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かわいい魔物を無力化しよう


 転ばせて薬を塗ってくる敵が現れた! ▽



 どうする? ▽



「経験値だ! 倒せ!」

「とりあえず逃げよう」

「それ敵じゃないね?」◁




 うん、これはもう敵じゃないよね?


 そもそもかわいすぎて攻撃する気も起きないけど。


 ころばされたと気づいた時はムカついたけど、妖怪の仕業なら仕方ない。

 彼らは自分の意思と無関係に決められた行動を強制される悲しい性なんだ、むしろ同情せずになんとしよう。

 小豆洗いとか賽の河原並の拷問だと思うし。私、人間でよかった。


「ソフィア、どういった魔物か説明を」


 未だ警戒心を滲ませたお母様が問いかけてくるけど、私の中では既に安全な生き物認定された鎌鼬たち。

 過剰に怖がるみんなの姿はもはや苦手な動物を前にした人にしか見えない。


 まあ見た目かわいくても魔物みたいだし、危険のない習性だと分からなければ怖いのも当然だよね。


 唯一知っている私が説明するべきだろう。


「あれは鎌鼬(かまいたち)、ころばせる役、切り裂く役、痛みを消す役の三匹揃って行動する……生き物です」


 生き物かなあ。目の前にいる以上他にいいようがないけど。


「では後一匹どこかに潜んでいるわけですね」

「え」


 その発想はなかった。


 言われてみれば初めに見た時は一匹だった。

 次に見た時に二匹に増えて、なら三度見れば三匹になりそうと。うん、真っ当な判断……だね?


 でも鎌鼬は三匹で一つの妖怪だ。


 姿を見せるだけならまだしも、行動を起こす時に足りないままというのは有り得ない。少なくとも私はそう思う。


 生みの親の私がそう信じてるんだから、この鎌鼬はそういうものになっているんじゃないかな。


「いえ確かに一匹足りませんが、何か理由があるはずです」


 鎌鼬の切り裂き担当だけいない事態とか想像もつかないけど。これでは鎌鼬と呼べるのかすら怪しい。妖怪としての前提が崩れそうだ。


「理由と言っても、三匹揃っているのが常なのなら――」

「あ、あの! 魔石が足りなかったのではないでしょうか!」


 話し合っているとレニーが大きな声で参加した。


 大きな声とはいっても距離がある。


 近付いてくればいいのにと目を向けると未だ鎌鼬たちを警戒していた。

 一瞬でも目が離せないと必死な表情はその隣にいる団長さんと同じ顔をしている。こうして見ればよく似ている。


 そして鎌鼬たちから目を離した私はまたころばされた。


「あれだけの魔力量は自然発生ではありえません! 魔石を媒介にしたけど容量不足とかっ!」


「なるほど」


 レニーの言葉を受けてお母様には思い当たるところがあったらしい。


 もちろん私には無い。

 話に参加できなくて寂しいから魔力量の調べ方を今度教えてもらおうと心のメモに書き留めておく。


 よっこいしょと。

 レニーと話しているお母様に気付かれなかったのをいいことに速やかに立ち上がる。

 ころぶのを見られるのはなんか恥ずかしいし、私はころばなかったことにしよう。


「二匹合わせれば標準的な魔物の魔石サイズ。よく見れば大きさも違う。何かの拍子で二つに割れた魔石から生まれたならば二匹なのも説明がつきますね」


 二人は何事も無かったように会話している。


 視線から外れてる私はともかく、私以外の全員に注目されている鎌鼬が動いたのに誰も反応しないのはあれかな、「残像だ」ってやつかな。

 鎌鼬すごい。


 すごいけどやることはころばせるだけ。かわいい。しかも痛くない気遣い付き。やさしい。


 まぁいないのが切り裂き役という一番危ないのだというのが大きいのは分かってる。


 ころばせて切り裂く、もしくは切り裂いて痛みをなくす魔物だったらこんなに悠長にしてない。

 いくらかわいくても即スパッと処理してたはずだ。害獣死すべし。


「ソフィア、害がないのなら遠慮することはありません。貴女の魔法で対処してみなさい」


 連れてこられた時点で予想はしてたけどやっぱり任せる気だったんだね。


 とはいえ、害のないかわいい獣を殺すのは抵抗がある。何かいい方法はないだろうか。


 私に取れる手段は多くない。


 いくら魔法が万能とはいえ、万能にみえる裏側では実用できずに消えていった数々の魔法があるのだ。


 日々の地道な試行錯誤の上に万能魔法少女は存在している。即席魔法少女を目指していたら今頃屋敷は跡形もない。そのくらいの苦労はしてきた。


 だから取れる手段も限られる。


「じゃ、やりますね」


 タイミングが大事だ。


 今もずっとこちらを見ている鎌鼬たちから視線を外す。ころばされる。

 予定調和って素晴らしい。ちょっと楽しくなってきてたから残念だ。


 立ち上がって視線を戻す。やっぱりまだ鎌鼬たちは同じところにいる。

 あの木に対するこだわりが気になるけど頑張って無視した。


 もう一度、視線を外す。それと同時にアイテムボックスを正面にぐわっと大きく開いてすぐ閉じた。


 今度はころばされなかった。

 木のところを見ても鎌鼬たちはいない。


 うん、捕獲完了。


団長とレニーはソフィアが一人ではしゃいでいると思ってます。子供だからね。

ラウルとスワン?その辺にいるんじゃない?

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