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最強可愛い妹兵器


 ひとつだけ、いいかな?


 唯ちゃんって自己主張が弱すぎて相談する相手としては適格じゃないや。


「うーん、とりあえずはこんなものかな……。一旦休憩して整理しようか」


「はい」


 従順ないい子。それは間違いない。


 でも自分から意見を出すことがまるで悪いことのようにでも思っているのか、出た意見の九割は私が口にした感想と変わらなかった。


 ――意見を擦り合わせる為に来たのに、これじゃなーんの意味もないんですよねー。


 本当にそう思ったのか、はたまた私に合わせる為にそう言ったのかの判別が付かないと意見としての価値がない。少し前まではもう少し心を開いてくれるようになったかと思ってたんだけどなー。


 まあ一時稼いだ好感度がリセットされちゃう現象には心当たりがあるんだけどね。


 これって多分、リンゼちゃんから私のあることないこと吹き込まれてるんじゃないかと思うんだよね。


 私と唯ちゃんは確かにとっても仲良くなった。が、リンゼちゃんと比べてどちらの方が懐かれてるかと問われれば、それは間違いなくリンゼちゃんの方だろうと断言できるほどの差は未だに存在したままなのである。


 唯ちゃんの好感度ゲージは、恐らくリンゼちゃん>私>私の家族&神殿の面々≧その他くらいのものじゃないかと。


 悔しいけれど、唯ちゃんからの信頼度ナンバーワンの座を勝ち得ているのは、私ではなくリンゼちゃんなのだ。


 ふんだ、いいもんいいもん。私だって唯ちゃんとは徐々に仲良くなってるもん。お菓子で釣ればリンゼちゃんと同格くらいの親愛は示してもらえるからね、今はそれで満足するもん。


 幼い子供が同じ年頃の子供たちと出会って直ぐに仲良くなるのは当たり前のことだもんね。言わば姉枠の私は友愛とは違う家族愛枠。信頼の深さが異なる分、関係の構築には一定の時間が必要になるというただそれだけのことなのですよ。


 だから私は負けてない。リンゼちゃんと比べてお友達の価値が低いだとかそんなことない。


 人の価値は人が決める。

 つまりお兄様やお姉様に大事にされてる私はとても価値が高いということだ。やはり人間、顔面偏差値こそが正義なのだよ。愛らしさは私の人生を救うのだー! わはははは!!



 ――というようなことを考えている間に休憩の準備が整った。


 リンゼちゃんがいないとこーゆーとこ不便なのだけど、自分で用意する夜のお茶会というのは日中のそれとは違う楽しみがある。


 夜にお菓子を貪り食う背徳感とか、この場にいない誰にも知られずに開催する秘密のお茶会感とか……これはこれで良いものである。


「はい、どーぞ。リンゼちゃんの淹れてくれたお茶と比べると、味はちょぴっと落ちるけどね」


「そんなことは……。ありがとうございます」


 丁寧に感謝を示した唯ちゃんは、両手でカップを包み込むとゆっくり唇を近付けて……ピクっ、と途中でその動作を止めてしまった。


 どうしたのだろうと見ていると、少しだけカップから顔を離し「ふーっ、ふーっ」と愛らしく唇を突き出し吐息で紅茶を冷ましてから再びカップに口をつけた。ちびっと飲んで、表情が僅かばかり笑顔の形に緩むのを見た。


 その一覧の仕草が、あんまりに可愛すぎてな? 私もう憤死しそう。私の妹かわいすぎない??


 こんなの見たらお兄様やお姉様が私を猫可愛がりしてくれる理由も納得してしまうわ。こんなのはもうね、妹じゃない。兵器。これってもう兄姉を骨抜きにする兵器ですよ。眺めてるだけで理性がグズグズに溶け出していっちゃう。この笑顔の為ならなんでもしてあげたいという欲望が思考の全てを侵略してくよ〜。


「どう? 美味しい?」


「はい、おいしいです」


 そかそか。たんとお飲み、たんとお食べ。そして私に極上の笑顔を見せておくれ。


 もそもそとお菓子を食べる今の姿も十二分に可愛いのだけど、やっぱり前にコンビニのお菓子とかあげた時の方が屈託のない笑顔を浮かべてた気はするんだよなぁ。飲み物も砂糖入りの紅茶じゃなくてパックに入ったコーヒー牛乳とかの方が好みなんだろうなと分かってはいるのだけど、その為だけにまたあちらの世界に行くのはどうなのかなって思う。


 倫理観とか魔力がどうこうとかの話じゃなくて、単にそれやり始めちゃったら永遠に止め時がなくなるよねってだけの話なんだけどね?


 向こうの世界の物を持ち込むんだったら、お菓子も欲しいけど服とか化粧品とかもいくらでも欲しいし。電化製品やゲームや漫画やお肉にフルーツ……。一度考え出したら止まらないレベルで何でも持ち込みたくなるに決まってるよね。


 だから私なりに自重してるつもりではあるんだけど、こーゆー時に「唯ちゃんの為なら……」って考えちゃうと、折角の決意がグラついちゃうというかね。私欲でなく他人の為ならアリなんじゃね? と頭の中で誘惑する声が聞こえてくるというかね。ぶっちゃけ私もまたコーヒー牛乳飲みたいしね?


 それに私達が向こうの世界に行ってる間は、この世界に変な影響も現れないだろうからね。


 ……そう考えると、本当の本当に買い出し遠征、アリ寄りのアリかも?


 おおぉう、我ながらとてつもなく誘惑に弱くて困っちゃうよねぇ……。……うへへへ?


ちなみにソフィアは氷の結晶がトレードマークのコーヒー牛乳が好きみたいですよ。

高校在学中には購買にあるバナナオレを愛飲する程度には甘い飲み物がお好みだったようです。

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