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私信用なくない?


 教室に入った途端ネムちゃんに謝られ、その時の「メリーちゃんが無理矢理連れて行かれた」発言を誘拐と誤解したクラスメイトに詰め寄られた。



 今はもう「メリーちゃんはぬいぐるみ」と馬鹿の一つ覚えの様に繰り返した結果、なんとかみんなの誤解は解けた。


 けどその必死さが逆に怪しいとでも思われたのか、王子様にだけはまだちょっと疑われてるっぽいんだよね。


 素直に引いてくれればいいのに。


 心配してくれてるんだろうけど、正直放っておいて欲しい気持ちが強い。王子様関わると面倒事になる印象あるし。


「本当に大した事ではないんです。ぬいぐるみが取り上げられたと、ただそれだけで」


「それだけならソフィアか謝られる理由はないだろう。それに大した事かどうかは私が決める」


 ああん、もう面倒くさい……。


 しつこく食い下がってくる王子様も面倒くさいけど、未だ興味津々なクラスメイトに囲まれてるこの状況がもう面倒くさい。


 場を仕切る王子様さえ言いくるめればと思ったけどそれも難しそうだし、迂闊にも大した事ないと公言しちゃったから場を移してこっそり説明することも出来ない。


 ……有耶無耶(うやむや)にしようにも、始業の時間も遠いし。

 こんなことならもっと家でうだうだと無駄な時間を過ごしてくるんだった。


「ではネフィリムに改めて聞こう。『メリーちゃん』というのは、本当にぬいぐるみなんだな?」


「え!? ……え、えっと、その。……ぬいぐるみ、だよ?」


 おどおど。びくびく。ちらっ、ちらっ。


 明らかに戸惑いながら、私の様子を伺いつつ答えるネムちゃん。


 その姿を見たみなさんは、ネムちゃんの視線を追って、疑わし気なジト目を私に向ける。


 その目は雄弁に「これ、ソフィアが言わせてるよね?」と物語っていた。


 私は無駄だと知りつつも、両手を上げて首を横に振ることしか出来ない。


 何を白々しいとか、嘘つけ、って思うでしょ?

 私だってネムちゃんの反応を見ればそう思うさ。でもホントに何も知らないんだ、びっくりでしょ?


 つーかネムちゃん。なぜそんな意味ありげに言葉を詰まらせこっちを見るのか。マジに意味不なんだけど?


 今の私の気持ち、わかるぅ?

 王子様が思いがけずも有能で、今一番大事な明確にしなくてはならない部分、しかも私たちにとっても肯定することになんの問題も無い最高の質問をしてくれたというのに、それを無下にされた私の気持ちが。この孤立無援な状況を誰に予想できよう。


 だってメリーちゃんは、紛うことなきぬいぐるみだ。

 ただのぬいぐるみとは言い難いけど、分類上はぬいぐるみ。


 そりゃ私にとってはぬいぐるみってこと以上に、悪意なんて危ないモノを溜め込んでる上、フェルたちとの仲が心配な病弱な妹みたいな存在ではあるけどさあ。

 念話で意思疎通のできないネムちゃんにとってはありふれたうさぎのぬいぐるみでしかないはずでしょ。どこにでもある普通のぬいぐるみ。そこに疑う余地はない。


 それが? まさかの? 玉虫色の回答ぅ?


 もうネムちゃんが理解できない。


 天然だ、メルヘンだ、精神年齢が幼いんだと思ってはいたけど、まさかメリーを預けたこの短い期間で、メリーがぬいぐるみに見えなくなる程の親愛の情を注ぎ込んだとでも? ……なんか有り得る気がしてきた。だってネムちゃんだし。って、そんなん想像できるか!


 ホントにもう、ネムちゃんってば。


 ……メリーを愛してくれるのは嬉しいけど。

 ほんの少しでいいから、今の私の置かれた立場も気遣って欲しかった。


「……ソフィア。正直に話してくれないか」


「なにか事情があるんだよな? お前良い奴だもん。分かるよ」


「ねぇ、お願いソフィア。話して。私たち、力になりたいの」


 クラスメイト様の暖かいお言葉にもうね、涙が出そう。


 君らもうちょっと私の話信じてくれても良くない?

 親身になってる風だけど、私が少女誘拐の事実を隠蔽しようとしてるって決めつけてない??


 あー、もういいよ。全部話すよ、面倒くさい。


 それで信じてくれるかは分からないけど、こうなったらメリーが意識のあるスパイ要員だってこと以外、全部話してやろうじゃないか。


 でも覚悟してよね!!


 私とネムちゃんがどんだけメルヘンな話をして、メリーがネムちゃんの家に行くなんて話に至ったのか。常人に理解できると思うなよ!?


 ……私にだってネムちゃんの思考は読めないんだからねッ!!


条件が重なりすぎて説得がやたら難航してる。

こんなはずではなかったのに……。

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