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美少女メイドの下克上


「ソフィア、ちょっといい?」


「ん? リンゼちゃんどったの?」


 今日も今日とて魔物狩りから帰ってきたら、部屋へ帰ろうとする私をリンゼちゃんが引き止めに来た。夕食の準備でも手伝わされるのかな?


「今日、唯と話をしたのだけど……ソフィアは自分が人であることを証明出来る?」


「……ん? …………んん? どゆこと……??」


 て、哲学的なお話かな? 厨二病を発症するにはまだ少し早いんじゃないかと思うのだけど!?


 私がなんともいえない表情へと変わったことに気付いたのか、リンゼちゃんは微妙に嫌そうな顔をしながら「ソフィアが人ではなくなっている可能性があったから教えに来たのだけど、気にならないのなら別にいいわ」と言い捨ててさっさと踵を返してしまった。


 いやいやいやいやその台詞聞いて無視するとか出来るわけないでしょ!? どゆことォ?!? ちゃんと説明していってよね!!?


 スタコラサッサと歩き去ろうとするリンゼちゃんの肩をガッと掴んでその歩みを止めた。

 この勢い、放っておいたらこの子マジで私のこと放置したままにして別のことをしていただろうね。精神構造が女王様すぎる。


「ちょっと待ってー! え、どゆこと? それって……え、なに? なんかの冗談??」


「私が冗談を言うと思うの?」


 いや、リンゼちゃんは意外と根に持つタイプだから、しれっとした顔で冗談とか言いそう……ってのは今は置いておいて。


 ささっと魔力を広げると折り悪く、カイルがこちらの様子を伺っているのが確認できた。距離的に会話を聞かれたかどうかは微妙なところだ。


 私が……()()()()()()()()()()()()()()()()? マジですかソレ??


 そんなのって……なんか、なんだろ。

 なんかこう、身体中から得体の知れないゾワゾワとした感覚が這い上がってくるかのような……。そんでもって、そんな得体の知れないナニカに、既に自分の身体が全身置き換わっているかのような……?


 そんな不気味な想像が不意に浮かんだ。


「うひぃ」


 おお怖。寒くもないのに身体が思わずブルっちゃうね〜。リンゼちゃんって時々急にこーゆーのぶちこんで来るよね! お願いだから助走を入れるか加減してくれい!


 とりあえず詳しい話を聞くためにも場所を移すべきだと判断した私は、カイルの目にも出来るだけいつもの調子に見えるよう意識しながら、リンゼちゃんに慣れ親しんだウザ絡みした。


「も〜、そんなの聞いたら無視できないに決まってるでしょ!? それで、なに? 私の部屋行く? それとも唯ちゃんの部屋の方が都合がいいかな?」


 リンゼちゃんのほっぺたを突っつきながら「ほらほらはやく決めなさーい」とばかりに急かしていると、返答はまさかの「夕食の支度があるから」という断り文句だった。ねぇ嘘でしょちょっと、勘弁してよ。


 ここにきてお預けとかいくらなんでもありえなくない??


 あ、もしかしてこないだおやつの時間に「今日のおやつは生クリームの気分」とか言ってメニューを無理やり変えさせたの未だに根に持ってたりするのかな?


 あれはちゃんとクリーム作るの手伝ったんだから許しておくれよ〜。材料も半分くらいは私の持ち出しだったじゃん? 美味しいものが食べられたんだから結果オーライだと思うんだよね!


「ええー……? 話す気ないならなんで今その話をしたのー……?」


 でもリンゼちゃんがムカついたのなら謝りますよ、ごめんなさい。毎度調子に乗ってどーもすいませんでしたー。


 そんなつもりで下手に出れば、私の謝意を感じ取ったのかリンゼちゃんが足を止めて、私の方へと振り返った。


「そんなの決まってるじゃない。本当にそうなのか少し気になったものだから、本人がどう思っているのかを確認しに来た。それだけのことよ」


「ええええ……」


 そんな、身も蓋もない……。

 というか、少しは私の心配してくれても良くない……?


 相変わらずリンゼちゃんはクールだねーと感心しつつ、私はこの新事実……おそらく私にとっての重大事を、夕食の準備を手伝いつつ片手間で話してよいものかと割と真剣に頭を悩ませていた。


 盗み聞き対策は出来ても、シチュエーションが……流石にね?


 話が変な風に転んで「ソフィアは人間じゃないんだから食事の用意は要らないわよね」とか言われても超困るし。

 ほぼ確実に焦ったり慌てたりするような内容を含む話を、刃物や火を取り扱う調理中にするというのも気になるところだ。


「じゃあ、食後! ……の、片付けも終わって用事も全部済んだあと! 暇になったら私の部屋に来て、その結論に至った詳しい話をしてくれる?」


 それなら何も問題ないでしょうと提案すると、リンゼちゃんはまるで、無知なる者を見下すような目をして諭すように優しく告げた。


「私はソフィアと違って、夜も暇では無いのだけど?」


「私の為に時間を作ってくださいお願いしますぅ!!」


「しょうがないわね」


 くぉぉぉっ、舐められてるぅぅ!! 私いま、めっちゃくちゃ足元見られてるぅぅぅ!!


 でも美少女におもくそ舐められるの、正直ちょっとゾクゾクします。こういうゾクゾク感なら悪くは無いね!



 頭の中を煩悩で塗れさせて、イケナイ妄想でうへうへする。こうしていれば夜まで変な不安に苛まれることもないんじゃないかな?


 たとえ人ではなかったとしても、やはりソフィアちゃんは天才なのであった。えっへんぷい。


考えれば不安になるのなら、考えることをやめればいい。そうだ妄想で時間を潰そう。

さすがは天才は発想が違った(棒)。

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