精神魔法の対策
自慢だが、私の身体強化の魔法は大したものだと思う。
とは言っても、身体強化から始めて色んな魔法を継ぎ足したから「身体強化の魔法」と呼んでるだけで、実際この魔法の大部分は身体強化と関係ない。
中でも体感気温を快適に保つのは一番のお気に入りで、過剰な運動性能が必要ない時でも身体強化の魔法を解かないのはこのためだと言っても過言ではない。
もちろんそれだけじゃなくて、他にも便利なのが沢山ある。
例えば、急に背後から刺されるようなことがあっても自動で防ぐようになってたりもする。
これさえ常時発動しとけば不意打ちでも安心安全!
まあ幸いにして今世ではまだ危ない目にあったことは無いから今のとこ発動したことはないんだけど。念の為ね。
あと、実はね。身体強化の魔法中ってお肌も荒れないんですよ。
女性に超オススメしたい。みんなも使えるようになったらウルトラハッピーな魔法だと思う。
これも刃物を防ぐついでで思いついたんだけど、肌を魔力で覆うわけじゃん?
そんな大掛かりなことしといて緊急時以外には無意味ってなんかもったいない感じするよね。いくら魔力使い放題でもさ。
だから紫外線とか花粉とか汚れとか埃とか、ついでに角質とか汗とかとかとかとか、つるぴかーんな状態に保ってくれたらいいなーって思うじゃない?
叶うんです、魔法なら。
魔法使えて一番嬉しかったのこの時かもしれない。
美容魔法に熱くなりすぎた。
とにかく、まあそんなこんなで万能な身体強化なんだけど、今回は精神異常系の魔法食らっちゃったわけじゃん?
油断は禁物なのだと思い知らされたわけですよ。
あの自称魔王のネフィリムちゃん、アホっぽい言動とは裏腹に魔法すごいよね。
黙ってればかわいいのに、いや喋っててもアホかわいいけど。
そうじゃなくて、私の防御を貫く魔法があるってことですよ。
正直舐めてた。
妄想力鍛えて自己暗示で「魔法が使える!」って思い込むだけでどんな魔法も使い放題なのに、なんでみんな使えないんだろって初めの頃は思ってたはずなのに、いつしか私以外は大した魔法を使えないって決めつけてた。
すごい魔法を使える人がいる。
なら、私もそれを前提とした備えが必要なんじゃないかと思った次第でして。
何よりあんなに恥をポイポイ量産するような魔法にかかるなんて二度とゴメンだし。
だから作る。
精神魔法に対抗できる魔法を今すぐ作る!
◇
無理だ。
なにこれ、全然わかんない。魔王様すごすぎない?
精神魔法を防ぐには、まず精神魔法を知る必要がある。
私にも使える精神魔法というと、クラスメイトを強制的に驚かせた「わっ!」のアレも精神魔法のはずなんだよね。
そのはずなんだけど、アレだと魔法を掛けられた方も気付く。
それにもしアレを誰かが私に使ったとしても、魔法的な驚愕の効果は消せるはずなんだ。私が長年信頼を置く身体強化の魔法は伊達じゃない。そのくらいはできる。
……できる、はずなんだけどなあ。
念の為に幻惑の魔法も作って確認した。
身体強化魔法は、確かに幻惑の魔法を打ち消した。でもって、打ち消した感覚もした。
……精神魔法対策、できてるよね?
ネフィリムちゃんがどうやってこの防御を越えたのか全然わからぬ。あの子天才じゃない?
仕方がないから、自身に掛かっている全ての魔法を打ち消す魔法を作って代用することにした。
……なんか黒歴史っぽい記憶がいくつか発掘されたけどこれは後で再封印しとこう。
今はそれよりも、代替案でしか解決策が用意できなかったのがとても悔しい。
魔王いつか倒す。
状態異常魔法を回復魔法のつもりで掛ける発想は、天才的かもしれないね?




