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困った時の(元)神頼み


 とりあえず朝食を済ませてからお兄様と軽く会話を交わしてみたところによると、やはり魔物は初めからこの世界に存在していなかったことになってるらしい。ついでに神殿に住んでいる者の中で魔物に関する記憶が残っているのは私と唯ちゃんだけだという確認も取れた。


 お姉様から「ソフィアがまた訳の分からないことを言っているけど、可愛いから何も問題は無いわね!」的な視線を向けられたことはめちゃんこ寂しい出来事ではあったけれど、唯ちゃんのお陰で精神力が回復していた私はなんとかその難局を乗り切ることが出来た。もはや怖いものはあんまりないソフィアちゃんである。


 ……はい、嘘です。

 実は落ち着いてきた今だからこそ考えがあちこち及ぶようになって、その影響範囲の大きさにちょっぴり現実逃避してたりします。


 これが盛大なドッキリだったらいいのになぁ、なんて事ばかり考えずにはいられないんだ。魔物が消えるってどーゆーことなの。


 例えば、そう。魔物の討伐がメイン業務である我らが神殿騎士団とかね。魔物がいなくなったら何のお仕事をして生活してるの? って思うじゃん。考えれば考える程に思考が迷走して止まらないんだよね、謎だけがわんさか生まれてくんのよ。


 今の世界から魔物がいなくなったってことは、喪心病にかかってた人達はどうなったの? 原因がなくなった場合はそもそも倒れてた事実が無かったことにでもなったりするの? だとしたら倒れてた期間の記憶の整合性は??


 魔物から取れる魔石が無くなれば社会全体のエネルギー問題にだって大きな影響を及ぼすし、そもそも魔物が生まれる原因になった感情の昂りの方はどうなるんだろう? 悪意の受け入れ先だった魔物が生まれなくなったってことは、もう誰もが普通に怒ったり出来る社会に戻ったってこと? それともまさか、あんまり考えたくないことだけど……感情が閾値を越えた途端にいきなり、ボカン! と頭が破裂したりとか……? ……流石にそんなことにはならないよねェ!?


 本当にもう、謎が謎呼ぶといいますかね。今までちまちまと積み上げてきた常識の役立たず感が半端ないのよ。


 世界は今、いったいどんな状況になっているのか……。神殿の外に出て確認するのが恐すぎるよね〜。




 ――はい、というわけでね。


「この状況を打開するには、もうリンゼちゃんに頼る他に方法がないの。お願い、助けて!」


 と無理を言って今日もお越し頂きました。困り事専門の敏腕アドバイザー、リンゼちゃん先生様でございます! 皆さん拍手でお迎えしましょう、パチパチパチ〜!


 困った時には結局リンゼちゃんですよ。リンゼちゃんに勝る智者などこの世の何処にもおらんのですよ。


 午前中の業務に行こうとするリンゼちゃんを「後で絶対手伝うから! こっちが緊急!!」と引っ立てて無理矢理部屋まで連行した。我ながらかなり強引だったとは思うが反省はしていない。だって本当に緊急だもんね!


「今度はなに? 今日はいつにも増して様子がおかしいけれど、それに関係することかしら?」


「そのとーり! 今、私達の精神がピンチなんだよ!!」


 そう口にした途端、一瞬でリンゼちゃんの目が胡散臭いものを見る目に変わったけれど、私の側に唯ちゃんがいた所為か思ったよりも視線に込められた冷気は控えめだった。


 喩えるなら、いつものはひゃっこいソフトクリームで今のは中庭に設置された木椅子、みたいな。人に対する優しさみたいなものが感じられたね。これがリンゼちゃんのデレ……なのかな?


 ともあれ話を聞く気にはなってくれているみたいなので、これ幸いと昨夜からの異変――私が推察した世界の変化――について話をした。初めは妄想を聞くような顔をしていたリンゼちゃんも、唯ちゃんが私の話に同意する度に、だんだんと難しい顔になっていった。


「――という感じで。いやホント参ったよね〜。朝起きたらこれだもん、本気でびっくりしたというか、まるで世界の終わりが突然訪れたかのような――」


「感想は別にどうでもいいわ」


 あん冷たい。でも本気で考え込んでるっぽいから少しの間黙ってようかな。別に邪魔をするのが目的じゃあないしね。


 手持ち無沙汰になりながらも大人しく考えがまとまるのを待っていると、たっぷり五分程の長考を経てからようやくリンゼちゃんが口を開いた。待っている間、無防備なその身体に何度イタズラ仕掛けようと誘惑されたか……。私が耐えられたのは奇跡に等しい。


「話を聞いた限りだと、原因はやはりソフィアの願望にあると思うわ。全ては憶測の域を過ぎないから、本当なら断定するのは危ういのだけど……。まあ十中八九、原因はソフィアにあるでしょうね」


「憶測なのに、十中八九私のせいなの……?」


 なんそれ、それは明らかに理不尽の極みじゃないかと不満を表明してみたのだけど、私の訴えはものの見事に(しりぞ)けられた。


「ソフィア以外の誰にそんな大規模な魔法が使えるのよ」


「私にだって世界を巻き込んだ魔法なんて使えないよ?」


「使ってるじゃない。《時間停止》魔法」


「……ほんとだ!!?」


 え、あれえ!? そーゆーこと!?!


 どうしよ、まさか本当に私のせいなの!?? だとしたら、これこそ正に「ソフィアちゃんショーック!!」案件なんですけども!?


そもそも推測や憶測などで区分するまでもなく、リンゼの身の回りで起きる事件は高確率でソフィアが原因の出来事である。

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