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忘れてないよ、思い出さなかっただけで


 その日の放課後。


 今朝お母様に言われた通りヘレナさんの研究室へ向かうも、ヘレナさんは不在だった。


 こんなことなら授業の時に前もって約束しとくんだったな。失敗した。


 自分の確認不足とはいえ予定が完全に狂っちゃったわけだけど、さてどうしようか。


 時間が余ってる暇人なのは確かだけど、わざわざ別棟まで来て完全な無駄足というのも……とはいえ、知らない場所をとりあえず探検するほど子供でもないしなぁ。この棟、中が見えない扉ばかりでつまらないし。


 なにか面白いものでもないかと見回していると、担任であるリチャード先生を見つけた。


 女生徒に人気のリチャード先生が一人でいるのは珍しい……こともないけど。

 それでも人気のない別棟で見つけちゃうと、やっぱりほら。夕暮れまではまだ時間があるけど、告白とかさ。誰もいない部屋で密会とかさ。色々想像しちゃうじゃん!? 思春期真っ盛りの乙女としては!


 これはもう尾行するしかないんじゃないかな。


 いや分かってる。そんな面白いことがそうそう転がってるわけがないって。


 それでも、夢見ることを諦められない。


 だって私、女の子だもんっ♪


 女子に人気な教師のスキャンダル、とっても興味ありますから!


 下世話じゃないよ? だって偶然目に入っちゃうだけだから。偶然同じ方向に歩いてたら、偶然ね。いやホント、偶然ってコワイワー。


 ドキドキワクワクで尾行を開始すれば、しばらくもしない内に、先生が消えた曲がり角の先で誰かと話している声が聞こえてくるではないですか。しかも相手は女の人! これはもう、期待するしかないじゃないですか!


 まさか本当にこんな展開になるとは思わなかった。


 これも普段から清く正しく生きてる私への神様からのご褒美かな!


 ありがとう神様。これからもよろしくおねがいします。


 神様への感謝も済んだところで、さて先生のお相手は誰かしらん!? と曲がり角に張り付いてそっと覗き込もうとした、ところで! ちょうどこっちに来てた人とぶつかりそうになってしまった。慌てて避ける。


「あら、ソフィアちゃん。やっと来てくれたのね」


 なんと相手は顔見知り。というか本来の目的であるヘレナさんだった。


 なんださっきの声はヘレナさんか。って、あぁっ! リチャード先生が行っちゃう!


「あら? もしかしてリチャード先生に用事があったの?」


「いえ、そういうわけでもないんですけど……」


 うんむむ、割と謎に包まれたリチャード先生の謎に迫れるかも! と完全に尾行モードでわくわくだったけど、用があったのかと聞かれれば「用は無い」と答える他ない。苛烈なストーカーと思われても困る。


 でも先生、普段は全く隙がないしなぁ。このチャンスは……むむ。ううん。


 うん、やっぱりいいや。


 ヘレナさんとリチャード先生の間になにかあったかも!? なんてのも流石にね。そこまで夢見がちじゃない。


 なにかあったらヘレナさん、絶対顔に出るし。


 なら変に掘り下げてリチャード先生に興味があると思われるよりも、当初の目的通り、ヘレナさんと楽しい楽しいおしゃべりに興じた方がよっぽど有意義な時間の過ごし方と言えるだろう。


 そうとも、リチャード先生に着いていってもつまらない現実が待ってる可能性の方が高いけど、ヘレナさんは確実にお母様やお兄様の私が知らない話を知ってるんだから。


 そういえばお母様が【賢者】と呼ばれてることを知ったのもヘレナさんからだったな。


 ふふ、ダメだ。思い出したら顔がニヤけてきた。あの時のお母様の慌てっぷりったら。


 本当に可愛すぎて悶死するかと思ったもんね。お母様マジラブリー。


「ヘレナ先生。なにか私に用事があるとお母様から聞いて来たのですが」


 平静を装っても漏れ出そうな笑みに対大人用の仮面を重ねてようやく普通の表情に戻せた。


 我ながらお母様好きすぎだと思う。

 でもまたお母様の黒歴史を聞けると思うと……っとと、これ以上はいけない、せっかく被った仮面が剥がれてしまう。


 私は優等生であらねばならないのだ。

 学院にいる間はお兄様の妹として、常に完璧なソフィアちゃんでいる必要がある。無様なんて(さら)せない! ……二度と晒せない!


 なんにせよ今はヘレナさんの要件が先だ。お楽しみは取っておこう。


「なにかって……忘れちゃったの?」


 忘れちゃった……のかなあ。

 お母様もそんなこと言ってたけど、記憶力にはかなり自信があるんだよね。


 そんな私が覚えてないってことは、約束と認識していなかったか、そもそも話を聞いてなかったか、とかかな。妄想に忙しかったとか割とあるし。


 ん、そういえば昔、賢者の話が出た時、お母様がヘレナさんに遮音の魔法掛けたこともあったね。


 でもあの時に約束の話をしたとすると、お母様も知っていた理由が……つかなくもないか?


 というかどうでもいいね。


 素直にごめんなさいと謝って、もう一度聞けば済むことだ。


 幸いヘレナさんは怒ってないみたいで、謝ったら簡単に許してくれた。


「アイテムボックスだっけ? 小型で大容量の収納用魔道具を一緒に開発しようって約束したじゃない」


 あれか。


 あれは難易度が高すぎてお蔵入り。私が学院で基礎を学んで、できそうだと思ったらヘレナさんの研究室で一緒に、って話だと思ってた。


 そうか、あれか。


 あれかー……。


 無理じゃないかな。


主人公が乗り気じゃないけど、でもタイトルだからね!つくるよ!ここまでも異様に長かったから絶対つくるよ!


……たぶんね!

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