モテ期がきました
【探究】の賢者とか呼ばれてるはずのおっさんが酷い。
醜態のバーゲンセール会場はここですかってくらい酷い。
それを強要させてるのがメリーだって言うんだから、本当に困ったものではあるんだけど。
飛ぶわ動くわ罵倒するわ暴力振るうわでやりたい放題ではあるけど、私を主人だと認めてくれて、私の為に怒ってくれる、私が知るままのメリーでいてくれたのが嬉しい。
思わずほのぼのしちゃうじゃないか〜。
目の前にメリーの下僕さんが丸まったままでなければ今すぐにでも一緒に帰ってかわいがってあげるんだけどな。
「ちなみにソフィアは私の娘でもあります」
そして唐突に。
お母様、謎の乱入。
私の頭をナデナデしながらの唐突な宣言。なぜか得意気な雰囲気も感じる。
なんかよくわかんないけど、アドラスさんの優位に立ちたいのかな?
娘の立場を迷わずに利用して相手の弱みに付け込んじゃう姑息なお母様でも私は好きだよ、安心してね。
大体お母様って母親ではあるんだけど、見た目とかちょー若いし。母親ってよりかは友達って意識が近いんだよね。
それに仏頂面の割に感情豊かだったり、意外と乙女チックだったりとか。ほら、公爵家のお嬢様だからか素直で純粋な面があるじゃん?
ものすっごく俗な例えになるけど、娯楽を何も知らないお嬢様に漫画を勧めて、オタク沼に落とした感じって言うの?
ほうらお嬢さん、楽しいものあるよお、世の中には楽しいことが溢れてるんだよお、と誘惑して、初めは抗いながらもきゃあとかまあとか言いながら徐々に娯楽の魅力にのめり込んでいく様を先人として微笑ましく眺めているあの感じ?
綺麗な人が自分の影響を強く受ける姿ってなんか興奮するよね。
……違う。私の性癖の話じゃなくて。
まあ要するに、普段固いお母様はもっとはっちゃけた方がいいと思うよって話かな。
お母様が可愛らしく威張ってるのも可愛いし。
そんな私の感想はともかく、私がお母様の娘だと告げられたアドラスさんはその事実を知らなかったらしい。
お母様の狙い違わず効果は絶大なようで、アドラスさんは顔を上げ驚愕の表情でお母様を見ていた。
「ソフィアは我の友でもあるのだ」
かと思えばなぜかネムちゃんまで対抗しだした。
私の腕を取って仲良しアピール。
ぎゅっと抱かれた腕が慎ましやか胸に包まれて幸せ……慎ましやか? あれ、案外ある? ネムちゃん案外あるぞ!! 羨ましい!
なんたることだ! 私にも分けろ!! と怒れる気持ちも、ふふんと得意気なネムちゃんにぎゅっぎゅっとされれば直ぐに解けてしまう。
ふにふにである。
てか何この状況。私モテモテじゃん。
嬉しいけど、どうせならもっと甘えたりはっちゃけたりできる状況でモテたかったな。
ここには男が二人もいる。
一人はクラスメイトで、もう一人はおっさん。
さすがの私も異性の前で理性を投げ捨てる勇気は無かった。あ、勿論お兄様は別ですがね!
てかさ、可愛い女の子が二人と綺麗な女性が仲良くしてるという最高の場面を目の当たりにしてるはずなのに、それを見たアドラスさん、あろうことか名状し難いなんとも複雑そうな表情でいらっしゃるんですけど。
一言で言っちゃえば嫌そうな顔。
おかしくない?
失礼しちゃうね全く。
この人もお父様と同じで女心分からないタイプだなきっと。
女の子を見たら無条件でかわいいと思っとけば全て丸く収まるというのに、それだけの事がなぜできないのか。理解に苦しむ。
というかこの人、女性を見下すタイプの人じゃないかな。
そーゆーのって分かるんだよねえ。
性的な目とはまた違う、邪魔者を見るような目してるからさ。
お母様が勝ち誇りたくなった気持ちがなんとなく分かっちゃったな。
――と、それはともかく。
「……な、なんだ?」
お母様、ネムちゃんと、図らずも私との関係の紹介みたいな流れになってしまった為、私たちの視線は自然と残る一人に注がれた。
みんなに見つめられて焦る王子様。
がんばれ。無茶振りに答えるのもエンターテイナーの務めだ。王子様の仕事じゃないだろうけど。
「ぼ、僕とソフィアは……、いや! 僕は、ソフィアの――」
あれ? そんな気合い入れる必要ある?
なんか嫌な予感してきた。
アイリスとアドラスの間には過去ソフィア関係で一悶着あったみたいですよ。
アドラスざまあは母の愛の形……なのかもしれない。




