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ネフィリム視点:真なる魔王


「我は魔王ネフィリム! いずれ魔界を統べる者!」


 鏡に映る自分の姿を色んなポーズを取りながら眺めて、ようやく満足のいく出来になった。うむ、今日はこれだな。


 ふふふ、今日も格好良く決まってるのだ。


 この「魔王名乗り」をしないと一日が始まった気がしない。

 毎日やってても全然飽きない。やっぱり魔王は最高に格好良い!


「我は魔王ネフィリム! いずれ魔界を統べる者!」


 いい! いいよ! すごくいい!


 ……でも最近ちょっとワンパターンかも。

 マントをバサァッてするの格好良いんだけど、こればっかなのもなー。


 ちょっと悩んだりもするけど、鏡に映る格好良い自分を見れば気分はたちまち晴れやかになる。


「ふふ、ふはははは! このポーズも中々良いではないか……?」


 うん、頭に手を置くのも格好良い!

 これは多分、お気に入りの角度から見たらきっと……はぁぁぁ! いい! いいよ! すごくいい!


 えへへ、楽しい。こうしてる時がネムは一番幸せだなぁ。


 そのままポーズの研究をしてたらお母さんがネムを呼ぶ声が聞こえてきた。


 そうだった! 今日から学院!


 せっかく魔法の勉強ができるのに遅刻なんてダメだ。はやく着替えなくっちゃ!


 あわあわと脱ぎ散らかした服を見てはっとした。


 ……もしかしたら、学院でも魔王の格好をすることになるかもしれない。


 なんかオージ様がいるとか言ってたし。

 オージ様は勇者に目覚める確率が高いって先生も言ってたし。

 勇者が出たら魔王としてちゃんとした格好で出迎えなくちゃだし。

 でも魔王の服はお母さんに禁止されたから……、えっと。


 悩んで悩んで、うーんと悩んで、裸が寒くなってきたから考えるのは後にして、とりあえず魔王の服は持っていくことにした。


 必要ならそのとき着替えればいいもんね。


 そしたら、「まさかお前が魔王だったなんて」「ふはは、愚かな勇者よ!」なんて展開になるかもしれないし!

 えへへ、学院楽しみだなー。




 つまんない。


 ずーっと座って大人の話聞くだけって言ってたけどぉ、まさか本当にずーっと座って大人の話聞くだけなんて思わなかった!


 ここにいるみーんな、ネムと同い年なんだよね?

 みんなちゃんと静かに座ってる。すごいなー、えらいなー。ネムには無理だよ。


 でもちゃんとできなかったらおやつ抜きにするってお母さんに言われてるから、ネムはがんばるのです。

 喋っていい時間は楽しかったからまた早くこないかな。


 でも大人って話が長い。

 暇だなー、なにかないかなーって教室を見回してたら、変な女の子を見つけた。


 魔力が全然ない。


 でもでも、それっておかしーはずなの。

 先生が言ってたもん。「魔力は全てのものに宿ってる」って。


 あの子、悪いことして女神様に魔力取り上げられちゃったのかな?


 あっ! もしかして!


 ネムは気づいちゃったのです。

 入学試験の日にネムの中に入ってきた変な魔力はあの子のだったんじゃないかって。


 そういえばあのあと気持ち悪くなってたのに、今はなんともない。でも、変な感じはする。体の中に自分以外の魔力があるみたいな?


 あーゆーときはいつもだったら先生に診てもらうんだけど忘れてた。先生魔法のことになると怖いんだもん!


 でも先生はすごいからいろんな魔法を知ってる。

 教えてもらったからネムも知ってる。

 その中には前までのネムだったら使えなかった魔法もある。


 どうせ使えないからって教えてくれなかったのをむりやり聞き出したのに使おうとしてもできなくて、使えない! って怒ったらほらみろって笑われたの。


 でも魔力が増えた今なら使える。

 あの魔法なら、魔力をあの女の子に返せるはず! って思って。


 だから、がんばって魔法使ったの。



 うぅぅお母さん、ネムはどうしたらいいの?


 魔力、返せないの。どうやっても返せないの。


 人の中に届くような魔法、もう知らないの。

 魅了も幻惑もちゃんとできてるはずなのに、ネムの中にある魔力はちょっとの時間でグングン回復してく。

 今までとは全然違う、いっぱいの魔力があるのがわかるの。


 あの女の子もネムが掛けた魔法のせいですごく具合が悪そう。


 さっきからずっと解呪しようとしてるのに全然効いてないみたいだし、ネムはもうどうしたらいいのかわからない!


 もう学院が終わっちゃう。

 どうしようと思いながら帰り支度してたら、思い出したの。


 ネムは今日魔王の服持ってきてたんだった。


 ……ふふふ。魔王には不可能などない。

 ネムが魔王にさえなれば、解呪の一つや二つ、一瞬で済むはずなのだ!


 そうと決まれば、えっとえっと、まずは着替える場所でしょ、それから先回りして――。



 ネムが真の魔王に出会ったのは、その少しあとのことでした。


「魔王の格好良いところ……そんなの多すぎて言えないのだ!」

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