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これぞ魔王の大魔法!


「はい、みなさん注目。ネフィリムさんが戻ってきたので授業の続きをします。それではネフィリムさん、準備が整い次第お願いします」


「任せるが良い!」


 騒ぎまくる生徒達をお兄様に鎮めてもらったヘレナさんが、みんなの注意をネムちゃんに集めた。


 返事と同時にぶわさっとマントを翻すネムちゃん。

 つば広の、先が折れた見るからに怪しげな三角帽子を目深に被り直し、ゆっくりと歩き出す。


 歩みに合わせて躍っていたマントの裾がやがて収まれば、どこからともなく聞こえてくるのはクックッと嗤う楽しげな声。


 まあネムちゃんの声なんだけど、そんなノリノリの彼女は顔を伏したまま、静かに問いを発した。


「今宵の貴様らは運が良い……。何故か分かるか?」


「な、なぜだ! 教えてくれ!」


 芸人さん、合いの手も完璧だな。

 期待通りの反応が来たからかネムちゃんの口元がめっちゃ緩んでるじゃん。すごく嬉しかったんだね。


 当然、「まだ昼だけど?」なんて無粋を言う人物はここにはいない。


「今宵は満月……。この魔王ネフィリムの魔力が、最も高まる時であるからだッ!」


「おおおおーっ!」


 当然満月でもないけどね?


 それにしても芸人さん、ホントにノリがいいな。うちのクラスにも欲しい。


 さすがに芸人さん以外にネムちゃんのテンションに完全に着いていけてる猛者はいないみたいだけど、かなり独特のテンションだろうに戸惑ってる人すらいないのは驚きだ。みんな適応力高すぎね。


 そんな猛者的芸人さんの活躍により普段の五割増しでノリノリな魔王ネフィリム様の前に用意されていたのは、ごくふつーの火魔法用セット。


 先生に促されて進み出た、初っ端からフルスロットルなネムちゃんを見た上級生の方々の反応は当然、その格好や言動に対する戸惑い……ではなかった。


「期待してるぞー! がんばれ!」


「すごいの見せてね!」


「気合いバッチリだな! どデカいの頼むぜ!」


「緊張しないで気楽にねー!」



 完全に受け入れられていた。


 もうネムちゃんの魔王軍、ここで人員補充しちゃえばいいんじゃないかな。全員入ってくれそうだよ?


 クラスでも既に割と受け入れられてるネムちゃんの魔王様だけど、ここまでの反応はない。日常会話に魔王語を使っても通用する程度だ。それでも充分異常だけど。


 本人も相当嬉しいのか、もうニマニマしっぱなし。

 視線を向けた先から「がんばってー!」と応援されて、ンフーッ!と鼻息荒くニッコリニコニコするもんだから、面白がった先輩方に持ち上げられまくっていた。伸びに伸びた鼻っ柱が見えるようだ。


「はい、そろそろお願いしますね」


「うむ!」


 たっぷりの期待を受けて、ネムちゃんそりゃもうご満悦。

 声も嬉しげで見ててなんとも微笑ましいったら。


「我が初級魔法は初級に非ず! 皆の者! しかとその目に刻むが良い!」


 的に向き直ったネムちゃんが振りまくのは、魔王の覇気などとは程遠い、褒められて喜ぶワンちゃんみたいな雰囲気だった。


 それに釣られて観覧者側も我が子の演劇を見守る保護者席みたいな、ってそれはさすがに私の妄想入ってそうだけど。だってはりきるネムちゃんかわいいんだもん。


 とにかくそんなほっこりした空気の中、威厳を出そうとしてるのにどうしても女の子らしい、ネムちゃんのかわいい声が響く。


「――。《火よ来たれ!》」


 紡がれたのは何の変哲もない火の初級魔法の詠唱。

 だと言うのに、引き起こされた現象は目を疑うものだった。


「「「おおおおっ!?」」」


 ――それは、身の丈ほどもある業火の壁。


 魔王の名に恥じない、とにかくド派手な大魔法だった。


魔王シスターズの伝説はここから(※始まりません)

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