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実験……成功?失敗??


 私達が世界の中心で、思った通りに世界が歪んでしまうのであれば、逆に魔物が消える前の世界に戻すことも出来るのではないか。そう考えるのはとても自然なことだと思う。


 というわけで、試してみました。


 念じるんだか願うんだか知らないけれど、唯ちゃんと二人で、うーん、うーん、と。



 ――元の世界よ、戻ってこーい。魔物は程々の数に減って戻ってこーい。



 まあ結果はもちろん、なーんにも起こりはしなかったんですがね。


「頑張って念じたのにこうも何も起こらないと、中々の徒労感があるよね」


「そうね。無意味に何十回も『魔物って知ってる?』と聞かれるのは思っていた以上に苦痛だったわ」


 それに関しては申し訳ない。

 私も聞きながら「このやり取り、何とか短縮できないもんかな」とは思ってたんだ。でも他に簡単な確かめ方がなかったんだから仕方ないよね。


 クールなリンゼちゃんが怒りのリンゼちゃんに変わらぬよう冷却時間が必要だと判断した私は、話の矛先を唯ちゃんへと変えた。


「唯ちゃんも頑張ってくれたのにごめんねー。疲れたでしょ?」


「うーん……。私は、そんなに……? 頑張るのはたぶん、好きなんだと思います」


「おおー」


 すっげぇいい子だ。唯ちゃんはやっぱりいい子の神だな。


 思えば魔法の制御訓練とかも教えたら一日中やってたもんね。きっと根が真面目なんだろう。


 いくら睡眠が不要とはいえ同じことばかりやってれば飽きるだろうに……いやほんと尊敬しちゃうわ。魔法の制御訓練って地味なんだよね、今度魔力塊で造形するコツでも教えてあげよっと。


「唯ちゃんは頑張り屋さんだもんねー。私も姉として鼻が高いよ」


「……えへへ」


 ッ、あーー!! かわいいーー!! 照れる唯ちゃんがギャンかわいいよー!!


 ちょっと褒めただけでその表情とかやばない? そんな無防備に笑顔を見せたらダメだって、危ないおじさんに目をつけられたらどうするのよ。って、この世界には誘拐犯はいないんだったね。


 ……ただ、偏執的なロリコンストーカーとかはいるから、気をつけるに越したことはないんだけどね。


 悪の存在が許されない異世界でも、愛の多様性だけは認められているらしい。

 感情の暴発で意識を失う喪心病の存在がなければレイプが唯一の犯罪として横行していたことは想像に難くないよね。


 ……ってそうだ、魔物がいなくなったなら喪心病ってどうなったんだっけ? お兄様に確認するの忘れてたな。


「リンゼちゃんリンゼちゃん、魔物がいなくなったこの世界だと喪心病ってどんな感じになってるの?」


「喪心病? どんなも何も……それが魔物とどんな関係があるの?」


 ああ、そうか。リンゼちゃんの知恵袋にも魔物関係の補完が必要なのね。


「えーっとね……」


 私は以前リンゼちゃんから聞いた、魔物の存在は人の悪意によって成り立っているという話をした。


 喪心病により人から抜け出て、僻地に集まった悪感情の澱みこそが魔物の存在そのものなのだと。その悪意を人の魔力で浄化して得られるものが魔石なのだと。


 そして最後には「これ全部リンゼちゃんに教えてもらったことだよ」と付け加えると、全てを聴き終わったリンゼちゃんはとても複雑そうな顔で眉根を寄せていた。


「どしたの。そんな顔して」


「……感情が集まって生き物の形になるなんて、漫画の読みすぎなんじゃない? と言おうと思っていたのに梯子を外されて困っているのよ」


「ああ〜……。まあそれ言っちゃうと、異世界や魔法の存在からして漫画じゃん。今更なんじゃないの?」


「それはそうなのだけど……」


 よく分かんないけど、リンゼちゃん的には人の悪感情から生まれる魔物という存在は認め難いものらしい。


 そんなこと言われたって私もリンゼちゃんからそう聞いただけだもんねー。真実かどうかなんて実際の所はどうだっていいし?


 学院では魔物を「人類への試練」とか定義してたけど、それよりかはリンゼちゃん説の方が説得力あるなと思っただけだし。なにより、自称その仕組み()()()人だもんね。元女神様が「自分で作った」って言うんだから、まあ「そうなんだなぁ」と思っただけだよ。


 女神としての記憶を持つリンゼちゃんが過去の自らの行いに対して違和感を持ってるのってなんだかとっても変な気分。


 とはいえ改めて考えてみれば、女神(ヨル)とリンゼちゃんって性格も考え方も大分違うし。もはや完全に別人格なんだよね。考え方に齟齬が生まれるのも当たり前か。


「まあ難しく考えなくてもいいんじゃない? 単にそーゆーものってだけの話でしょ。別に悪意が生き物の形にならないくらいでそんな――」


 ―――。


「……? ソフィア? どうかした?」


「……いや…………、今の、って……」


 とても、とても覚えのある感覚。


 コマ送りになった世界に、一瞬だけまるで別の画像が差し込まれたような。あるいは瞬きをしていないのに世界が勝手に瞬きしたみたいな……。


 思わず唯ちゃんの方を振り返れば、彼女も何やら周囲を忙しなく確認していた。その様子を見れば、何かしらの異常を感じていたのは明らかだった。


 ……はああぁああ!?? ねぇ待って、本気で待って、どうなってんの??


 今なんも願ってなくない?? 願い事の判定ガバガバに壊れてませんかねぇえ!!?


世界に怒るとかいう貴重すぎる体験。

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