剣術はすごいんだぞう!!
剣術教師バルクス。
入学試験の時に見た先生が特別クラスの剣術をみてくれるらしい。
彼が現れた時の男子のざわめきから察するに有名人みたいけど、私からすればただのガチ体育会系ぽい声の大きいおじ……おにいさんである。
とりあえずと練習用に一人一本ずつ渡された剣を構えさせられて、それを眺めた先生が数名の名前を呼ぶ。
呼ばれて前に出た中で目を引くのは唯一の女子。
ミュラーだ。
「ようし注目だ! 今みんなの前にいる生徒達はみんなよりも強い! 彼らを目標に強くなれ!」
うん、分かる。
立ち姿からしてなんかビシッとしてるもんね。
ただそこにカイルもお行儀良く並んでるのは違和感ある。
カイルってもっとこう、なんだ。
へらへら笑ってたり呆れ顔してたりのイメージが強くて、今みたいに真面目な顔して立ってるとイケメンみたいじゃないか。いや黙ってればイケメンではあるけど。
女の子へのアピールかな?
「今日は最初に試合を見てもらう! 剣術はこんなに凄いんだ! ということを! 是非みんなにも知って欲しいからだ!!」
どうでもいいけど先生の声が大きい。
ずっとあの調子で喋ってて喉痛くならないのかな。
「ミュラー・セリティス! お相手願おう!」
「喜んでお受けいたしますわ。先生とは一度手合わせしたいと思っていましたの」
あれ、それだけいる中から女の子選ぶの? せんせー鬼畜だったりする?
でもその組み合わせに疑問があるのは私だけのようで、実にスムーズに試合の場が整えられた。
とはいっても二人がちょっと離れただけなんだけど。
「手加減は」
「無用!」
「承知いたしました」
……え?
なにその会話、おかしくない?
もしかして、ミュラーって先生より強いの? 嘘でしょ、それだけの体格差あるのに?
ミュラーだって背丈はある方だけど、それは同世代の女子と比べて背の高い方だというだけだ。
構えてる得物だって同じもののはずなのに、ミュラーは長剣を、先生は長めの短剣でも握ってるように見える。先生でかすぎ。
先生とミュラーが対峙してると正に大人と子供にしか見えないというか、実際そうなんだけど、それなのにミュラーの方が強いの? ホントに?
まあいいか。どうせすぐわかるだろうし。
そういえばミュラーって前に剣姫とか名乗ってたっけ?
王子もいる教室で自分のこと姫呼びするなんてメンタル強いなと思ってたけど、あれも称号的な本物の二つ名だったのかな。お母様の【賢者】的な。
ううん、あの日は色々とあったし自称魔王のネムちゃんのせいかミュラーの印象薄いんだよね。
ぶっちゃけ公爵家のツンデレっ娘くらいのイメージしかないし。
だからこの試合は楽しく観戦させてもらおう。
ミュラーの新しい一面を見られるいい機会だからね。
「はじめっ!」
みんなの視線を集めて、先生とミュラーの試合が始まった。
剣の素振りってストレス発散にいいらしいですよ。
試合ならなおさらじゃないですかね。いや別に誰の話ってわけでもないんですけどね。




