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お母様と空の旅を楽しもう


 森の入口にポツンと置かれた荷車。


 ここまで引いてきた御者とお馬さんは街に戻り、荷台に積まれていた荷物と一緒に、お母様と私が乗っている。


 お母様と空を飛ぶのに選んだのは、ちっちゃな飛行船作戦だ。


 飛翔の魔法は一人用に作ったから人を飛ばすことはできない。


 でも物だったらできる……はず。少なくともホウキでは飛べた。


 私が触れているというか、一緒に飛ぶ! と意識してるものは簡単に飛ぶ。

 だから多分、お母様と手を繋いでても飛べるとは思う。


 でも荷物あるしね?

 アイテムボックスには鎌鼬がいるからあんまり大きく入口開きたくないし、そもそも貴重品は安全が保証できない。


 荷馬車があるならそれに乗っちゃえばいいよね。

 しっかりとした乗り物の方が初めての空の散歩も堪能出来ると思う。


「それじゃあ、透明にしますね」

「なんだかドキドキしますね」


 期待しているお母様には悪いけど、今日の透明化は範囲が広いから手で塗れない。

 紙に垂らした水滴が広がるように、手から零した透明化の魔力が広がっていく。

 荷物の表面に広がり、積んである箱が次々に透明になっていく。その様子を眺めているお母様の表情はなかなかレアだ。最後に私とお母様を包み、完全に透明になった。


「……凄いものですね」

「すごいでしょう」


 ふふんと胸を張ってみたけど、透明だからお母様からは見えない。

 まあ気分の問題だ。


 初めての透明化はかなり戸惑う。

 自分の姿も見えなくなるからどうしようもなく不安感が襲ってくるのだ。

 掴むところがあるだけで不安感はだいぶ和らぐだろう。


「どこかに掴まっていてくださいね」

「分かりました」


 動く音はすれど姿は見えず。

 人に透明化をしたのは初めてだから新鮮だ。お母様の声だと分かっていても、何も無いところから声がするのは不思議な感じがする。


「次は空を飛ぶのですよね」


 しかしお母様は順応性が高すぎると思う。

 そんなにワクワクできるのも才能なんだろうか。


 でも珍しく感情が豊かだ。せっかくだから楽しんでもらおう。


「はい、準備はいいですか?」

「どうぞ」


 返事を聞いて、魔法を発動する。

 車輪が地面から離れる感触の後、ぐんぐんと高度をあげていく。

 数秒後には森の木々を見下ろしていた。


「本当に空を……! 凄い!」


 いやあ思い出すね。

 私が初めて空を飛んだ時なんて、風の吹くまま飛ばされていく不安定さで帰れなくなるかと泣きそうになったくらいだ。


 その時は結局、意志の力で多少は望んだ方向に行けることに気づいて時間をかけて戻ってきた。

 あんなに風の影響を受けるとは完全に予想外だった。


 それが今はこんなに安定した飛行ができるようになって……。


「ソフィア! 凄いです! 本当に凄いですよ!」


 お母様が幼くなったようにすら感じる。

 喜びすぎて落ちないか心配なくらいだ。手を繋いでおいてよかった。


 それにしても、ものすごい喜びようだ。


 まだ高度を上げただけだというのにこれでは、動き出したらどうなってしまうのか。


 顔が見えないのは残念だけどこれだけ喜んでくれるなら、秘密を話して良かったと思える。

 一人で抱え込んでいたら今の状況はなかったはずだ。


 今日は魔物に会ったり大変なことも多かったけど、いやはや、苦労したかいがあったってものだね。


 さあ、おうちにかえろー。


長年の夢が叶ったお母様、童心に帰る

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