剣聖に勝ったよ!
いやー、勝った勝った!
それにしてもビックリしたね。
まさかとは思ったけど、あの状況から立て直してくるなんてね。
それでもさすがに奥の手までには対応できなかったみたいだ。バル爺ちゃんのワープ移動は純粋に速いだけの移動手段だったのかな。
うむ。それにしても見事に嵌った。
いや嵌った快感はあるけどあれは誰でもハマるというか、あれに対処してきたら人外確定というか、むしろ剣の試練としてちょっとやりすぎだったかもなんて……いや、勝ちは勝ちだ! うん! 私は勝ったんだ! 勝てばよかろうなのだ!!
で、どんな作戦を立てて勝てたかって話なんだけどね。
どうせ身体強化フルにしたくらいじゃ敵わないと思ってたからさ。普通に戦うのは諦めたわけ。
「こっちから行くよー」って待ちの姿勢にさせて、念の為攻めてこれないように魔法で石ころも飛ばして、その隙に崩れやす〜い中身スカスカの石っぽいモノを作って、バットでドーン!
あたかも「石が砕けて残骸に!」って雰囲気出したけど、残骸欲しけりゃ初めから残骸の状態で出せるしね。本当の目的は別にある。
まあ実際タイミング合わせて残骸も出したわけだけど、とにかくこの時点で時間稼ぎは終了。
バル爺ちゃん、「ぬっ」とか言って不快感を露わにしてたけど、そんなものは知らん。だって剣以外のものを使っちゃダメなんて聞いてないもんね!
いざ迂闊なバル爺ちゃんの元へ! と突進する体の横に石の欠片満載の空気を同行させて、近づいてからえいっと頭上から攻めさせる。はい視線誘導完了。
素直で助かるよねホント。髭面が可愛く見えてきちゃう。
まあ「石の欠片であわよくば目潰し攻撃」は残念ながら、また剣から出した衝撃波なんてファンタジー溢れる迎撃に潰されちゃったけど、ファンタジーはお互い様。
返す刀で振り下ろされる剣が全力っぽくてちょびっと怖いけど、当たらないと分かっていれば我慢は出来る。
ベストなタイミングを見計らい、今だよやっちゃって! とフェルに念話で指示を出せば、罠が発動!
そう、全てはフェルの『なんでも転ばしちゃう(多分)魔法』を成功させる為の仕込みだったのだ!
おしゃべりで時間を稼ぎフェルの協力を取り付け、石を使って視線を誘導し万が一にもフェルに気づかれないようにした。
そして今! ここぞの場面で放たれるフェルの不可避転ばせ攻撃いぃぃ!! ああん素敵! 私の部屋の窓から頭だけ出してる姿もとってもプリチー!
「くっ!」
とか余裕こいてたからバチが当たったのかね。
バル爺ちゃん、片足だけだけどなんと踏みとどまってさ。
もう剣に纏った衝撃波とかちょーデカいの。
ガチもガチ。腕の力だけで無理やり軌道変えて「ただでは死なぬぅ!」とばかりに思いっきり振り下ろそうとしてくんの。その先、首ぞ。普通当たったら死ぬから。
で、まあ流石に怖いからさ。
「っと」
ほいっと準備していた魔法を発動。
その瞬間、世界が動きを止めた。
ズルいって? うん知ってるー。
でも権力者が断れない案件持ってくるのもズルいからお相子だよね!
剣術にこだわりのないソフィアにとって、木剣なんて細いバットみたいなもの。