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中世ファンタジーなら仕方ない


 研究者、ヘレナ……うんたらさん。そういえば家名知らないな。


 とにかく、教師より知識にかけては上位職と思われる研究者のヘレナさんでさえ、引力や宇宙の存在を知らなかった。


 これはもうアイテムボックスの解明どころではない由々しき事態ですよ! とそりゃもう驚いたけど、冷静になってよくよく考えてみれば、そもそもここって異世界なんだし知らないのも当然かなと思えてきた。むしろ地球の常識が当てはまるのか不安。


 でも太陽も月もあるし、動物や果物とかも地球とあんまり変わらないから物理法則とかも同じじゃないかと思う。まんま魔法が存在するIF(もしもの)地球。


 それも、昔の地球だ。



 そうよね、ファンタジーだから西洋風が当たり前だと思ってたのか、これまで自然と受け入れてたけど。

 地球でわざわざ電気が通ってない古都に住んでるのとは訳が違うんだもんね。


 ここは王都。それも世界に唯一存在する国家の、王都だ。


 それはつまり、この王都こそが世界の最先端の集約した地であるということ。

 最新の技術が溢れ、最高の知識とあらゆる人材が集まっている場所。


 そんな王都でさえ、未だに電話一本無いのだ。

 輸送手段は馬車が主だから、海から距離のある王都ではお魚だって食べられない。識字率が低いから本の種類も少ない。街を警備する人の武装は剣とか槍だし、空を覆い隠す程の高い建物だって存在しなければ夜闇を払う街灯だって人力で灯して回ってる。


 ……改めて考えるとファンタジー要素少ないね! せめて飛竜騎士くらい欲しいね!


 そういえばエルフとかドワーフとか、ファンタジーの定番種族もいるみたいなんだけど会ったことないんだよね。


 別に王都から排斥してるとかじゃなくて、あまり出身地から離れないというか、風習の違いとかで同種族が少ない他の町には滅多に出てくることがないんだとか。


 もっと交流しようよ! そして私と仲良くなろう! と思わなくもないけど、私自身王都に引き篭ってる現状なので気持ちは分かる。


 遠出って正規の手段だと時間めっちゃかかる割に旨味がないんだよね。


 移動手段がほら、基本馬車だから。

 輸送手段だって同じだから、せめて一月くらいは移動しないと街並みも食べ物も変わり映えしない。近場じゃ旅行感ゼロ。なのに乗り物も快適とは言い難いとくればね。そりゃみんな自分の生まれ育った土地に引き篭もりもするさ。


 やっぱ旅行するなら海のある北の街一択だよね。


 唯一無二の魅力! 海の幸! 美味しいご馳走でおいでませ桃源郷!

 旅と言えばグルメよね。


 なんかね、北の街って観光に力入れてるらしくて、他の街とは雰囲気が全然違うんだって。


 行ったら帰って来れない魅惑の街として貴族の間で(おそ)れられているって聞いた時はマジかよって思ったけど、理由を聞くと納得できちゃうくらいにはその街独自の娯楽施設が充実してるんだって! いつか行ってみたいね!


「あの、ソフィアちゃん。ごめんね。私が無知で……」


 カニ料理あるかな……とか考えてたら、泣きそうなヘレナさんの声に現実に引き戻された。


 しまった、今はおやつタイム……じゃなくて、ヘレナさんが、えっと、そう! 科学知識!


「ごめんなさい。私もその、そう! 所詮は子供の戯言(たわごと)ですし、そう卑下しなくても」


「いいえ。ソフィアちゃんの説明は無理のない、納得のいくものだった。子供の発言という理由だけで否定するのなら、私はもう研究者を名乗れないわ」


 あああそんなあ。


 どうしよう、娘を見るような目で愛でてくれてたヘレナさんが、なんか明らかに尊敬の篭った眼差しで私を見つめてくるんですけど! これ以上私に変な属性つけないで! 先生を子分にしたとか思われたらどうしてくれるの!?


 ……ッ、いけない!


「美味しいお菓子を用意してくれる子分、いいかも」なんて考えてはいけない!


 私は普通の女学生を目指すんだから!


ソフィアさん、自分が変な子だって自覚あったんですね。

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