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待ち人、来ず


 翌日。

 カレンちゃんを待つ私の隣にはそわそわとして落ち着きのないミュラーの姿があった。


 どうやら昨日帰り際の二人の様子を見て何かがあったことを悟ったらしく、「あの二人って今どうなってるの?」と聞かれたので素直に「昨日はカイルの家に挨拶に行ったみたい」と答えたところ、その急展開振りに面白いくらい動揺した結果共にカレンちゃんを待つことになった。逆の立場だったら私も相当驚いて同じような行動を起こしたと思う。


 あのカイルが、告白を受けて即日家に連れ込むとか……。そーゆーことはしないタイプだと思ってたんだけどねぇ……。


 まぁ本当にそんな目的で連れ込んだ訳ではないとは思うんだけどね。


 カイルも男だし、その可能性が皆無だとも思わないけど、確率としては一割にも満たないんじゃないかな。本人も言ってた通り、単なる親との面通し程度で終わってると思う。下手に襲ったら返り討ちで死の危険性すらある相手だしね。


 それでもやっぱり告白→家の流れはあまりにも急展開過ぎて期待せずにはいられないというか……その辺が気になっちゃう気持ち自体は止められないよね。


 カイルの家でどんな話したのか? 結局カレンちゃんはカイルの両親に認められたの? とかとか、色々と聞きたくなっちゃうのはこれはもう乙女の本能とも呼ぶべき衝動だと思う。昨夜から気になって気になって仕方なかったんだもん、教室で待ち伏せるくらいは許されて然るべきだと思うんだよね。


 実は昨夜、我が家にもカイルのお父さんがやってきてさ。お父様のとこでデロデロに酔っ払うまで飲んでたんだけど、それもどうやらカレンちゃん絡みの話だったみたいなのよね。


「ソフィアちゃんが娘になるものだと――」とか「息子にはもったいないお嬢さんが――」とか色々漏らしてたみたいだけど、盗み聞いた限りではカレンちゃんに対してもそう否定的ではなかったように思う。そもそもカレンちゃんはあの《豪腕》の娘でもあるし、望んで断られることはあっても望まれて断ることは普通に考えてありえないと思う。武門の人って強さと好感度がイコールになってることが多いんだよね。


 そういう意味ではカイルもカレンちゃんの家族に受け入れられるだけの強さがあると思う。


 少し前までならちょっと頼りなくはあったんだけど、今の実力なら間違いなくトップクラスではあるだろうからね。ミュラーがいるから総合トップはありえないけど、男子の枠の中なら多分王子様も抑えて既に一番の実力なんじゃないかな。男子の事情とか詳しくないけど、今までは王子様が一番だったから多分そのはず。


 つまりは現在の同学年において、カイル以上の実力を持った生徒はいないということだ。これは親の目から見ても相当に優良な相手に見えてるんじゃないかな。


「それで、ソフィアから見て二人の様子はどうなの? うまくいきそう?」


「それを聞かれるとね〜。うーん……相性も悪くは無いと思うんだけど……」


 様子……と言われても、ミュラーと同程度の情報しか私の手元にはないと思う。カイルの性格についてならある程度把握はしているけれど、それを言うならミュラーだって私の知らないカイルを知ってそうだしね。


 カイルとカレンちゃんの関係で一番気になるのは勿論二人の関係性だけど、これは惚れた弱みってことで結果は見えてる。カイルにしたって自分を好いてくれてる可愛い女の子に無体な事はしない、と……思うんだけどなぁ。


「うーん……」


「なに、そんなに心配な感じなの?」


「いやぁ、ほら、二人の関係ってカイルが優位な感じじゃん? 女の子が従順すぎると、男は調子に乗りやすいとか聞くから……」


「……でも、相手はカイルでしょ? 心配しすぎじゃない?」


 ミュラー的にはありえない、か。……そう言われると、まぁ、私もそうは思うんだけどさ。


 それでも人というのは環境によって変わるものだ。


 カレンちゃんも地味に男をダメにするタイプっぽい雰囲気醸してるし、あの二人は本当にどうなるかが予想つかない……。良い方にも悪い方にも転びそうな感じがしてハラハラするよう。


「まあ、そうだね。もし調子に乗るようなら私たちで(なぐ)り飛ばしに行けばいいだけだしね」


「そうね。それはいいわね」


 お、冗談半分で言ったんだけどカイルのお目付け役にミュラーも協力してくれるらしい。これは素晴らしい抑止力が得られたんじゃないかな。


 もしもがあっても確実に反省を促せる体制が整っていることに安堵しながら、更に待つこと二十分。いい加減始業の時間が近付いてきたのに待ち人はどちらも顔を見せる気配すらしない。


「……昨日、カレンはカイルの家に行ったのよね?」


「そうだね」


 肯定しつつ、次なる質問へと心で備える。


 いや、まさか。そんなはずは。流石にそんなことにはなっていないはずだが……。


「……挨拶をした後、カレンはもちろんその日のうちに帰ったのよね?」


「そりゃあ、挨拶に行ったんだから……用事が終わったら帰るんじゃない?」


 そのはずだ。そのはずなのに、何でこんなに動悸がするのか。他の可能性なんてあるはずもないのに。


 ……いや、ある……のか? 他の可能性があるのだろうか?


 昨日カイルのお父さんは何て言ってた? カレンについて何か言ってはいなかっただろうか?


 二人が現在、何処にいるのか――そんな心配をしている内に、始業のベルが鳴り響いた。



 朝から待ち構えていたにも関わらず、結局私たちが目を光らせている間に二人が現れることはなかったのである――。


告白→お持ち帰り→からの朝帰りどころか朝にも帰らず……!?

男はやはり野獣なのか!?と戦々恐々するソフィアさん、ミュラーさんと一緒にドキワクが止まらないご様子。心の中ではわーきゃーと大騒ぎが開催されております。

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