お披露目!ソフィアちゃん
「……本当にやらなきゃダメですか? 私の実力、見せても大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。風の魔法だけでいいから、試験と同じように使ってみて」
往生際悪く、ヘレナさんにこそこそっと直談判してみたけど決定が覆ることはなかった。うわーん!
「本当に大丈夫ですか!? 私、お兄様を超える気ないんですけど、本当に大丈夫なんですよね!? 嘘だったら今後の研究には一切協力しないくらい恨みますよ!」
「それは困るけど……そんなに心配しなくても、ロランド君なら大丈夫じゃないかしら? 彼、紳士的で素敵だって女の子たちにも評判みたいだし」
そういう問題じゃないんですよう!
女の子に評判って話も気になるけど、これは私とお兄様の今後の関係にも関わってくる非常にデリケートな問題なんですよう!
「ほら、みんなも待っているから行ってらっしゃい。頑張ってね」
うううううう!
大人はいつだって分かってくれない!
大人から見たら些細なことだって、子供は本気で悩んでるのに! お兄様と結婚するために法の抜け道がないか本気で探してたりとかするのに!
いいもんいいもん、ヘレナ先生はそんなだから結婚できないんだもんねーっだ。
もっと人の言葉に耳を傾ける優しい女性にならないと、一生独身になっちゃうんだからねっ!
声には出さずに不満をグチグチ、気が進まないながらも足は自然とみんなの前へ。
空気を読む、という特別なスキルを所有する代償として周囲の同調圧力に極端に弱くなるのが日本人の悲しい性だ。転生しても相変わらず日本人気質な私に、お膳立てされたこの空気に逆らうことなどできはしないのだ。よよよ。
既に火の着いたロウソクが用意されている。
あとは私が所定の位置について、みんなの前で恥ずかしい呪文の詠唱をするだけだ。
でもなあ。それが嫌なんだよなあ。
一縷の望みを込めて先生を上目遣いで見てみる。
ニコリと微笑まれた。つまり、何も起こらなかった。
今度は反対にいる上級生たちを見てみる。
普段からこんなに意欲的な訳ないよね、ってくらい前のめりでどちゃクソ興味ありそう。
男子も女子も囁きあって、私が魔法を使うのを今や遅しと待ち構えてる。
やる気のない人なんて一人もいない。みんながみんな目を輝かせて、私の一挙手一投足に注目していた。
いやこれありえないレベルじゃない? なんで私こんなに興味持たれてるの?
明らかに異常だったからささやき声の一部を拾ってみた。ソフィアイヤーは地獄耳〜。
「マジかわいい」
「ロランド君ずるい」
「上級生に混じってとか前例あるのか?」
「俺、妹に聞いた。入学試験ですごいの見たって」
「あのロランドの妹だろ? 楽しみだよな」
お兄様のせいなら仕方ない!!
皆様の期待に応えるべく、ロランドお兄様の妹であるこのソフィアが! 頑張らせてもらっちゃいますよ!
ああ、確か入学試験の時もこんな感じだった気がする!
今ならきっとできる。羞恥心なんて吹き飛ばす、最高の風魔法が!
「いきます!」
見ていてください、お兄様!
貴方のソフィアは何処に出しても恥ずかしくない、自慢の妹であると証明してご覧に入れますから!
お兄様効果で大注目のソフィアちゃん。
彼女は浮かれるあまり、自分に色目を使った男子がお兄様に威嚇されるという素敵シチュエーションを見逃してしまうのでした。
次回、「バレちゃった!?お兄様との禁断の関係……(はぁと)」
お楽しみに!(※嘘予告です)