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お母様の友人は実在します


 お菓子在庫ががっつり増えた。普通に一人で食べるのなら余裕で十回分くらいはあるんじゃないかってくらいごっそり増えた。ちょー嬉しい。


 失礼なことを言っちゃった私にも優しいからシャルマさんって好き。大好き。是非ともお嫁に来て欲しい〜!!


 貴女の作るお菓子が毎日食べたい! なんてプロポーズめいた言葉を思い浮かべながらぽわぽわとおやつの余韻に浸っていたら、お姉様がひょっこりと食堂に顔を覗かせていた。


「……もしかして、皆でおやつでも食べてたのかしら? 私には内緒で? ……お姉ちゃんさびしい〜」


「ご安心ください!」


 こんな時こそ、作ってもらったお菓子の出番だよねえ!!


 若干大袈裟気味に悲しい表情を作っていたお姉様を私の横に着席させ、シャルマさんに作ってもらったばかりのお菓子を提供した。その際あまりにもこのお菓子の美味しさを語りすぎたせいか、お姉様がちょっぴりシャルマさんにジェラったのを感じたが私にはもはやどうすることも出来ない。美味しいお菓子を褒め称えないなんて選択は私の中にはなかったのだ。


 でもこれを機にお姉様までもが卓越した製菓技術を習得なんてしたら私にとっては最高すぎる。


 争いがない世界って一見平和には見えるんだけど、競争原理とかも働き難いのが欠点だよね。この世界の文明が遅れてるのってその辺にも原因があると思うな。


「……ん!!」


 なんて余所事を考えている間に、お菓子を口にしたお姉様から驚きの感情が伝わってきた。


 口元は上品に抑えつつも瞳は驚愕に見開かれている。

 無言で咀嚼する姿からは、予想外の美味しさを余さず堪能したいという本能の訴えが透けて見えた。


 ふっふっふー! どーよ、すごいでしょ? シャルマさんの作るお菓子は美味しいでしょう!!


 余計な事など一切考えられなくなったその様子に、私は我がことのように得意顔になったのを自覚していた。


「どうです? シャルマさんの作るお菓子は美味しいでしょう。彼女はお母様の友人であるヘレナさんが信頼する、とても頼れる使用人さんなんですよ!」


「えっ、あの人お母様の友人なの!? そんな、実在してたの!!?」


 シュバッ! っと振り返ったお姉様が予想外のところに反応した。その気持ちはわかるけどね、今はこのお菓子の素晴らしさについて共有したかったかなぁ。


 っていうか、あれ? お姉様ってヘレナさんとは会ったことなかったんだっけ?


「お母様の友人」というのがとてつもないパワーワードだという点については同感だけど、いくらなんでも驚きすぎでは? いくらお母様とはいえ数人の友人くらいはいるでしょうよ。まさかお姉様がその実在すら疑っているとは思わなかったわ。


 ん〜……まあ、確かにね〜。お母様って友人関係の話を振るとやけにムキになってキョドるからね。実は友人とか空想上にしかいないなんじゃないかと疑いたくなる気持ちは、まあ分かるよ。


 でもヘレナさんはこうしてここに実在している。

 ゆーてヘレナさんの他にお母様の友人なんて知らないけどね。あはー。


 ……いや、考えてみれば王妃様もお母様の友人枠に入れてもいいんじゃないか?


 王妃様と友人とか恐れ多くてあんまりイメージが湧かないんだけど、あの何考えてるか分からない貴婦人こそお母様と同格の存在だと納得するものもある。砕けた口調で話すことも許されていたし、下手すればヘレナさんよりも親しい間柄なんてこともあったりするのかもしれない。


 ……まあ口調を崩すことを許されてると言えば、私だってそうなんだけどさ。


 私と王妃様は間違っても友人なんて関係ではないだろうなぁ。喩えて言うなら母の勤務先の社長みたいな?


 気さくに話しかけてはくれるんだけど、失態を犯したら一発で手のひらを返されそうな恐怖がある。被害妄想と言われればそれまでだけど、私にはあの笑顔の裏に「失敗したら直ぐにでも処分できるのに……早く失敗しないかしら?」って意図が見え隠れしているように思えてならない。貴族言葉の真意を読むのって難しいよねー。


「悔しいけど、確かにこのお菓子は美味しいわね……」


「でしょう」


 おっと、お姉様からも遂に屈服の言葉が頂けましたよ?


 そうでしょうそうでしょう、シャルマさんのお菓子は美味しいでしょう。なにせこの私が満足する味なんだからねっ!


 女の子なら誰だってこの誘惑には屈さずにいられないはず。

 そう考えれば、お姉様は随分と持った方だ。私なら一口で理性が吹っ飛んでうへうへ言ってた自信があるね。


 改めてお姉様とヘレナさん、シャルマさんの三名が挨拶を交わしているのを眺めていると、ちょいちょいと袖を引く覚えのある感触が。


 カイルと入れ替わる前にと光の速さで反応すると、そこにいたカレンちゃんが「ひぅっ!」と普通にビビクンと驚いていた。なんかごめんよ。


「どしたの?」


「え、えっと、良ければさっきのお菓子、もう少し貰えないかなって。ほら、訓練でお腹がすいてて……ね?」


「なるほど?」


 それを考慮に入れても充分な量食べてた気がしたけど、欲しいと言うなら差し上げましょう。たんとおあがり?


 ついでに唯ちゃんとリンゼちゃんのテーブルにも半ば無理やり追加して、そのまま私も居座ってのおやつパーティー延長戦を開始した。


 リンゼちゃんは微妙に不満そうだったけど、唯ちゃんが密かに嬉しそうにしていたのを見逃してはいない。


 やはり美味しいお菓子は最強のアイテムだな。無限に欲しいわ。もむもむ。


なおお姉ちゃんさんがお菓子パーティーに誘われなかった理由は、単にリンゼに呼びに行かせた時に離席していていなかったからです。ソフィアの見てない所では割とマジめに働いているので!

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