表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1347/1407

美少女メイドは働き者


 お姉様と一緒にサクサクと書類を処理していると、リンゼちゃんの仕事の多さが気になった。


 屋敷に住む全員分のお世話に加え、お姉様が来るまではアネット商会とのやり取りや食料の管理等、対外的な仕事はお兄様かリンゼちゃんが対応していたことがこの書類からは読み取れる。


 私らって成人したのに揃いも揃って年下の子のお世話になってて恥ずかしいね。次にコンビニスイーツ仕入れたらリンゼちゃんの分は割り増しにしとこう、そうしとこうと今決めた。


 さてさて、そうと決まればこれは領収書関係の箱にポイッとしてー。あと気になったのは……おっ、これこれ! こーゆー面白いのを待ってたんだ! 新しいメイド候補に関する報告書ね!


 なになに、ほんほん。……へー、結構候補者の年齢層は幅広いのね。年齢で区切っている訳ではなく、でもその割にはあんまり能力にも拘ってないっていうか……年齢一桁の女の子まで候補いるのがどうにも気になる。お兄様って実はロリコンだったの……?


 なんて、ロリコンなのは私でしたね。


 仕事の出来る年配のご婦人が気が付かないうちに全ての仕事を済ませているのと、ちいちゃい女の子たちが目の前で一所懸命にお仕事をしているのを眺めるののどちらが良いか。後者の方がほっこり癒されるのは間違いないよね。


 つまりは私好みの使用人として、この子はお兄様のお眼鏡にかなったのだろう。こちらの履歴書に顔写真が添付されていないのが悔やまれる。


 てゆーか、あれ? この子だけが平民なのか。平民って貴族に比べて可愛い子がほとんどいないんだよね。


 一気に興味失せた。これは後でまとめてお姉様のとこに戻せばいいかな。さーて次々ー。



 そうしてパパパーッとお仕事を済ませていると、ようやくお姉様が仕事の方に集中し始めた気配を感じた。


 お手伝いに来たのに私のせいでお姉様の手が止まるとかいう意味不明な事態になってたからね。勝手にサボるお姉様が悪いだけで、別に私のせいではなかったんだけど。仕事が進むのは良い事だ。


 久々の充足感を得つつ、この調子なら私の方はあと半時ほどで終わりそうだなー、なんてことを考えていたら、部屋にリンゼちゃんがやってきた。


「失礼します。休憩の準備が……アリシア様の分だけ整いました」


「あらありがとう」


「私の分は!?」


 なんでお姉様だけ!? その人いまの今まで私の仕事してる姿眺めてるだけだったよ!? 九割九部サボり魔だったよ!?


 休憩が必要なのはむしろ私じゃー!! という抗議を込めて、身体を思いっきり揺らしつつ「なんで!! ねぇ、なんでお姉様だけなの!! 私の分は!?」と更なる非難を浴びせると、リンゼちゃんは面倒くさそうな顔して「ソフィアがここにいるとは知らなかったからよ」と至極真っ当な答えを返した。なんだ、それなら仕方あるまい。


「じゃあ…………二人分の用意を、お願いします」


「はいはい、後でね」


 すんげー駄々っ子扱い受けた気がするんだけど、私これでも抑えた方だよ? 初めに頭に浮かんだ「ならその一人分のはこっちにちょーだい」って言わなかったからね。


 休憩と言うなら私にこそ必要だということ。お姉様はリンゼちゃんが来る直前まではサボっていたため、休憩が必要になるほど働いてないこと。でもそれを言ったところでリンゼちゃんに信用して貰えそうにないこと。


 これらの理由に加え、最終的にはお姉様と一緒に休憩したいと思って蔑ろにされた不満を抑えたのだ。リンゼちゃんはもう少し私に優しくしてくれてもいいと思うな。


「なんならリンゼちゃんも一緒に休憩してかない?」


 そしてお菓子の食べさせ合いっこでもしようぜベイベー、なんてことを考えていたのがバレたとは思わないが、私の誘いは迷う素振りすらなく却下された。楽しそうな顔をしているお姉様がちょっぴり恨めしく思えてしまうよ。


「私はまだ仕事があるから。後で唯と一緒に勝手に休むわ」


「うむむ、そっかぁ。それなら仕方ないかなぁ……」


 唯ちゃんの名前を出されると弱い。っていうか、マジでリンゼちゃん一日中休まず仕事してない? こんな勤勉な元女神様とか嘘でしょって思う。


「ちっちゃいのに働き者よねぇ。こんな小さな子に雑務を一手に押し付けてるなんて、ロランドは鬼ね、鬼! いじめられてるなら私に言いなさい、とっちめてあげるわ!」


 腕をブンブンと振りながらとっちめる様子を表現しているお姉様。


 お姉様に叩かれた程度であのお兄様が神妙になることは無いだろうけど、泣いたお兄様を慰めるシチュエーションは、正直ありだな……なんて思ったりした。


「お姉様、お兄様を悪く言わないでください」


「そうです、ロランド様に非はありません。悪いのは全てソフィア様です」


「うん……うええ?」


 なんで私??


 事情の説明を求めると、リンゼちゃんは神殿の使用人が己一人である理由を「ソフィアが使用人を選り好みするから」と説明した。私自身が選り好みした記憶はないけど……まあ、心当たりがない訳でもない。


 以前神殿に仮暮らしした際に「神殿と言えばシスターだよね!」とか「人が多いと唯ちゃんが安心できないかも」と発言した記憶はある。それをお兄様がどう受け止めたか。


 私のせいでリンゼちゃんが一人で大変な思いをしていると言われれば、それは否定できない事実かもしれない……。


 これはもう特別なお詫びをもって償うしかないかもしれないね。


実はソフィアが知らないだけで、カイルは定期的にリンゼの仕事を手伝っていたりします。

早朝訓練の前に洗濯物を手伝ったり、水を運ぶのを手伝ったり。

モテる男にはモテるだけの理由があるものなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ