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神殿に集う仲間たち


 学院に毎日通う責務から解放された。


 そこだけを抜き出せばとてつもない自由を得たかのように錯覚してしまうけれども、実際にはまた別の檻に閉じ込められる日々が始まる。そう解釈することが出来なくもない。そんな感じ。


 はろー、はろー。今日もソフィアちゃんは絶好調です。


 ミュラーがウチの嫁になったり、お母様が剣聖お爺ちゃんに怯えたりとか色々あったけど、今日からは新生活が始まります。今日から私とお兄様は長年親しんだ屋敷を出て、新たな愛の巣へとお引越しをします。


 新しい嫁であるミュラーとかちびっこ神様ーズも一緒に移動するけど、ここはあくまでもお兄様が私の為に用意してくれた神殿(愛の巣)だからね。そこのとこ、ミュラーはくれぐれも勘違いしないよーに。……絶対だからね!?



 ――そんなことを言い含めながら神殿へと移動したら、そこは既に別の人達の愛の巣になってたとか、一体誰に想像できただろうか。少なくとも私は一切想像してなかった。


「あ、ほら。ソフィア達が来たぞ。そろそろ終わりな?」


「え? ……うん、そうだね。寂しいけど、我慢するね……」


 神殿入ってすぐの所。誰でも気軽に礼拝が出来るようにといくつも並んだ長椅子の一部から声が聞こえた。


 男女の声が聞こえたのに、見える陰は一つだけ。


 それはつまり、声の主達はお互いの身体を重なるほどに密着させているという証にほかならず……。


「ちょ、ちょっと! 貴方達なにしてたの!?」


 早速勘違いしたミュラーが傍にいた唯ちゃんの耳目を塞いだ。


 そんなことしなくても、低身長の私らからは椅子の背が目隠しになって大して何も見えないんだけど……。ははっ、発育の良い人にはチビの常識なんて分かりませんよねそうですよね。……隕石でも頭上に落ちて縮めばいいのに。


 ちなみにカレンちゃんが「寂しいけど、我慢するね……」とむしろ煽るような声音でカイルに求めた行為は、男女の色事ではなく単なる頭なでなでである。カレンちゃんも愛情がたっぷり込められたなでなでの魅力に取り込まれたらしい。その気持ちは痛いほどに分かる。


 愛しい人からのなでなでって何であんなに気持ちいいんだろうね。


 私もお兄様からなでなでされると、一撫で毎に体重が一キロくらい軽くなってく感じするもん。終わる頃には今のカレンちゃんみたいに、ふにゃふにゃのでろでろに蕩かされて天まで昇れそうな心地っていうか。思考能力とか羞恥心とか蒸発するよね。


 ……ま、それも現実に戻ればすぐに復活するんだけどね。


「カイルの変化も大概だけど、カレンも大分変わったよね。幸せそうな顔しちゃって〜」


「え? ……ふえっ!? い、いつ来たの!?」


「今でしょ!」


 カイル以外何も目に入ってなかったカレンちゃんに覚醒を促せば、模範解答みたいに愛らしい反応を返されてしまった。反射的に理解者のいない言葉が飛び出したけど後悔はない。私は今、カレンちゃんの可愛らしい顔を見れてとても満足しているからだ。


「そういうソフィアは全然変わらないよなぁ。……本当に、全然……」


「しみじみ言うのやめてくれる?」


 前言撤回。カイルの方は婚約者が出来ても相変わらずの性悪だったみたいね。


 明らかに身長を測っていた視線にじろりとした視線で睨みつけて返すと、意外にも反応はカレンちゃんから返ってきた。私を責めるようなその目つきは、まるでお菓子を取り上げられるんじゃないかと警戒するフェルみたいで愛おしさを先に感じてしまう。


 警戒心丸出しの視線ににっこり笑顔で手を振り返せば、根が良い子なカレンちゃんは私の反応に戸惑ったのか、くるくると表情が変わって更に可愛らしいことになっていた。あれがもうカイルのものとか……やっぱり少し早まったかなぁ。


「なにカレンを苛めて遊んでるのよ」


 そんなことをしてたら、ミュラーがまた勝手に誤解して非難してくるし。


 イジメと弄りは本質的には同じものと理解はしてるけど、私のはちゃんとカレンちゃんにも利益があるからいいんだもんね。嫌われたら困るからちゃんと加減だって意識してるし!


「いじめてるとは人聞きの悪い。むしろカイルに悪口言われてたのは私だよ?」


「ソフィアが全然成長してないのは事実でしょ」


 おま、言ってはならんことを言葉にしたな!? カイルでさえぼかしてたのに、核心をドズンと貫いていてきたな!? 潔よければ全て許されるも思ったら大間違いだぞ!!?


 うがー! と沸き立つ怒りのままに反論しても良いのだけれど、この場には私の愛するお兄様がいる。


 先ほどカレンちゃんの幸せそうな姿を見て若干当てられていた私は、ミュラーへの反抗よりもお兄様へと甘えることを選んだ。酷い暴言も今だけはナイスアシストとして許してやろう。私の寛大さに感謝してよね!!


「お兄様ぁ〜……。ミュラーが、ミュラーがぁぁ……!」


 ふえぇんと泣きながら抱きつけば、お兄様は私を優しく抱き上げそのまま「よしよし」と慰めてくれた。


 これよこれ、この特別扱いよ。うへへ堪らん……♪


 お兄様の肩越しに見るミュラーは苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、この場所を代わるつもりは毛頭ない。悔しかったら次の人生ではお兄様の妹には生まれ変わることだな、ふはははは!!


 とてつもない優越感に良い気分で浸っていると、呆れの混じったカイルの溜め息が耳についた。そして「あれむしろ退化してねぇか……? 扱いがまんま幼児じゃん」と悪口まで。


 ふん。なんとでも言うがいいさ。


 お兄様に抱かれる為なら私は幼児になったって一向に構わないからね! 赤ちゃんプレイだって望むところだ!!


「ソフィアは愛情表現が真っ直ぐだよね……。私もいつかは、見習って……!」

「やめてくれカレン。あんなのわざわざ真似しなくても、カレンはちゃんと魅力的だからな?」

「カイルくん……!」


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