魔物の正体を暴こう
アップルパイ編、長すぎィ!
魔物を探していたらフェレットに出会った。
なんでフェレット?
地球上でありえないサイズ、森の主かな。
「かわいいですね」
みんなが目も離せなくなるくらいの愛らしさだ。アイドルデビューすればいいと思う。見世物小屋とも言う名の舞台だけど。いや動物園かな。
「否定出来なくて困っています」
お母様が変なこと言ってる。
かわいいならかわいいと素直に言えばいいのに何を困ることがあるのか。かわいいは正義ですよ。
「分かりませんか? あれは魔物ですよ」
魔物。
かわいいのに悪っぽい。あんなにかわいいのに。
「あのフェレットが?」
くりっとした瞳。体毛は綺麗な純白。鼻をひくひく動かすとヒゲも一緒にふりふり動く。実に愛らしい。
真っ黒で禍々しくて生き物かすら定かじゃなかったあの魔物と同じものとは思えない。
「フェレットが何かは知りませんが。あれだけの強い魔力、魔物以外にありえません」
ありゃ、フェレット知らないのか。かわいいもの好きのお母様ならきっと気に入るのに。
ていうかその言い方だと、無制限に魔法使える私が魔物になっちゃうんだけど真面目に言ってる? あれ、もしかして私の魔力量は分からないのかな?
魔力の多寡はどうやって調べてるんだろ。謎だ。
「完全に実体化している。あれはマズい」
「あんな魔力の量……見たことないよ……」
密かにかわいいを共有できると期待していたレニーは本気で怯えモードに入っていた。
ひと目でわかるほどにヤバかったらしい。
もう一度見てみる。
……何度見てもでかいだけのフェレットに見える。
ただ、じーーーーーーっとこちらを見ている、凝視している。さっきまでお菓子食べてたから何か餌でも持っていると勘違いされてるのか。
何も持ってないよーと示すために手を振ってみた。無反応。うん知ってた。
「連れて来て正解でしたね。しっかりあなたを餌と認識しているようです」
「えっ」
餌ぁ!? なにそれ、私、囮ってこと!?
お母様そんなつもりだったの!
「わ!」
しかも急に吹いてきた風に突き飛ばされてころんじゃうし! 踏んだり蹴ったりだ!
「ソフィア!」
お母様が叫んだ。
えっ、なに?
そういえばせっかく首根っこを掴まえてたんだから倒れないように……あれ?
掴まれてたのに私、どうやってころんだ?
それに、感触が……?
「無事ですか!? どこかに怪我は!」
「だ、大丈夫、みたいで、す」
ころんだけど痛みは全く無い。
それよりもお母様のあまりの慌てっぷりに逆に冷静になった。
いつの間にか外していた視線を戻す。
まだいる。だけど、違和感は確信に変わった。
私をころばせた犯人はあいつらだ。
「お母様、私あの生き物を知っていると思うのですが」
同時にまさかとも思う。
あれは日本以外には存在しないはず。
「魔石は貴女の魔力を得て成長したはずです。魔物を倒す時に使った魔法の属性を得たり、或いはその時の意思や想いが形になることは稀ですが例があります」
でもやっぱり、想像通りみたい。
初めての魔物に無我夢中で放った風の刃。
呪文とは別に、私がその時に思いた浮かべていた言葉は《鎌鼬》。
一匹目がころばせ、二匹目が切り裂き、三匹目が薬を塗る。
気付かぬうちに痛みもなく裂傷を与えると云われる三匹でセットの妖怪。
自分の体を見下ろす。
裂傷は見当たらず、ころんだけれど痛みはない。
巨大フェレットだとばかり思っていた巨大イタチを見れば、また木の陰からこちらを覗いていた。いつの間にか二匹に増えて。
どういう訳かは分からないけど切り裂き担当が行方不明らしかった。
ソフィアの切り裂き魔っぷりに魅了された二匹が切り裂き担当を捨てた訳じゃないです。