女神の想像を超える女
魔力が存在しない空間に閉じこめられたらどうするか。
それは魔力に依存し切った生活を送る私が、いざと言う時のために考え続けたテーマである。
とはいえ、そう取れる手段がある訳でもない。
ゼロから魔力を生み出すか、他所から持ってくるかくらいなものだ。
で、どちらの手段にしろ、大量の魔力の確保は望めない。
好き勝手に魔法を使いまくるためには膨大な魔力が必要で、その為には必ず通らねばならない道がある。
魔力の増幅。
その手段を、私は見つけていた。
でね? 見つけてはいるんだけど、必要に迫られたことは無いから、実際に有効なのかなーってそこはかとなく心配なわけ。
そこで、実際に私を魔力の無い空間に幽閉しようとしてたリンゼちゃん相手に「魔力の無い空間での魔力の増やし方」を見てもらってお墨付きを貰えれば、有効な手段と証明されるんじゃないかと思ったわけ。
魔法はイメージ。
自信が何よりも大切なのだ。
「魔力、増やせますよ? 環境魔力が無くても、ほらこうやって。魔力を増殖させればいいだけですよね?」
「そんなことができるはずは……」
抗議を無視して、ほいっと手のひらに集めた魔力を内部の魔力だけを使って膨らましていく。イメージは寝かせたパン生地。ビックリするほど膨らむよ!
はいそして、一晩寝かせたものがこちらでーすと脳内で三分クッキングの料理人風コスプレをしたミニソフィアちゃんが謎の力で、急速に膨らませた生地……じゃない、膨らんだ魔力を用意してくれたなら、魔力を構成する魔力の元、魔素を一粒ずつ意識して丁寧に丁寧に、ねりねりねりねりとこね回しながら一通り「おお、これは良い魔素だ! きっと良い魔素だ! 隣の魔素も元気になってきたね! いい感じだね〜」と適当に褒めそやしてやれば、濃さも大きさも大気中の魔素と遜色ないそれなりサイズの魔力塊が出来上がり〜。
魔素ちゃんはいくら膨らんで薄まったりへたったりしても、褒めればすぐに元気になっちゃう便利で良い子! いつもお世話になってるし、私魔素大好き!
手ずからもみもみして大きく育った私の魔素ちゃん見て見て! と差し出してみれば、初対面での人好きのする笑顔か無感動な表情しか見せてなかったリンゼちゃんが、瞳を見開いて驚いていた。ふふん、どうよ家の子は!
「…………できて、いるわね。……あなたって本当に規格外なのね」
「いやあそれほどでも」
ふふふ、褒められちった。まあそれほどでもありますけどね!
魔法とか魔素とか、単なる不思議パワーって一括りにしてたけど、学院で色んな人の話を聞くうちに分かってきちゃったんだよね。
全ての根源である、魔素こそが一番大事!
料理には素材が大切だ〜って言ってるようなもんよ。
そもそも魔法とか、魔素が規則的に並んで反応起こしてるだけとも言えるし。上質な魔素が潤沢に用意出来るなら、魔法とか軽い軽い。
となれば当然作るよね。魔素。
で、ほら。私ってスマホ世代だから。ゼロから作るとかしちめんどうくさい事やってられないから。
目の前に見本があったらまずはコピー試してみるよね、ダメ元でさ。
そしたら……できちゃった☆
若干劣化はするけど、これどーにかなんないかなーって弄り回してればある程度コピー元に近づくくらいには回復するっぽい事も発見したし。
燃料切れのない魔法少女とか私最強じゃない?
「いえ、本当に。魔法という概念を作りだした、神である私よりも魔力の扱いが上手というのはちょっと異常な事よ」
あはー、また褒められちゃったー。でもあんまり異常だ変だって連呼しないで欲しいなー。
そんなこと言ったらリンゼちゃんだって、充分変な子なんだからね!
……あれ? これって自分が変な子だって認めてる?
私はほら、変とかじゃなくて個性的なだけだから。
個性的で魅力的な女の子。
あー怖い。自分の魅力が怖いなー。
魔素すらも誑かす魔性の女ソフィア。
もう人生舐め切ってる。




