おにいちゃんっ子
メリーの戦士化にNG出した代わりに、魔法使い化は認めてあげた。
というか私がして送り出すことになるだろうけど。
メリーを魔法少女のマスコットにしちゃおう計画。
考えれば考えるほど名案な気がしてきた。
楽しみだね!
楽しい時は過ぎ行くのも早い。
私とネムちゃんは、魔法の先生に指定された部屋の前に到着した。
体感時間ではすぐ着いた感じがするけど、実際の距離を考えればむしろ遅い方だ。私の脳内時計は正確なので間違いない。
ネムちゃんと一緒にいるのは時間を忘れるほど楽しかったってことだね。
今ならネムちゃんと魂を分け合った半身になってもいいかもしれないとすら思えるくらい楽しかった。
だって考えてもみてよ。
こんな妹、かわいすぎるでしょ。
そんなことになったら、お姉様と一緒にネムちゃんをかわいがる未来だってありうる。
魔法が優秀だからお母様も喜ぶし、お父様には娘が増える。
お兄様だってネムちゃんの素直さの前では甘やかさずにいられなくなるはずだ。
そう考えるとなんだかとっても素敵な案に思えてきた。
私が捻くれ者な分、家族のみんなを癒してくれそうというか。その前にネムちゃんの純真な笑顔で私が浄化されちゃうかな?
心がキレイなソフィアちゃん。
うん、そんなの私じゃないね。
ネムちゃんと姉妹の契りを交わすのは素敵な案だけど、深く考えないでした発言だろうから今更蒸し返すつもりはない。
こんな妄想は単なる緊張をほぐすためのルーティンにすぎない。
おっさんが立ち上がる時に「よっこらせ」と言うアレみたいなものだ。癖とも言う。
つまり私は緊張しているってことだね。
目的の部屋の中から大勢の人の気配と先生の声がするんだもの、少しは緊張もするさ。無人の廊下はむしろ楽しかったけどね。
ていうかこれ授業中じゃない? 私たち、遅刻してきたみたいにならない?
「入らないの?」
「入るよ」
扉の前でうじうじしてたらネムちゃんに急かされてしまった。
だいじょーぉぶ! 私たちは先生の指示に従っただけだからね!
それに緊張で足が止まったというよりも、昨日の事件でクラス中に恥を振りまいたけどまだ私、羞恥心残ってるよね? いつも通りだよね? という念の為の確認作業みたいなものだったし!
人前とか別に苦手じゃないからね。
美少女転生したらみんなも分かる。自分に自信があれば人前に出るのなんて楽勝だって。いや以前の私がブスだったわけではないけども。
「失礼します」
まあいい。美少女な自分を意識して意識の切り替えもできた。
クラスメイトの前では慣れたけど、知らない人の前でネムちゃんと話すような顔は見せられないからね。
余所行き仮面装着!
今から私は楚々としたソフィアお嬢様。うふふって笑う。心の中? いま蓋をしているので何の事か分かりませんわ〜うふふ。
礼儀正しく入室すれば、予想外の人物が待っていた。
「ああ、来たわね」
――その人物は、人の中に埋没しない。
整った顔は凛然として、前だけを見据えていた。
銀の髪は光を反射して煌めき。普段の優しい眼差しはなりを潜め、強い意志を感じさせる瞳は何を映すのか。
見た者を魅了する、才色兼備のお兄様がここにはいた。
いたのだ!
「お兄様!」
こんなところで会えるとは、まさに運命!
ああ神よ! 私はこの出会いに感謝します!
あ、あとヘレナ先生もいた。
説明しようっ!
ソフィアの鋭敏な知覚は、視界内に入ったお兄様を光の速さで認識できるのだッ!!




