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人ではなく……触手ぅ!


 人ではない存在とはなんだろうか。

 人とはどんな生き物を見た時に「これは明らかに人じゃないな」と思うんだろうか。


 私が真っ先に思いついたのは触手だった。


 イソギンチャクみたいにうねうねっとした触手を生み出せたら、それは私が人ではない証明になるんじゃないかな? なんて下らない思い付きを、軽い気持ちで実戦してみたら、魔力性の触手くらいなら案外簡単に生成できた。私は人ではなかったのかもしれない。


 うねうね〜ん、うにょろろ〜んとプルップルンに揺れる触手は独特の可愛げがある。


 しかもこれ、多分魔力視切ったら見えないやーつ。

 やばい、私の中のイタズラしたい欲がムラムラしちゃうよ!


「ふむ」


 丁度夕食が終わって皆の気が緩んでいるタイミングでもあることだし。これはもう、誰かに使って試してみなさいという神の思し召しではなかろうか。


 そう考えればある意味納得。

 なにせこの触手を作るきっかけをくれたのは二人の可愛い神様だからね。


「んー……何本も伸ばすのはキツそうだなー。一本に絞れば、この距離でも、なんとか……?」


 うにょろんうにょろんと魔力で出来た触手を机の下を伝ってゆっくり密やかに進出させる。


 目標はとりあえず、数々の魔法の実験台として定評のあるカイルにした。リンゼちゃんに「やっぱり私、人じゃなかった!!」なんてセリフと共に絡みつこうものならへそ曲げられて夜の約束を反故にされちゃうかもしれないからね。


 のっそり、のっそりと堅実に距離を詰めるのも、焦れったくはあるが中々に趣きがあって良いものと思う。イタズラが成功した時の期待感が徐々に膨れ上がってくというかね?


 目標のすぐ近くにある魅惑の太ももなんかに絡み付きたい欲求も堪え難いくらいにはあるのだけど、驚かせた時の反応で隣に座るカイルがポックリ逝ってしまう可能性が否定できない。カレンちゃんで遊ぶのは周囲の安全が確保出来る時に限ると私は心に誓ったのだ。


「……あと、少しで……」


「何があと少しなの?」


「ひんっ!?」


 ビクゥッ!? と反応した拍子に頑張って伸ばした触手ちゃんは、大気中の魔力に溶け消えてしまった。ああぁあ、折角あと少しのところまで伸ばしたのにぃ!!


 なんてことするのー!? という抗議の意志を込めて見上げれば、声を掛けてきたミュラーは不思議そうな顔をして私の顔と足元を交互に見ていた。……触手伸ばしてたの、完全にバレてますねこれ。


「今の何? 私と戦う時の魔法の練習?」


「へっ? いや単なるお遊びだけど……」


 戦いに触手を?


 そりゃミュラーとまた戦わされることになった時に、触手みたいな遠隔技で牽制出来たら便利だけど……。


 あんなの剣でスパッとやられたら終わりじゃん。何の役にも立たないでしょ。


 ……いや、そうとも限らないか?

 攻撃や拘束を意図しない、触手ならではのうぞうぞとした生理的嫌悪感を掻き立てる動きや見た目を特化させれば、意識を逸らす役割ならば果たせるかもしれない。ミュラーに「なにあれ、近付きたくない……」と思わせることが出来れば戦術の幅は増える……かもしれない。


 ふむん。そう考えると凄いな触手ちゃん。可能性の塊じゃないか。


 まあ可能性の塊と言うよりか、現時点ではただ細長く形成しただけの魔力の塊に過ぎないんだけどね。


 私が思案する様子を見せたせいか、ミュラーが少しだけ警戒を強めたのを感じた。心配しなくても多分実用まではいかないと思うよ?


「魔力視使わないと見えないから、カイルを驚かすのに使えるかなーって。そう思って試してただけだよ」


 チラとカイルの方を見てみたけれど、あやつはカレンちゃんとの楽しいお喋りに興じていてこちらの会話には意識を向けていないみたいだった。カレンちゃんとくっついてからのカイルは大分色ボケしてる感じだよね。つまんないの。


 やっぱりここらで一発、どデカいイタズラをかまして警戒心を呼び起こしてあげなくちゃ! と妙な使命感に燃えていたら、ミュラーが不思議そうな顔で私の言葉を否定した。


「見えない……? それってさっきまでソフィアの足元にあったやつのことよね? 目に魔力なんか集めなくても何かあるのは感じられたわよ?」


「え? 魔力視使わなくても見えてたの?」


「……そういえば見えてはいなかったかもしれないわね」


 なんそれ、どゆこと? もしかして私の《探査》みたいのを無意識に展開してるとか?


 ぶっちゃけミュラーならなんでも有り得そうだからなーと思いつつ、コソッと触手ちゃんを再召喚してみた。ミュラーの視線が即座に反応。これは完全に見えてますねぇ。


「見えてるみたいだね」


「……いえ、やっぱり見えてはいないみたい。ただ、そこに何かがあるのは感じ取れるわ」


 だからそれどーゆー原理なの??


 試しに触手の周りを私の魔力で支配しても、ミュラーには相変わらず触手の存在を感知できるみたいだった。


 意味分かんないけど、ミュラーが異常に感知に優れてるってのだけはよーく分かった。


 やっぱミュラーを相手にしようと考えること自体が間違いなんだね! 触手ちゃんはミュラー以外へ使うことにしよーっと!


なお、ソフィアがミュラー相手に触手の検証をしていた頃。

美少女メイドであるリンゼちゃんは、得体の知らない悪寒に襲われていたとかいないとか……。

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