やっぱ犯人じゃん
ネムちゃんは話し方とかが幼いせいか小さいイメージあるけど、体は私より大きい。
だから当然、手も。私より少しだけ大きかった。
そしてぷにぷにだった。
やっぱり人によって触り心地って違うものなんだね。
あまり触らせてくれないけど、お兄様の手はぷにぷにというよりはふにふにって感じ。もちろん褒めてる。なによりずっと揉んでると次第に照れてくるのか落ち着かなくなってくる感じが最高に良い。
お母様の手は当然私よりも断然大きくて、しなやかで綺麗な大人の女性って感じの手。指がすらっと長いの。
もう見た目が完成されてるよね。美しい手のお手本みたいな。
その上触り心地もさらさらとしてるんだからずるいと思う。でもそれは、つまり将来私もそんな綺麗な手になれるということでもある。やっぱりずるくなんてなかった。
そんな綺麗な手なのに、手招きされると心臓がドッキンコしちゃうのはなんでなのかな。美しすぎる造形の手指に見蕩れちゃうのかな。不思議だね?
なんてね。
手招きと大体セットになってる嘘くさい笑顔が原因だなんて分かり切ったことですよ。不思議でもなんでもない。
パブロフさん家の犬並みに従順に躾られた私は、お母様の声音ひとつで嬉しくなったり悲しくなったりしちゃうのです。素直ないい子なので。
っていうか、美人なお母様のあの冷ややかな目。その業界の人にはご褒美になるんじゃないかな。いい商売になったりして。私もそろそろ癖になりそうなくらいだし。
「ソフィア。聞いていましたか?」
あ、ほらちょうどこんな感じの。
はいはい聞いてますよー。
えーと、要はあれでしょ?
アドラスさんが実は魔族で、これまでにもコソコソとやらかしていたってことでしょ?
私的にはネムちゃんも魔族だったことが一番の驚き! と言いたいところだけど、まだ子供だった頃にお父様たちと初フライトした時に処理した大岩が、実は魔族製だった事が一番の驚きポイントだったかな。
岩て。魔法に長けた魔族が岩て。超物理じゃんね。
いや普通に考えれば大岩が自然発生とかする訳もないんだけど。
というかあの大岩が実は岩じゃなくて、あの時滅したでかい虫が作った、フンコロガシのアレ的なものだってことがね。ショック大きいよね。直接触れないで処理した昔の私、GJすぎる。
……そういえばあの大岩もどき、旧アイテムボックスに入れたままだっけ? また開けない理由が増えたな。
「アドラスさんが犯人ってことですよね」
「違います」
あれ、違うの?
「種族を偽っていたという事実はありますが、犯行と呼ばれるほどのものではありません。従って、犯人と呼ぶのは間違いです」
「でもメリーを連れ去った犯人ですよね?」
「……………………」
あ、黙っちゃった。犯人呼び否定出来ないんだね。
そもそもメリーを預けたのはネムちゃんなのに、ネムちゃんの許可なく無理やり連れ出した時点で私的にアドラスさんは有罪だ。
もう十分な辱めを受けてたって?
あれは連れ去られたメリーの私刑に過ぎないよね。あれはあれでざまあだったけど、罪には罰をきちんと与えないと。
というかメリーを連れ去られて、私だってそれなりに怒ってたんだから。今はだいぶ気勢が削がれちゃったけどね。
「念のために確認しますけど、他人の私物を所有者の許可なく持ち去るのは悪いことですよね?」
「……そうですね」
うん、やっぱりアドラスさんが悪い。
これはそのうち、きちんとお礼をしないといけないね?
哀れみながらも追撃の手を緩めないソフィアさん。きっちくー。




