた方が、その……」
いくら肩を揺さぶられようが耳元で諭されようが、聞きたくないものは聞きたくない。
カレンちゃんの好意に涙が出そう。
でもカレンちゃんvsネムちゃんなんて暖簾に腕押しもいいところというか、どう考えてもなんの効果もないのが悲しいところよね。気持ちだけ有難く頂戴します。
「デリケートな問題だからこそ対話が必要なんでしょ? 全く、殿方ってこれだから……」
「はは、面目次第もないね」
「そうは言っても男なんて何も出来ねーじゃん。『男はドーンと構えているのが仕事だ』って親父も言ってたぞ」
この話題いつまで続くの? もう止めない?
確かに私は耳年増だけどね。それは「知識がある」ってだけで、決して「エロトーク大好き!」ってわけじゃないんですよ?
そりゃあね、元女子高生としてやれ彼氏がどうだの、初体験がどうだのという話もありましたよ。
でもそれって、相手が恥ずかしがって言わないこと前提のじゃれあいみたいなもんじゃん?
あの子みたいに「男性に全て任せるなんてだめよ。気持ちよくしてもらった分、お返しする気持ちで」とか真顔でアドバイスしてくるなんて想定してないじゃん? いや聞き耳立ててたとかじゃなくてね。
なんてーの、生々しすぎるんだよね。明け透けなんだよね。
もっとこう、嬉し恥ずかし系のさ。
言いたいけど、言わない。言えないけど、話したい。みたいな?
恥ずかしがってるのを弄って幸せのおすそ分けを貰うみたいな、そういうものだと思うわけ。
そもそもさぁ、あの二人ってまだ婚約者だったはずでしょ?
なんで子供作ってんだ。
慎み持ちなさいよ自慢してるんじゃないよ。いや幸せそうなのを妬んでるとかじゃなくてね。
私はクラスの風紀と淑女の尊厳が脅かされてるんじゃないかと心配しているわけですよ!
「そういえば、ソフィアってまだお相手がいなかったわよね? この機会に決めたら?」
「絶対嫌です」
何言い出すのこの子信じらんない。この機会ってどの機会ダヨ。
こんなタイミングで「私と付き合って(はぁと)」なんて言おうもんならそれもう交尾してくれって言ってるようなもんじゃん。絶対愛ないじゃんそれ。嫌of嫌だよ、ベストof嫌だよありえない。
「ソフィアって理想高そうだよな。現実見てないって言うか」
「でも自分に釣り合う男を、と考えたら仕方ないんじゃないか? ネフィリムもだけど、彼女たちに釣り合う男なんてそうそういるもんじゃない。うちのクラスでもヒースクリフ様くらいじゃないか?」
「ソフィアが王族ぅ? ……はは、ぜってぇ無理だろ! だってこいつ、すっげぇわがままだし」
うるさいやい、カイルにだけは言われたくない。
もういい、寝てやる。
この話題が終わるまで寝続けてやる!
その前に授業ですよー。




