レイネシア視点:息子の恋路
レイネシア=王妃様です。
うふふ。
ああたのしい。たのしいわあ。
ふわふわと心に羽が生えたみたい。
大切な人を想って、どうすれば喜んでくれるのか。どうしたら望む未来に近付けるのかと、頭を悩ますのがとってもたのしい。
やっぱり女は恋をしてこそ輝くものよね。
――とはいえ、恋をしているのは私じゃない。
なんと、息子のヒースクリフちゃんなのよね〜。
それも、今までのお遊びとは違う本物の恋!
――これが初恋だものね♪
うふふふふっ! 初めての感情に戸惑う息子、かわいいわあ♪
少し前まで、いっつも退屈そうにしていたのに。
どんなに綺麗な女の子が相手だって関係なく、当たり障りのない笑顔で受け答えができていたのに。
その相手が愛しの聖女ちゃんになっただけで……うふふ。
そうね、そうよね。
聖女ちゃんはいままでアナタの近くにいなかったタイプだものね。
本気なんだもの。嫌われたくないわよね。
うふふ。恋愛に臆病なヒースちゃん、かわいいわあ。
聖女ちゃんも、お兄ちゃんの背に隠れて小さくなっちゃって。とってもかわいかったわあ。
お兄ちゃんの背中に隠れちゃうくらい私に怯えてるのに、やたらと意思は強くて。それに頭も良くて、きっと勘も鋭くて。
うふふ。やっぱり、女の子っていいわよねえ。アイリス様が羨ましいわ。
もしも聖女ちゃんみたいな子が私の娘になったら。
それはきっと、毎日がたのしいのではないかしら。
――頭が良いのにどこか抜けていて。
意識的にアイリス様やロランドくんに甘えているのをお互いが分かった上で、それを許されていて。
おっちょこちょいで、かわいくて。
小さな身体で頑張って、たのしくて賑やかな雰囲気を作っちゃう。そんな、不思議な子。
「母上、僕の話を聞いていますか?」
あらあら、ヒースちゃんたら。拗ねちゃったのかしら。
思えばこんな風にヒースちゃんと話しているのも、聖女ちゃんのおかげなのよね。
「うふふ。もちろん聞いているわよ?」
本人は不服そうだったけれど、私にとってのソフィアちゃんは、やっぱり聖女ちゃんなのよねえ。
だってソフィアちゃんに会う度、幸せなことが増えていくんですもの♪
「お母様の言う通り、僕はソフィアに避けられているみたいです。どうすれば好意を持ってもらえるのでしょうか」
「うふふ。大丈夫、好意はあると思うわ。避けられている方も理由の裏付けが取れたのだけれど、知りたいー?」
「本当ですか!? 知りたいです!」
ああ、たのしい。
何の不安もなく、ヒースちゃんとこんな風に話せるなんて。
本当に聖女ちゃんには感謝してもしきれない。
だから――
「ねぇ、ヒースちゃん。頑張って聖女ちゃんをお嫁さんにして連れて来てね?」
「えっ、あ、はい! もちろんそのつもりです!」
うふふふふ!
私の手の届く距離に来てもらって、一生かけて恩返ししないと。ね?
「ソフィアちゃんがうちの子になったら、アイリス様ももっと遊びに来てくれるわよね♪」