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人肌最強!!


「そんなことが出来るんですか? すごいですね……」


「いやまだ私のせいだって決まったわけじゃないんだけどね?」


 昨夜のリンゼちゃんとの会話。あるいはそれが原因で引き起こされたのだろう「みんなが魔物のことを忘れるという異常現象」。


 これらを唯ちゃんに伝えたところ「そんなのもう本物の神様じゃないですか?」とばかり畏怖するような目で見られてしまったのだけど、私はそんなことを望んじゃいない。私が望むのはいつだって平穏無事な日常だけだ。


 ここにいるのがリンゼちゃんだったらこの不思議現象の説明をしてもらいたいところなのだけど、唯ちゃんは不本意に創造神の座に据えられただけの至極普通の子供に過ぎない。異世界の法則やら仕組みやら、そういった話はこの世界で生まれた女神(ヨル)やリンゼちゃんの方が詳しいだろう。


 まあ、そう思いつつもとりあえずは聞いてみちゃうんだけどね?


 さっきまでの「誰と口をきいても心がストレスを受ける可能性極大」の状況とは違って、唯ちゃんが相手なら心安らかな会話になることが確定している。警戒心を抱かずに会話が出来る、そんな当たり前のことをこれほど嬉しく思う日が来るとは思わなかった。


「ちなみに唯ちゃんにはこーゆー力って発現しなかったの? 口にした言葉がそのまま現実になっちゃうのって確かに神様っぽい力だよねー」


 しかもその強大なる能力は、私利私欲の為には使えない。


 美味しいお菓子を降らせることは何故か実現できずとも、魔物を消し去ることならば可能なのだ! この謎すぎる判定基準は誰が判断してるんですかねぇ!? とっても不思議ね!!


 どうせなら私とお兄様の婚姻も神の力で認めろください!! と半ばヤケクソになりながら祈ったところで、特に何かが起きるということもなかったのだった。ま、そーだろーねぇ。


「……私は」


 と、私が不思議能力の発動条件について思案している間に唯ちゃんの雰囲気が初めて会った時のような全てを諦めきったものへと変化していた。


 どーしたの!? と慌てるのと同時に、すぐさま自分の問い掛けを思い返して後悔した。やばい、過去を振り返らせる質問はタブーだったか!


「私には、自分が何を出来るのかがわかりません。何をしていいのかもわかりません。ただ気がついたらあの場所にいただけで……それ以外には、本当に……何も、むぎゅ」


「変なこと聞いてごめんよぉおお!!!」


 とりあえず唯ちゃんの頭を抱きかかえてかいぐりかいぐりと撫で回した。私の薄い胸で存分にお泣き! って誰の胸が洗濯板じゃオラァぁあん!?


 私の肉体が未成熟なせいで理想とは大分違った抱擁になってしまったけれど、人の体温には心を安定させる効能があると思う。お兄様に暇さえあればくっつきまくってる私が実体験として証言します、人肌を感じていれば大抵の悩みはそのうち吹っ飛ぶ!


 そんなわけで、特に意味もなく「おーよしよし」だとか「唯ちゃんは可愛いなー♪」だとか、そんな身の無い言葉をしばらくの間吐き出し続けた。内容はなくともそれらの言葉は間違いなく私が感じた真実である。


 唯ちゃんは私にとっての癒しであり、少なくともこうして抱き締めたいと思わせるだけの存在であると、言外に伝えるべくちょっぴり強めの力で可愛がりまくってみた。うへへぃ、これってなんて役得ですかね!


 腕の中に納まっている唯ちゃんからの抵抗は今のところ感じられない。


 ちょっと強引過ぎたかもと思ったりもしたんだけど……唯ちゃんの性格を考えれば、むしろ多少強引に距離を詰めていった方がいいのかもしれないね。真面目でいい子ちゃんな気遣い屋さんだもんな〜。


「そうだよね〜、神様の力とか言われても訳わかんないよね〜。分かんない難しいことは放っておいて、明るい未来のことを考えよ? 例えば……そうだっ! 唯ちゃんって何か好きな食べ物とかないの? 作り方が分かるものだったら私がお昼に作ってあげるよ!」


「もが、ふもも……へふ……」


 あはは、何言ってんのかわかんないや。胸のとこがむずむずするぅ〜。


 しかしまあ、なんだね。唯ちゃんを慰めるべく咄嗟に抱きついてみたけど、これは……ううむ。


 油断したら私も涙腺崩壊しそうな予感。

 お姉さんの威厳を守る為にも、ちょっと頑張って表情筋を維持する必要がありそうかなぁ……なんて思ったりして。


 人肌パワーってやっぱスゲェや。


「うん、唯ちゃんのお陰で元気出てきた。――さて! 今日も一日、世のため人のために頑張りますかぁ〜」


「ぷは……」


 可愛い唯ちゃんから元気を吸い取ったことでようやく空元気を出せるだけの活力が戻ってきたので、なんとなぁく景気付けに叫んではみたはいいものの……あれ、ちょっと待てよと。魔物の存在をみんなが認知してないんだったら、神殿騎士団はどうなるのと。今更ながらに特大級の問題が残っていることに気がついてしまった。



 ……いや、本当にその辺どうなってんだろ??

 しかもこれ、誰にどうやって聞いたらいいんだ……?


メンタルは大回復しても問題は何も解決していない。

しかし、今の彼女を親しい人が見ればこう言うだろう。「ソフィアに問題を解決させようと思ったら、相当追い詰めないと無理だろうね……」と。

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