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至福の時間


 アーサー君から聞き出した内容。


 それは……聞いてもよく分かんなかった。


「なんて?」


「だから、ソフィアがどんな学院生活を送りたがってるのか聞いて来なさいって」


「なんで私の? そんなの聞いてどうするの??」


「そんなの俺が知るかよ」


 ……分からん! あの王妃様の考えることはまっったく分からん!


 ヒースクリフの学院生活ならまだしも、一回会っただけの私の、それも理想の学院生活とか……アンケート調査かな? わざわざアーサー君まで送り込んで??


 謎だ。やっぱり私、あの王妃様苦手かも。


 とりあえずアーサー君の頭を撫でて癒されよう。


 隣りに座るアーサー君のサラツヤヘアーに手を置くとすぐに睨まれたけど、私を悲しませると綿菓子が小さくなると思い込んでるアーサー君は大人しくされるがままになってくれる。


 軽い思いつきだったけど、使えるなこの設定。

 同じお菓子を人質に使うのでも、他人に取り上げられるんじゃなく、自らの行いによって失う。子供の自制心に訴えかける最良の方法かも。


「おい、いつまで撫でているんだ」


 文句を言いつつ逃げはしないアーサー君。


 ……これ抱きしめてもいいかな?


「ねえソフィアちゃん。このワタガシキ? の事で相談があるのだけど」


「ああそれ。良ければあげますよ」


「え、本当? いいの?」


「簡単に作れますから」


「うわあ、ありがとう。良かったわね、シャルマ」


「はい! ありがとうございます、ソフィア様!」


 笑顔だと!? これは貴重な!


 ありがとう綿菓子。君はいい仕事をした。


「おい、ソフィア。そういったものは、まず王家に献上するものじゃないか?」


 やりとりを見ていたアーサー君が不満げに睨んできた。


 いいかい? 睨んできたんだ。

 真横に座り、頭を撫でさせ、手には綿菓子を持って口元をちょっと汚した小さな王子様が、上目遣いで睨んできたんだ。


 かわいすぎかよ。


「アーサー君も綿菓子機欲しいの?」


「………………欲しい」


 ぐはぁ。


 なんなのもう丸くなっちゃって! 初めの反抗心はどうしたのさ!


 いや分かるよ。つい反抗したくなったけど、それでも綿菓子機が欲しい想いの方が強かったのはよく伝わってきたよ。


 その葛藤の末に絞り出された素直な感情のどれほど愛らしいことか!! 君はもう少し自覚した方がいいと思う!


「……くれないのか?」


「あげる。もちろん、あげるよ」


「そうか! ありがとう、ソフィア!」


 ……私は今、世界の真理に気付いた。


 美人は得だしかわいいは正義だ。それは不変の事実だ。


 美少女も美少年も何してたってかわいい。

 泣いても、怒っても、嫌われてたってかわいい。それも事実だ。


 でも。


 ――やっぱり笑顔が、一番かわいいんだよねぇ〜〜〜!!


 ありがとう、ありがとう綿菓子。ありがとう綿菓子機。


 子供を笑顔にする最高の仕事、見せていただきました。


「……あの、ソフィア様。ではこれは……」


 アーサー君の笑顔にやられていたら、シャルマさんの戸惑った声に我に返った。


 その手には綿菓子機。目線は、私とアーサー君を行ったり来たり。そして八の字の眉と不安げな顔。


 安心させるようにゆっくりと頷き、私は柔らかい笑みを浮かべる。


「アーサー君のは、後で別に作ります。それはもうシャルマさんの物ですよ」


「あ、ありがとうございます」


 いいのよ、いいの。

 全ては綿菓子様の功績なのだから。


 私はそのお手伝いに、手を少し貸しただけ。


「あ、紅茶のお代わり貰えます?」


「はい、ただいま!」


 甘い空気に包まれたこの部屋で。


 美少年とメイドの笑顔に囲まれ、優雅にお菓子を食べる贅沢。


 これぞ至福。


認識の外に追いやられたヘレナさん。

でも大丈夫。

幸せな人達を眺めているだけでも幸せな気持ちになれるからね。

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