表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1368/1407

望む姿


「望んでるじゃない。違和感なく甘えられる今の姿はソフィアの考える理想の妹の姿なのでしょう? もしもソフィアがアリシア様のような体型に成長していれば、ロランド様だって今とは違う接し方になっていたでしょうね」


 確信を持って語られるリンゼちゃんの言葉を聞いて、私は頭をガッツンと殴られたような気分になった。


 ……いや、あの、それはそのぉー……。


 確かにそういう面が無いとは言わないけども、スラッとした美人になりたいと思ってるのも本当のことなんダヨ……? 嘘じゃないのことなのデスヨ……?


 リンゼちゃんって人の感情に頓着せずズバズバ物申してくれちゃうから、こうして核心に迫る言葉を真正面から突っ込まれると困っちゃうよね。せめて心の準備をさせておくれようって思っちゃう。


 私はチビな自分でいることを望んだことなど断じてない。断じてないが……お兄様の膝の上に座らせてもらえる今の立場が最高に居心地好いと感じているのもまた事実だ。


 もしも私が年齢相応の見た目に成長していたとしたら、お兄様は果たして私を膝に乗せてくれてただろうか?


 ……涙目上目遣いとかで頼めば多少の無茶は聞いてくれるだろうけど、恐らく私がミュラーほどの身長であれば、さりげなく「女の子がそんなことをしたらはしたないよ?」とか言って横に座り直されるんじゃないかな。そんな気がする。


 まさか私の幼児体型が深層心理で望んでいた姿だったなんて、そんなことは想像もしていなかったけど……。


 まあ愛らしさと小ささってのは基本的に切っても切り離せない関係だからね。


 愛らしい見た目を最大の武器だと考えている私は、大きくなって愛らしさが失われることを恐怖している。そう言われればそんな気がしないでもないよーな気はしないでもない。そんな感じだ。


「ふむん、一理あるね。私が成長したら間違いなく美人になるだろうけど、今と同じ可愛がり方はされないだろうね。それを残念に思う気持ちは確かにあるよ」


「相変わらず自信がすごいわね」


「そりゃあね」


 一応の納得を見せると、リンゼちゃんは呆れながらも私の容姿について言及した。そこはほら、お姉様という歳の近い姉がいますからね。


 お姉様も幼い頃は愛らしかったが今では美しく成長している。


 その成長の過程を見ていれば、私もお姉様のように麗しく可憐なる乙女へと進化すること間違いなしだ。


 ……その大前提として、身長が程よく伸びて、胸とお尻がボボンと成長しさえすれば、という条件はつくのだけどね。


「……ん? ってことは、もしかして……。リンゼちゃんの考えが正しければ――私が望みさえすれば今からでも理想の大人体型になることは可能ってことなの!?」


「その可能性は高いと思うわ」


 うおぉおーー! マジかぁーー!! それを早く言って下さいよリンゼさぁん!!


 非人間とか神様同然とか、これまでの話にはあまりにも不穏な感じが満載だったけど、所詮人間って他人を見た目で判断する愚かな生物だからね。超絶美形の宇宙人と醜い同族だったら百パー前者に人集まるでしょ。それなら私は美人で綺麗な宇宙人になりたい。


 えーー、どうしよ。いきなり私が超絶美人に成長してたら、お兄様がびっくりしちゃうかな?


 でもでもお兄様だったらきっと私がどんなに姿を変えていたって気付いてくれると思うんだよね。だってそれが『愛』だから!! 『愛』は不可能を超越するから!!!


「で、どうすれば私は理想の私に成長できるの?」


 美しく成長した私にトキメクお兄様の姿を想像しただけでワクテカする気持ちが止まらないぃぃ!! ……のは良いのだけど、問題はどうしたらそうなれるのかってこと。


 リンゼちゃんの話は今のところ全てリンゼちゃんによる推測でしかない。


 その仮説を説得力のある事実とするには、その仮定に基づいた証拠を提示しなければならないのだ。


「……強く望めばいいんじゃない?」


 ふわっとしすぎぃ!!


 思わずガックリと肩を落とすも、こんな返事が来ることも想定はしていた。


 リンゼちゃんって正論の鬼だし、無表情のまま淡々と自信満々に話すものからやたら説得力があるみたいに見えるんだけど、実際はわりとテキトー言ってることも多いんだよね。長い付き合いでそれを学んだ。


 しかしリンゼちゃんの適当(テキトー)は女神の知識に基づいた上での適当だ。


 その言葉は突拍子もないことを言っているようでその実、真実を端的に表しているということもあったりはした。強く望むというふんわりした方法ではあるが、難易度的に問題がある訳でもない。試してみるのも悪くないだろう。


 というわけで、言われた通りにものっそ強く望んでみることにした。


「『お兄様が一瞬で目を奪われて思わず求婚したくなるような超絶美少女に成長したぁい!!』」


 ……。


 …………。


 …………………………………………。


「……何も変わらないんだけど?」


「ならもうその超絶美少女とやらになっているってことじゃないの」


「そっか!!」


 それなら変化が無いのも仕方ない……って騙されるかーい!


 そんな投げやりな返答、ソフィアさんは許しませんよ!?


不満も顕に文句を垂れつつも、リンゼに突っかかるソフィアの口元はニマニマとだらしなく緩んでいたみたいですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ