世界の滅ぼし方を知りました
リンゼちゃんは神様だ。
私が想像もつかない苦労だってしてるんだろうし、神様には神様の視点もあるだろうさ。
それにしたって、聞き方ってもんがあるんじゃないかな?
前世の母が友達と海外旅行に行った際に、現地の足ツボマッサージ師に「アナタ頭ワルイネー」と言われて、それまで激痛に悶えてたにも関わらず「はあ!?」って威嚇しちゃったって話を聞いたことあるけど、今ならその気持ちも分かる気がした。
言い方って大事。
だってね。
「……ねえあなた。生きていて楽しい?」
リンゼちゃんときたら、これだもん。
「とても楽しいです」
なんだろうこれバカにされてる?
つい返事がバカっぽくなっちゃったけど相手は見た目に似合わずバイオレンスな神様。
ここで「楽しくないです」とか言って「じゃあ私が終わらせてあげるわ」とか返されても困る。故に肯定しかできぬ。実際かなり楽しいし。
「そう。それは良かったわ。アナタがもしも『こんな世界滅んでしまえばいいのに』と願ったら、その願いが叶ってしまう可能性がある。あなたの魔法はそのくらい強力なのだということを覚えておいて」
え、なにそれ怖い。まさかの私が終わらせる側?
私ナーバスになることすらできないじゃん。それどころか実は魔王枠だったって話? 世界を滅ぼせる力とかネムちゃんが大好物のやつじゃんいやーんこわーい。
……まあ真面目な話、「世界が滅べばいいのに!」なんて考えることは無いと思う。
私が世界に絶望するとなると家族関係だろうけど、お兄様に嫌悪された挙句「二度と顔も見たくない」とか言われたとしたって……いや、これ大分ダメージあるな。想像でもキツい。心臓が変な縮み方したわ。
違う人で想像しよう。
お姉様に嫌われ……てもツラいから、お母様……あ、ダメこれ。リアリティ増した。本当に言われないか心配になってきた。
「もうソフィアの面倒を見るのに疲れました」とか言われそうじゃない? ねえ?
今更ながら、お母様ったらよく私みたいな面倒な子を育て上げたよね。
やっぱり見た目が可愛い娘だからかな? お母様かわいいの好きだし。
もしもブサイクに生まれていたら貴族の一員と認めてもらえず捨てられて、下町で若い頃からあくせくと働く就労児になっていたかもしれない。
なんてね。
私の家族はそんなことしない。
たとえ私の顔が可愛くなかったとしても、たまに不憫な目で見られるくらいで済むだろう。
美形家族にこんな変顔が生まれてごめんなさいって私の精神が崩壊する方が絶対早い。断言出来る。
てかね、貴族がおかしい。貴族がずるい。
ホントマジで美形しかいないから。
こないだのアドラスさんとか久々に見たビミョーな顔の人だったもん。
いやビミョーとは言っても、なんていうの?
整ってるけどカッコよくないと言うか、惜しいと言うか、ちょっと違うと言うか、そんな感じのね。整ってるだけに残念というかね。
あれだ、オーラの無いアイドルみたいな。……なんか違うな。
ともかく! 私は可愛いし家族は優しい!
それに最愛の家族に嫌われる事態になったとしても、私なら世界の破滅より自分の破滅を望みそうってことですよ。
嫌われる事態とか想像もしたくないけど、やらかすなら多分私の方だと思うし。おちゃめなところあるからね、私。
だからもしもがあっても世界は滅ばない。大丈夫なのです。
「ちなみにリンゼちゃんは世界滅ぼせるの?」
「……できると思う。やったことはないけれど」
考えたことも無かったと、リンゼちゃんは自分の手を見つめた。
……え、なに? 今なに考えてる? 怖いよ?
「試さなくてもいいからね?」
「しないわよ」
良かった!
不用意な一言で世界滅びるかと思った!
アドラスさんも顔が良かったら……それでも四つん這いはないかな。




