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止まった時の中で


 動きを阻害した筈のバル爺ちゃんが繰り出す、鬼怖い攻撃。


 当たったら嫌だから、魔法をポン♪


 その瞬間。目前に迫った剣も、聞こえていた家族の声援も、風も、雲も、なにもかもが。


 動画のポーズボタンを押したように、ピタリと止まっていた。



 はい、そうです。時間停止魔法でーす。


 いやー怖かったねー。危なかったねーピンチだったねー。


 まさかフェルの転ばせ魔法に耐えるとはねー。


 備えあれば憂いなしとはまさにこの事。

 ソフィアちゃんったら慧眼(けいがん)なんだから♪ いやーん天才すぎて困っちゃーう。


 さ、アホな事言ってないで仕事しよ。


 この魔法もぶっ壊れというか、自主的禁呪指定するくらいには危なっかしいというか、色々と未知数なんだよね。


 時間が止まってんのになんで私だけ動けるんだーとか、光も止まったんなら見えてるのはおかしいだろーだとか、今こうしてる瞬間にも私だけ老けてるんじゃなかろうかーとか。


 そーいうのぶっ飛ばした系の魔法です。


 まあアレね。サブカルチャー様々っていうか。

 時間停止の能力とか割りとありきたりよね。


 そのくせ数秒しか使えないなんてことも無く、少なくとも一日位は持つ。持つけど体内時計のリセット関係で体調崩した前科があるから長いこと止める気は無い。常時太陽出てるのって思ったより辛かった。


 で、この状態も一応想定はしてたから、やることは決まっているのです。


 これからこの手に持った木剣で、バル爺ちゃんの足を叩きます。


 ヤクザ映画で抗争に負けた親分が「ワシ一人になってもぉ、オメェ等地獄まで連れてくけんのぉ!」と呪いを吐く場面みたいな必死の形相になってるバル爺ちゃんの足を。


 体勢が崩れかけてる絶妙な面白ポーズなのに、顔だけが真面目かつ必死で今にも叫び出しそうな臨場感抜群でめっちゃ迫力ある感じで止まっているバル爺ちゃんの、足を。木剣でペシッと。ぶふっ、ダメだウケる。


 ちょっとこのポーズ真似してみよ。

 あっダメこれ、腹筋と太股にかかる負担がっ、この状態で剣をこう持って「おどれら刺し違えたらぁッ!!」あぁーっダメ! 顔が、もっと真面目な顔しないとなのに、笑っちゃう! バル爺ちゃんすごいよ、尊敬する! 私にゃ無理だ!!


「あはははははっ! あはっ、ひー! ひー! その顔でっ、そのポーズは無い! ズルいってバルお爺ちゃん〜!!」


 みんなが動きを止めてる空間で一人。

 しばらくの間、地面をのたうちまわり悶えておりました。


「いやあ、はぁーっ、あー笑った。あー、楽しかった。」


 えっと、それでなんだっけ? 笑ったら忘れちゃった。


 あ、そーだ。

 勝利条件の一撃入れて、元の体勢に戻らないとね。


 バル爺ちゃんと違って私の体勢は無理のない姿勢にしてあったから、普通に剣を構えて、そんでバル爺ちゃんに向き合い……向かい合っ……あかん、バル爺ちゃんの顔が見れない。面白すぎて。思い出し笑いゲージが一瞬で吹っ切れた。このままじゃ攻撃受けた後立ち上がれなくなりそうだ。笑いすぎてやられちゃう。


 ちょっとふざけ過ぎたか。いやでもこのポーズはないでしょ!


 なんと言えばいいのか、そう、無理を承知で例えるなら、内股で腰を引き手のひらをあごの下に付けたぶりっ子が「いやーん」とか言いそうなポーズ。それが右半身で。

 左半身は、これまた内股の女の子が少し腰を落として仰け反りながら胸を強調するようなポーズで、あごの下に「にゃん♪」と丸めた手を添えた感じ。って我ながら酷い! 説明が酷い! でも本当にそんな感じなの!


 たぶん微妙に引いた腰とあごの下の手がちょうど剣から力抜いてる辺りに絶妙な女の子らしさが出てるんだと思う! バル爺ちゃんの乙女らしさすごいよ! もし孫のミュラーがこのポーズしたって乙女らしさじゃ……ぶふっ、ダメだ。脳内ミュラーが予想以上にかわいかった。もう時間戻すの後にしよう。これ私が死ぬ。


 水を飲んで、一休みして、それでも落ち着かなかったらお昼寝でもして。


 確実に精神が落ち着いてから、時間を戻そう。


 ふぅーーー、と深呼吸をして、瞑想に入った。



 そんな感じで休憩してから時間戻して、またすっ飛ばされたりしたけど無事に勝負には勝ちましたとさ。


 やったね!


禁呪は諸刃の剣。

その禁を破る時、使用者は大いなる災いをその身に受けることになるだろう……。


さあ、腹筋の痛みに悶えるがいい!

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