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ソフィアセンサー


 異常事態が発生した。


 私たちの移動手段である空飛ぶ荷馬車は、お母様の意向により完全な隠密性能を有している。


 優雅な空の旅の最中はもちろん。

 離発着時にだって周囲に気を配って、誰にも見られないようにして透明化したり、透明化を解除してたりするんだ。


 そして陸路では有り得ない短期間での移動を実現するために、帰宅後には数日家に引き篭るといったつじつま合わせが行われる。


 つまり、今回の訪問は誰にも知らせていないのだ。


 ……にも関わらず。


「よ、ようこそおいで下さぃました。アイリス様」


「わざわざお出迎えありがとう」


 街の入口で、お姉様の婚約者であるロバートさんが待ち受けていた。


 相変わらずオドオドしている人だ。

 まあ、お母様の無表情が怖いのはわかるけどね。


 お母様が動揺もせずに対応してる間に小声でお兄様に確認する。


「お兄様が知らせたんですか?」


 お兄様は首を振って。


「いや、ソフィアの移動手段よりも早い連絡手段は、残念ながら持ち合わせていないよ」


 と答えた。


 なんだそれ、つまりロバートさんはエスパーだったのか? あるいは偶然?


 何かの用事でたまたま門にいた可能性はあるだろうけど……ようこそって言ったよね?


 思わず不可視化の魔法を自分の指で試してみた。

 うん、ちゃんと見えなくなってる。


 不可視化の不具合でもないとすると、あるいは魔力でも感知されたかな?


 飛行中は高度があるとはいえ魔力視は視力も強化できる。


 もちろん不可視化と同時に魔力の反応を隠す処理を施してはいるが、私やネムちゃんレベルの魔法使いが「何か変だな」と凝視すれば、魔力の流れや密度の差から、そこに何かが隠れていると看破することも不可能ではないだろう。


 ……でもロバートさんって、言っちゃなんだけどそんなに優秀な人でもなかったよね?


 となるとこの街独自の防衛機構?

 お母様が割と頻繁に王様にお話してるらしいし、実は王都ではお目こぼしされてただけで私の隠蔽魔法くらいは余裕で看破されてたりするのかな。だとしたら悔しいな。


 隠蔽魔法は見破られても気付かないし、見破ったことを教えてくれる人もいない。


 少し油断があったかもしれない。

 帰ったら新しい隠蔽魔法、考えとかないといけないな。




 ――そう思っていたんだけど。


 ロバートさんに連れられた屋敷で、お姉様は元気そうに言った。


「ああ、やっぱり来てたのね! なんだかソフィアが近くにいるような気がしたからロバートに出迎えに行ってもらったのよ。ね、みんな揃ってなにしにこの街まで来たの? いつまでいるの?」


 大きなお腹でゆったりした椅子にもたれかかってはいるものの、不安など微塵もなさそうな、実に平常運転のお姉様でした。


 つーかお姉様すごくない?

 見て気付いたわけでも魔力の異常を見つけた訳でもなく「ただそんな気がしただけ」って。

 それもしかして私が使う探知系の魔法と同じやつじゃないかな。


 だとしても距離が異常だし、なにより受動系ってのがもう私の魔法超えてるでしょ。


 自分から探そうとしなくても一定範囲に近付いたら気付くってのは私もできるけど、それは「一定時間自動で探知する魔法を発動」しているだけだ。

 寝てても効果があるような常時発動系の魔法は何年も練習しないと無意識で切れやすい。


 思えば私も、今では当たり前に使っている『身体強化』の魔法の常態化には苦労したものだ。


 寝てる間に切れたら寝苦しくて目覚めるように、布団を何重にもして眠ったり……お腹に重石を乗っけたまま眠ったり……まあ、色々だ。


 とはいえ今は、久しぶりの姉妹の再会を喜ぼう。


「お久しぶりです、お姉様」


「うん、久しぶり! 会いたかったよ、ソフィア!」


 身重の体もなんのその。


 お姉様は花咲く様な満面の笑みを浮かべて私たちを出迎えてくれた。


「――ん!?ソフィアの気配がするわ!!」

突然興奮しだしたアリシアを宥めるのに、ロバートは大層難儀したとか。

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