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森の浄化


 何度か小休止を挟みつつ、お兄様を先頭にして私たちはズンズンと進んだ。程々に出てくる魔物の相手は全て男性陣にお任せだ。


 索敵範囲の遠い方にいる魔物はエッテが、近い場所にいる魔物は私が《遠隔視》+魔法の遠隔発動の併せ技で倒したり、はたまた移動先の方向へぽーいと放り投げたりすることで、森から魔物達はみるみるうちに消えてゆくこととなったのだった。森の平和は守られたのだ〜。


 このままお兄様の凛々しい戦闘姿をずーっと眺めていられるのなら、それはとっても素敵だなって思うのだけど、残念ながらそろそろ終わんないと私以外の魔力がキツそうな予感。私が見ているせいか二人とも余裕のある表情を崩してないけど、もう魔力の残量が三割は切ってるんじゃないかなって思うな。


 特に王子様は集中力も切れてきたのか、さっきからチラチラと「ソフィアはなんで手伝わないんだ?」的な視線を寄越してきてて、それもいい加減ウザくなってきたというか。そんなこと気にする前に雑になってる魔力の運用を見直せと言いたい。お兄様眺めるのに忙しいから言わないけどね。


 私だけ楽してるように見えるのかもしれないけれど、そもそも役割分担からして違うんだから私が戦わないのは当たり前だ。てゆーか私が手を出したら二人の仕事が無くなってしまう。効率だけで言うなら一人で移動速度上げて瞬殺しながら飛び回るのが最高率だからね。


 それにそれに、ヒースクリフ王子は戦う時しか魔力を使ってないけど私は常時魔法を展開している。二人が戦う魔物の量だってこちら側で調節してるし、取りこぼしの出ないようにエッテと協力して二人が倒してる以上の数の魔物を殲滅もしている。


 サボってるように見えても私は結構働いていますよ! とてつもなく頑張ってると言ってもいいと思うな!!


 それを理解してくれているお兄様は、時折私の方を振り向いて、気遣ってくれて……。


 そのお心遣いだけでもうね、「あと何時間でもばっちこいやー!」って気分になるんだけど、残念ながらそうはいかないのが悲しいところで。

 美しくスマートに剣と魔法で魔物を倒すお兄様の魔力は、一般的な騎士の人達と同じように有限なのよね。


 まあ、無論私の魔力だって有限ではあるんだけどさ。



 それでもこの調子なら一日以上は余裕で持ちそう。


 問答無用で魔力塊ぶちこまれた時には死ぬかと思ったけど、今ではこの豊富な魔力量なしでの生活は考えられないくらいに魔法垂れ流しの生活に順応している。こんな身体にしてくれた唯ちゃんにはいくら感謝してもしたりないね〜。


「お」


 とかなんとか、現人神ちゃんに感謝を捧げながら《遠隔視》で確認した魔物に《小竜巻》をぽへっと当てて進行方向へと吹っ飛ばしていると、《探査》の端っこにやたら馴染みのある魔力の気配が現れた。どうやらミュラー達がこっちに向かって来てるみたいだねー。


「お兄様。十秒くらいで前方やや左に魔物が一匹現れます。それと遠くにミュラー達の反応を確認しました」


「了解、じゃあその魔物はヒースに頼むよ。ソフィア、合流にはあとどれ位掛かりそうかな?」


「えーっと……」


 探査魔法に集中する私をフォローする為にさりげなく寄ってきてくれたお兄様に片手を添える。


 頼まれた計算に取り掛かりつつお兄様のぬくもりを余すことなく堪能出来るのだって、増えた魔力量による《並列思考》の賜物だ。唯ちゃんにはホント、ケチらずに好き放題使える圧倒的魔力を貰えて感謝しかないねぇ、うぇへへへ。


 んー、いい匂い……♪


 じゃないや、ちゃんとお仕事しとかないと!


 えっと、それで、合流予定だったよね?

 そうねぇ。この距離、速度でこのまま進んで……んー、んーー…………三十分、よりは掛かりそう、かな?


半時(いちじかん)あれば合流出来るかと」


「そうか。じゃあ最後のひと踏ん張り、頑張ろうか?」


「はーい」


「ふうっ……! ……はい!」


 やけに気合いの入った声に目を向ければ、ヒースクリフ王子が剣で地面に串刺しにした魔物に向かって魔力を放出しているところだった。空気中に闇の身体が解けてゆく。


 そういえば今ヒースクリフ王子がやってるやり方。あれって普通の騎士は出来ないらしいね?


 道中で色々と試した結果、ヒースクリフ王子にはあの直接魔力を流すやり方が魔物を消すのに最も効率的な方法だと判明したんだけど、あの「魔力を魔力として体外に作る」やり方って、学院の同級生……もっと言えば私の周りにしか出来る人がいないっぽいんだよね。


 いつかネムちゃんに見せた魔力球。


 ヒースクリフ王子はあれを魔力制御の訓練として取り入れてたから、魔力だけを体外に放出できてるってことらしい。あれだけのことが出来ないとか騎士ってマジ脳筋……とはいえ目的を果たせるならやり方はまあ……やりたいようにやればいいよね。複数人で囲って水を引っ掛けるのだって、倒せればそれで……うん、まあ、いいんじゃないかな。どうせ人目につかない場所で倒すんだしね。


「んー……んっ!」


 うにーんと伸びをするついでにお日様の傾きを確認。


 合流して、それから魔物の狩り残しを確認して……。

 うん。日が落ちるまでには余裕で町に入れそうかな。


 今回は結構範囲が広かったけど、特に問題もなく終われそうで良かった、良かった!


「キュー!」


「キュイー!」


その頃、魔物狩り貢献度ナンバーワンのペットたちもまた、終わりの時に向けて狩りの速度を加速させていた。

驚異的な移動速度と討伐速度で縦横無尽に森林内を駆け回った彼らの魔物討伐数は、人間達が倒した魔物の数の優に十倍は超えていたとか。

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