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夜になった。テンションが上がった。


 神殿での生活はお兄様とのより狭い空間での同居を意味する。どうなるのかなって期待はもちろんあった。けれど、同じくらいに不安でもあった。


 私がこれまで好き勝手しても何不自由なく暮らせていたのは、お母様の庇護あってのことだと理解している。


 お兄様のことは勿論信じているけれど、屋敷とは違って神殿は出入りを監視する人員がいない。警備がぶっちゃけザルすぎる。なのにすぐ近くには常識の違う人達が数多く暮らし生活をしている。


 今まで貴族という檻に囲われ大切に扱われてきた女の子にとって、この状況は酷く恐ろしいものである。



 ――という状況を逆手にとってお兄様の部屋に突撃し「今日は一緒に寝てくれませんか……?」とお願いしに来たというのに不在とはいったい全体どういうことだ。


 まさか……初夜、か? ミュラーの部屋にでも行ってたりするのか? そんな嘘でしょお兄様!?


 んなことになってたら絶対交ざるから覚悟してよね!? と思い《感知》を飛ばすも、ミュラーの部屋にはお兄様の反応は無かった。というか神殿内にお兄様はいないみたいだった。


 その代わりにカイルの部屋から何故だかカレンちゃんの魔力反応があるのを見つけちゃったんだけど……流石にこれは覗き見ちゃダメよね。幼馴染みと友人が夜の運動してるとこなんか見たくもないし。


 …………いや本当はちょっと見たいけど、いや見たいというか今後の参考にちょっと観察させてもらうのもありかなというか、いやいやでも今はそれよりもお兄様を探すのが先決でそういえばリンゼちゃんの反応が居間にあったな聞きに行こうかなぁ!


 そうして若干火照った身体を冷ましに行けば、予想した通り、リンゼちゃんがお兄様の行方を把握していた。


「今日は屋敷の方で休むみたいよ。書かなければならない書類が多いのだと聞いているわ」


「それここで書けば良くないかな!?」


 何故なんですかお兄様!? ぷりーずかむばっく私の元へー! と欲望ダダ漏れの嘆きを零せば、リンゼちゃんが胡乱な目で「ここに居たらソフィアに邪魔されるとでも思ったんじゃないの」なんて言ってきた。実際お邪魔する気満々だったから文句も言えない。


 ――とでも考えると思ったかこらぁ!!


「リンゼちゃん最近いじわるじゃないかな? あーあ、寂しいから今日はリンゼちゃんと一緒に寝ようかなぁ」


「迷惑だからやめてくれない?」


 本当に容赦がないよね、この子は。まぁそこが気に入っているところでもあるんだけどさ。


「そういえば唯ちゃんは? 一緒にお仕事してるんじゃないの?」


 椅子に座って長居をする姿勢を見せると、リンゼちゃんは軽く溜め息を吐きながらお茶を淹れてくれた。リンゼちゃんのそーゆーとこ、すごくいいと思います。


「唯は私とは違ってこれを仕事にしている訳ではないから。今頃は部屋で刺繍でもしているのではないかしら」


「ほう」


 仕事にしている訳ではない。つまりは趣味でメイドの真似事をしてたってことよね? ……それってちょっと可愛すぎない?


 しかも刺繍が趣味になりつつあるとか、唯ちゃんの女子力が留まるところを知らない。あとはお菓子の作り方でも仕込んだら将来は引く手数多なとんでもないお嫁さんになるのではなかろうか。そんなのお姉ちゃんが許しませんよ!?


 唯ちゃんを嫁に出すなら、せめて最低でもお兄様くらいの……って、考えてみればそれもありかな?


 元の世界で頼れる先の無くなった唯ちゃんが、お兄様ハーレムに加わる可能性。考えれば考える程に利点しかない気分にさせられてくる。ちょっと本気でこの件検討してみようかしら。



 ――先ず唯ちゃんは向こうの世界に未練があるようだ。が、単身戻ったところで身寄りがない。私の母に預けるにはまず私が美少女として異世界転生しまった事情を説明し、その上で唯ちゃんとの血縁関係まで説明する必要が出てくる。この時点でかなり難易度が高い。あの破天荒な母でも、流石にこの情報量の処理は一筋縄ではいかないだろう。


 そして何よりの問題は、私に向こうの世界に戻るつもりがあんまりないということ。


 正直なところ、もうこっちの世界で残りの人生過ごした方が幸せになれるんじゃない? と思っている。愛するお兄様の存在も勿論あるが、何より魔法の無い生活に耐えられる気が一切しない。あっちの科学も凄いけど、それ以上に魔法が便利すぎるよ……。


 あとやっぱり、向こうの世界は人の悪意ってのが多すぎる。この世界の貴族と比べても遜色なくかわいい唯ちゃんが向こうの世界で安全に暮らせる? ないだろうなぁ……。こっちの世界でお兄様に愛されてた方が絶対良い生活が送れるだろうなぁ……。



 ――ってことで、唯ちゃんをお兄様ハーレムに加えるのはかなりありだという結論に達した。


 元の世界に戻りたがってる唯ちゃんには不本意かもしれないけど、安全性を考えたらこれがベスト。ついでに私の心の平穏的にもこれが最も安心出来る結果になると思う。


 唯ちゃんって心は普通の女の子だけど、この世界を作った神様だからね。色々な問題は起こりそうだけどお兄様がいれば問題なし! ほら、ね? 安心でしょ?


 なら後は、唯ちゃんが私と同じようにお兄様への愛に目覚めてしまえば……?


 お兄様の魅力を語るのなんて得意分野中の得意分野だ。唯ちゃんには睡眠も必要ないし、文字通り一晩中語り明かしたって構わない。


 ……う〜! なんか猛烈にやる気出てきた! 唯ちゃんの未来の為に、いっちょ気合入れてがんばっちゃおうかな!!


「……ソフィアがやけに静かだと、また変なことを考えているんじゃないかって不安にしかならないのよね……」

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