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賢者の女王様


「ネフィリム様。メリー様を引き取ってくれないか」


 ネムちゃんの師匠、名をアドラスと言うらしいおじさんは、メリーのお馬さんになっていた。


 メリーに絶対服従って感じで弟子への様付けを強要されても逆らえないご様子。

 その姿は哀れと言う他ない。


 これが賢者か……。


 思わず同じ賢者であるお母様をチラ見してしまったのを目敏(めざと)く察知され、物凄い眼光で睨まれた。()ぐに視線を()らす。本気で怖かった。


 まあ今のは私が悪いね。

 こんなおっさんとお母様が同じカテゴリとかありえないし。



 とりあえず変態の原因がメリーだって事と、何故かは知らないけど賢者ともあろう者が文字通りメリーの尻に敷かれてるってのは分かった。


 あとメリー、喋るのめっちゃ流暢(りゅうちょう)なのはひとまず置いとくにしても、その女王様チックな話し方はどこで学んできたの。私そんな話し方した事ない……ないよね?


 マリーもそうだけど、魔石埋め込んだ辺りからこの子らの思考レベル跳ね上がってないかな。

 謎だなあと思う反面、うちの子が優秀で嬉しく思う自分がいる。


 こういうのも親バカって言うのかな?


「……あのぬいぐるみ、動いてないか?」


 あっ、王子様もいるんだった。


 王子様から見たらいい歳したおっさんが一人でお人形遊びしてるように見えてたのかもしれない。実際私にもそんな感じに見えたし。


 しかしてその実態は、ぬいぐるみに頭の上がらない賢者でしたー。……果たしてどちらがマシなのやら。


「それにこの女の子の声。もしかして、あのぬいぐるみが喋ってるんじゃ……。いや、そんなわけないよな。そんなわけ……」


 ありゃま、王子様が現実から逃げ出してしまった。


 残念だけど、現実って割とメルヘンとかトンデモで出来てると思うよ。

 トンデモ魔法をいくつも使える私が言うんだから間違いないと思う。メリーも私が作ったみたいなものらしいし。


 さてどう誤魔化すか。

 このまま放置はできないよね、というかこれもう誤魔化せないよね? いっそバラして巻き込むか。


「ん?」


 王子様の対処に悩む最中、袖を引かれる感触に振り返れば、ネムちゃんが愛らしく寄って来てひそひそと内緒話を持ちかけてきた。


「メリーちゃんの事、言っていい?」


 とてもうずうずしていらっしゃった。


 今なおメリーを背に乗せお馬さん状態の哀れすぎる賢者(笑)。


 そんな残念なお師匠の懇願を受けて、なんとか助けようと……って感じではどう見ても無い。


 私の許可を求め煌めくネムちゃんの瞳は、自慢の宝物を見せびらかしたい子供の様にしか見えなかった。


 改めて状況を確認すれば、賢者おっさんはもう余計なことは言うまいと口を(つぐ)んでいるし、お母様はそんな見るからに(みじ)めなアドラスさん? の姿に「ないわあ……」って顔になり始めている。王子様に至っては動き喋るぬいぐるみを前にして錯乱状態。


 ……いつも冷静な王子様がそうしてると仕草も相まって弟君と瓜二つだな。弟君のは綿菓子を初めて見た興奮からだったけど。


 やっぱり兄弟だけあって似てる。不覚にもちょっとかわいいと思ってしまったじゃないか。


 ともあれ。


 この混迷極める事態を収拾(しゅうしゅう)するのに、ネムちゃんは打って付けだ。


 私はニッコリと笑って許可を出す。


「気を遣ってくれてありがとう。ここにいる人達にはバレてもいいから、バッチリ決めちゃって?」


「……っ、うん!」


 許しを得たネムちゃんは笑顔満開。


 颯爽とマントを(ひるがえ)し、威風堂々メリーの前に立つと、これでもかとふんぞり返って声高に告げた。


「ふははははは!! 先代魔王アドラスよ! 我が片腕の力、見誤ったようだな!!」


 ひとしきり笑い終わるとネムちゃんの華奢な手がまた無意味にマントを翻し、そのままメリーに衆目を集めた。


「これなるは我を覚醒させし魔王軍の頭脳! 失われし浮遊魔法の使い手! 魔宰相メリーであるぞー! ふはははは!!」


 ネムちゃんが楽しそうでなによりです。


メリーの話し方が何故女王様風なのかなんてそんなそんな。

カイルいびってる時のソフィアを参考にしたに決まってるじゃないですか。


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