表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/1407

剣姫の実力


「はじめっ!」


「はぁっ!」


 あ、良かった。やっぱり「勝て!」って掛け声は普通じゃなかったんだね。


 合図を託されたカイルが試合開始の掛け声をかけると、ミュラーは速攻を仕掛けた。

 あまりに速すぎて動き出しが見えなかった程だ。


 それにしても、すごいな。

 ミュラーの足元の地面が吹き飛んだよ?


 ドゥッ! と音を立てて地面が抉れ、吹き飛んだ土が地面に着く前にカンカンカンッ! と練習用の木剣同士がぶつかり合う音が激しく響く。


「ぬうん!」


 一瞬で先生に近づき連撃を叩き込んでいたミュラー。

 その猛攻を嫌ったのか、大きく太い腕ごと武器のように薙いだ先生の一撃をミュラーは()()()()()()()()()()()(かわ)した。


 いや跳びすぎでしょ。


 私の脳内で赤い帽子の配管工がトゲ亀のバケモノの頭上を飛び越える絵が浮かんだ。コミカルな効果音と共に。


 私が現実逃避している間にも二人の手合わせは続く。


 ミュラーが連撃を放ち、先生が受け。

 先生が大きく薙ぐと、ミュラーが避け。


 お互い有効打がないように見えるけど、違う。


 視力を強化しないと分からなかったけど、ミュラーの連撃は先生の剣に受けられてるんじゃない。当ててるんだ。


 動かそうとした剣を叩いて行動を阻害し、腕を叩いて妨害し、もう一発剣を叩いて元の位置に戻す。その繰り返し。


 それだけのことを一瞬でこなすものだから、傍目には先生が剣を構えて棒立ちしているようにしか見えない。


 先生が大振りの攻撃しかしないのは、それしかできないように誘導されているから。

 当然、誘導された攻撃なんて当たるはずもない。


 大振りの攻撃を躱してまた距離ができた。仕切り直しか。


「ぐ、やるな!」


「先生こそ。まだ本気ではないでしょう?」


 二人とも楽しそうで、声には余裕がある。信じられない。


 先生、腕滅多打ちじゃん。ミュラーだって派手な回避に常人離れした速度の剣戟とか運動量すごいでしょ。それが息ひとつ切らせてないって。


「では本気で行かせてもらおう!」


「望むところ!」


 おおお! 何が始まるかと思ったら、構えた先生の剣から魔力が吹き出た! すごい! ゲームの必殺技みたい!


「俺は! 剣が!」


 先生が叫ぶ度に剣が纏う魔力が大きくなる。

 見た目が派手で気分が盛り上がるじゃん、いいね! いいよ!


 でも冷静に考えたらあんなに派手に魔力撒き散らしてたら放出した先から空気に溶けちゃってロスが大きそう。どうせやるなら外側をもっと濃くしないと。もったいない。


 もし私だったら、……いや。あの拡散した魔力の濃い空間が必殺技には必要なのかもしれない。

 今は見ることに集中しよう。


「《好きだ》ああぁぁぁァァアアアッッ!!!」


 ……まさかとは思うけど、今の魔法の呪文? こんな酷いの初めて聞いた。


 でも威力はすごい。

 地面に叩きつけられた剣が、剣の纏った魔力が、地面を割りながらミュラーに迫る。


 あれ、これヤバくない?


 当たったらケガで済むの? むしろ死なない? 熱くなって手加減忘れてませんか先生!?


 念のためにこそっと魔力を地下から伸ばしつつミュラーを見れば、なんと不敵に笑ってらっしゃる。

 大丈夫そうな雰囲気。


 眼前にまで迫った魔力の奔流を前にミュラーは剣を低く構えると。


「《私は勝ぁつ!》」


 真正面から弾き返した。


「ぐっはあぁぁぁあああああ!!」


 そして先生が吹き飛んだ。



 ……いやすごいよ。すごいんだけどさ。


 剣術を極めるには変な言葉叫ばないといけない決まりでもあるの?

 私、剣は程々でいいや。


剣の頂へ至る道は険しいのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ